魔石
〈剣術Lv3になりました〉
視界内にいる全てのビッグホーネットを倒したところでインフォが流れ、ようやく戦いが終わった事がわかった。
マーネの方はと探してみると、すぐにこちらに向かって悠々と歩いてくるマーネの姿があった。
どうやら向こうも無事に終わったようだ。見た目…ではわからないからHPを確認してみるも、そのHPは微塵も減っていない。
あの熊を無傷で倒したという事だ。
「流石だな」
「大した事じゃないわ」
マーネにとっては謙遜でもなんでもなく、事実として大した事ないのだろう。
まあ、それがわかっていたから俺も何も言わなかったんだが。
「この後はどうするんだ?もっと森の奥に行くのか?」
「いえ、一旦戻るわ。私のMPもほとんど残っていないし」
たしかに無傷のHPに対してMPはほとんど残っていない。
途中からMPの節約をしていたようだが、あの熊相手にそれも使ってしまったようだ。
「それに、これ以上進むとエリアボスの領域だもの」
「エリアボス?」
「それはまた後で話すわ。それより、戻る前にやっておかないといけない事があるの」
「やっておかないといけない事?」
おもむろにマーネは主のいなくなった巣に近づき、なけなしのMPで火球を放った。
守る者のいない巣は火球の直撃を受け、瞬く間に燃え上がる。
「よく燃えているな。最初からこうすればよかったんじゃないか?」
「無駄よ。巣にビッグホーネットがいる状況で撃っても防がれるだけ。先に全滅させないと駄目なの」
「ふぅん?」
何が目的かは知らないが、マーネは最初からこうするつもりだったらしい。
説明がないという事は見ていればわかるという事だと考え、俺は黙って夜の闇の中で激しく燃えあがる蜂の巣を眺める。
「これ、周りに燃え移ったりしないのか?」
「大丈夫よ」
激しく燃える様子にそんな心配が出るも、マーネはあっさりと否定した。
なら、問題ないかと黙っていると、然程時間をおかずに蜂の巣は完全に燃え尽きた。
「これね」
すると、火が消えるのを待ってマーネは蜂の巣のあった場所に近づき、そこから何かを拾い上げた。
「なんだそれ?」
「魔石よ」
[魔石]品質B
魔力が集まり、結晶化した物。様々な用途があり、主に武具の強化などに使われる。品質は高め。
「色々と使い道はあるけれど、基本的には書いてある通り武具の強化に使われる事が多いわね。序盤じゃあまり手に入らないレアアイテムよ。ビッグホーネットの巣から取れるけれど、それも確実ではないわ。これは品質も高いし、当たりね」
俺にはこれがどれくらいレアなのかわからないが、マーネの強運を持ってすればこれくらいは当然なのだろう。
俺からすれば驚くようなことじゃない。
「さ、戻りましょうか。MPも今ので完全に枯渇しちゃったし」
「戻った後はどうするんだ?まだやめるには早いだろ?」
現在の現実での時刻は午後三時近く。まだやめるには早い。
「MPが回復したら今度は荒野に行くわ。あそこでレベル上げよ。明日はやりたい事があるからなるべくレベルを上げておきたいの」
「という事はまたスケルトン狩りか」
「そういう事ね」
それに関して不満はない。あれはあれでいい鍛錬になるからな。
俺はMPのないマーネの分までモンスターを倒し、昨日のスケルトンの事を思い出しながら始まりの街へと戻った。




