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飛竜の季節:1日目②

「やあ、いらっしゃい」

 一旦ログアウトした俺と凛が結奈の家を訪ねると、いつも通りの白衣を着た結奈が出迎えた。

「お邪魔するわね」

「お邪魔します」

「じゃあ、部屋に行こうか」

 結奈の先導で二階にある結奈の部屋へ向かう。

「久しぶりに来たけれど、整頓されているわね」

「僕には頼りになる妹がいるかねぇ」

「奇遇ね。私にも便利な幼馴染みが一台いるわ」

「人を家電製品みたいに言うな」

 凛は整理整頓が全然できない。定期的に俺がいつも片づけているのだ。

「そういえば、結花は?」

「今来ると思うよ」

 と、その時、部屋のドアが開いてお盆を持った私服姿の結花が現れた。

「ちょうど来たみたいだねぇ」

「お茶を持ってきました」

「あら、ありがとう」

「ありがとう」

「いえ」

 お茶を受け取り、ふとお盆を胸に抱く結花を見上げる。

「あの、何か?」

「ああいや、私服姿を見るのは久しぶりだと思って」

「変…でしょうか?」

「いや、よく似合っているよ。可愛い」

「そ、そうですか……」

 結花は顔を俯かせると持っていたお盆で顔を隠した。

「痛っ」

 突然脇腹に走ったつねられたような痛みに声をあげ、隣に立つ凛に抗議の視線を向ける。

「何する」

「ナンパしに来たんじゃないのよ」

「ナンパなんてしてないだろ?」

「どうだか」

 抗議の視線を受け流し、凛はスマフォを取り出した。

「流石に楓は来れないからこれで参加するわ」

 そう言う凛のスマフォの画面には楓の姿が映し出されている。

『……よろしく……お願い……します』

「おや、そういえば、画面越しとはいえ現実(こっち)で顔を合わせるのは初めてだねぇ」

「そうですね」

「おっと」

 スマフォの前に陣取っていた結奈を押しのけて結花はスマフォの前に座った。

「改めてはじめてまして。千草結花と言います。よろしくお願いします」

『……夜月楓……よろしく』

 画面を挟んで二人は揃って頭を下げる。

「それじゃあ、始めましょうか」

「男一人に他が女子で女子の部屋でやる事と言えばいやらしい事だねぇ」

「結奈は帰っていいわ」

「どうぞお帰りください」

「はっ、つまりそれは蓮君と僕が結婚して蓮君の家が僕の家という事かな」

 バタンッ。

「冗談じゃないか。だから部屋から閉め出すのはやめてくれるかな?」

「……次はありません」

 渋々といった様子で結花はドアを開けて結奈を部屋の中に招き入れた。

「貴女も大変ね」

「慣れました。凛さんもいつも迷惑をかけてしまってすみません」

「私も慣れたわ」

「ふふ、二人の仲がよさそうで安心したよ。僕達ももっと仲よくしようか」

 そう言って俺の腕に抱きつこうとした結花との間に結奈が割り込み、俺の隣に腰を下ろした。

「姉さんは早く準備してください」

「仕方ないねぇ」

 そんな結花に結奈は肩をすくめ、立ち上がって机の方に向かった。

「残念とか思ってないでしょうね?」

「なんの話だ?」

「……思ってないならいいわ」

「む?」

 俺が首を傾げていると、目の前にノートパソコンが置かれる。

「来るまでの間に準備はしておいたよ」

 そこに映し出されていたのはNWO内でも見たいくつもの戦闘映像。

「必要な映像を抜き出して細かい部分まで鮮明に見えるようにしてあるよ」

「性格はともかく貴女の能力は流石ね」

 普段の結奈を見ていると忘れてしまいそうだが、科学者として世界的に名が知られている天才だ。こういう事をさせると凛以上だ。

「とりあえず、映っているワイバーンをアップしてみるよ。これで何かわかるといいんだけどねぇ」

 結奈がパソコンを操作するとワイバーンの姿がアップになり、その鱗一つ一つまではっきり見えるようになる。

「何かわかる?」

「うーん」

「なかなか見つからないねぇ」

「すみません、わかりません」

 それでもなかなかそれらしき物は見つけられず、首を捻っていた。その時……。

『……鱗』

「え?」

『……鱗……一つだけ……逆』

「どこ?」

『……右の……翼の……付け根』

「結奈」

「はいはい」

 結奈がさらにパソコンを操作すると、楓の言った右の翼の付け根がアップで映し出される。

「たしかに一つだけ鱗が逆になってる」

「他の映像はどう?」

「解析にかけてみるよ」

 手元にパソコンを引き寄せ、操作していた結奈はいつも浮かべている笑みをさらに深めた。

「ビンゴだよ」

 結奈の見せてきた画面にはいくつもの映像の中で逆向きの鱗が指し示されていた。

「そして、ここに攻撃を受けた直後にワイバーンは落ちてる。間違いないだろうねぇ」

「お手柄よ、楓。ああ、今すぐ褒めて撫で回したい。ちょっと楓の所に行ってくるわ」

 立ち上がって今にも駆け出しそうな凛の手を慌てて掴む。

「落ち着け。どう考えてもゲームの方が早い」

「そうだったわね。なら、すぐにログインしましょう!楓を撫で回すために!」

「そうだな」

「目的が変わっている気がするのですが」

「ふふ、面白くなってきたねぇ」

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