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飛竜の季節:一日目①

 日曜日。イベント初日のこの日、正午ちょうどから始まるイベントに向けて亡霊湿地で待機していた。

「あと五分ね」

「何も策がないままでいいのか?」

「策も何もまるで情報がない状況じゃ立てようもないでしょ?」

「それもそうか」

「まずは試しに戦ってみて考えるわ」

 そんな話をしているうちについに時間がやってくる。

「時間ね」

「……来た」

 空を見上げるミナスに続いて空を見上げると、今まで何もなかった空に巨大な影が飛んでいる。

「あれがワイバーンか」



 ワイバーンLv30

 種族:亜竜



 顔はトカゲのような爬虫類のもの。全身が鱗で覆われていて前脚は翼と一体になっている。尻尾の先には鋭い棘が生えている。

「見える範囲にいるのは五体ね。とりあえず、一体に攻撃を仕掛けるわ。ミナス」

「……ん」

 頷いて弓に矢をつがえ、空を飛び回るワイバーンに放つ。放たれた矢は一直線に宙を駆け、的確にワイバーンを捉える。

「ギャア!!」

 矢を受けたワイバーンは怒りの声をあげ、口から火球を放つ。

「アクアランス」

 飛来する火球に対してマーネは水槍を放ち、迎撃する。

「降りてこないわね」

「これだと俺は何もできないな」

「それならそれで仕事はあるわ」

 マーネの視線を追うと、こちらに向かってくるアンデッドの姿があった。



 ゴーストLv29

 種族:アンデッド



 ウィル・オ・ウィスプLv30

 種族:アンデッド



 スケルトンソルジャーの他に半透明の人型モンスターゴーストと火の玉ウィル・オ・ウィスプ。

「あの二体は霊体系のモンスターね。マジックエンチャント」

 向かってくるモンスターを確認してマーネは俺の持つ陽炎に魔法を付与する。

 霊体系のモンスターは基本的に物理攻撃が効かない。それにダメージを与えるために魔法を付与したのだ。

「そっちは任せたわよ」

「ああ」

 俺が向かってくるアンデッドに向かい、空を飛び回るワイバーンにマーネとミナス、それとルナが攻撃を仕掛けていく。

「落ちるわ」

 しばらく向かってくるアンデッドを相手していると、ワイバーンが落下してくる。

「まだ倒せてない?」

「みたいね。ロータス、こっちを手伝ってくれる」

「了解」

 残っていたアンデッドを倒し終え、俺もワイバーンの攻撃に参加する。

 それから全員で攻撃を重ね、落とすよりも早い時間で撃破した。

「ユーカ、時間は?」

「落とすまでにおよそ十分。落としてからはだいたい五分くらいです」

「そう……」

 事前にユーカに頼んで測っていてもらった時間を聞いたマーネは口元に手を当てて難しい顔を浮かべる。

「もう何度か試してみましょうか」






「かかり過ぎね」

 一時間程ワイバーンを相手にし、色々試しながら五体を倒した。

「このペースじゃ到底勝てないだろうねぇ」

「そうね。私達は絶対的に人数が少ないわ。このまま普通にやったとしても勝てないでしょうね」

「なら、どうする?」

「一旦街に戻るわ」

 マーネの言葉に従って街に戻った俺達は落ち着いて話をするために宿屋の一室を借りた。

「とりあえず、現状わかっている事を確認しましょう。ユーナ」

「毒の類は効かなかったねぇ」

「ロータスとミナスは何か気になった事はある?」

「物理攻撃は普通だな。特別効きも効かないもなかった」

「……目は……少し効いた……でも……一回ずつ……だけ」

「視力を失ってる様子はなかったな」

「魔法は水が一番効いたわね。逆に火は効かなかったわね。あと、空中にいる時の攻撃方法は火球だけみたい。全く降りてくる気配はなかったわ。あとは、ユーカ」

「はい」

 ユーカはメニューを操作して録画していた五体分の戦闘シーンを空中に映し出す。

「何か気付いた事はない?」

「気付いた事って言われてもな。そもそもどこを見たらいいんだ?」

「さっきも言ったけれど、普通にやっても私達には勝ち目はないわ。だから、裏技……いえ、この場合は攻略法というべきかしら。それを探すの」

「攻略法なんてあるのか?」

「私はあると考えているわ。そうじゃないとクランの規模がそのまま順位になってしまうもの。もっと試行錯誤ができる様子があると思うの」

「ふむ」

「とは言ってもデータが少ないわね。ユーナ」

「アップされている動画を集めてみたよ」

 そう言うと、空中にいくつもの映像が映し出される。

「これだけあれば何か気づく事もあるかもしれないねぇ」

「そういう訳だから何か気づく事があったら教えて」

「ああ、わかった」

 頷き、攻略法を探すべくそれぞれ動画を見ていく。

「このワイバーン、レベルが低いな」

「たぶん、フィールドによってレベルが決まっているんだと思うわ」

「という事は難易度の低いフィールドの方が短時間で倒せるのか」

「その分奪い合いは激しくなるでしょうけどね」

 今のところ俺達が一体あたりにかける時間はおよそ十分。仮に難易度の低いフィールドに行ってその半分の時間で倒したとしても結果的に数を稼げないのなら意味はないか。

「ストップ。ユーナ、この動画少し戻してくれる」

「何か気づいたのかい?」

「ええ」

 俺達はマーネの後ろに集まり、何かに気づいた動画を覗き込む。

「やっぱり」

「何がやっぱりなんだ?俺が見ていた限りじゃ何もわからなかったんだけど」

「この動画単体だとそうかもしれないわね。ユーナ、フィールドごと。できれば、戦っているプレイヤーごとで動画分けてくれる」

「了解だよ」

 マーネの言葉に頷き、ユーナは動画を分けていく。

「映っている景色から察するにこの場所は詐欺師の森ね。このプレイヤー達は他にも動画を上げているのだけれど、見比べてみて」

「これが何かあるんですか?」

「僕にもよくわからないねぇ」

「……そうか。落とすまでの時間か」

「その通りよ。見た限りフィールド内で個体によるHPの差はないわ。なのに、この動画の時だけは落とすまでの時間が普通よりも早いの」

「弱い個体が混じっているとか?」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。もしかしたら、これが攻略法に繋がるかもしれないわ。同じようなものがないか重点的に調べてちょうだい」

 漠然と何かというよりも具体的に示してくれたおかげで探しやすくなる。改めてそこを重視して見ていると、マーネ程正確にダメージ計算はできないが、それでも明らかに早く落としていると思われる動画見つかった。

「たまたま弱い個体と言うにはバラつきがあり過ぎるわ。やっぱり何かありそうね。もう少し詳しく調べたいのだけれど、ここではこれ以上は難しそうね」

 このゲームで動画を撮る場合、プレイヤー視点か、プレイヤーの後ろからの三人称視点での撮影ができる。だが、その両方ともプレイヤーの近くからの撮影になるせいで空中を飛び回るワイバーンの姿が細部までははっきりとしないのだ。

「一旦ログアウトしましょう。ユーナ、貴女の家に行くからそこで詳しく調べるわ」

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