闇精霊
〈刀術Lv2になりました〉
〈眼Lv10になりました〉
〈歩法術Lv10になりました〉
〈逆境Lv7になりました〉
〈集中Lv10になりました〉
〈狂化Lv3になりました〉
〈眼スキルがレベル10に到達したため心眼スキルが取得可能になりました〉
〈歩法術スキルがレベル10に到達したため仙歩術スキルが取得可能になりました〉
〈集中スキルがレベル10に到達したため身心一如スキルが取得可能になりました〉
「間に合った、か……」
カーストーンの荊から解放され、落ちてくる少女を受けとめてHPを確認してみれば残りわずかながらなんとか残っていた。
「その子、大丈夫なんですか?」
「わからん」
HPこそ残っているが状態は衰弱のまま。このままで大丈夫なのかと聞かれれば答える事はできない。
「ぅ……」
その時、少女の口から呻き声が漏れ、ゆっくりと瞳が開く。
焦点の合わない虚ろな瞳で自分の体を見下ろし、次いで自分を囲む俺達を見回した。
「助けて……くれた……の?」
「そうなるかしらね」
「ありが──うっ」
言葉の途中で少女は苦しげに胸を押さえる。
「大丈夫!?ポーション……でどうにかなるのかしら?」
「契約……」
「契約?契約すればいいの?」
マーネの問いに少女は小さく頷く。
「契約って、誰とするんだ?契約したとしても精霊召喚はMP消費が大きいんだったよな?それだと、俺はほとんど役に立たないぞ」
「……私も」
「MPが一番多いのは私だけれど、ただでさえMPがかつかつの私だとあまり活かせないわ」
そうなると、ある程度MPもあって戦闘に参加しないため余っているユーナかユーカという事になるか?
「そもそも、この子はどんな力があるのかによるんじゃないかな?」
「それはたしかにそうね。貴女がどんな力があるのか教えてもらえないかしら?」
「吸魔……。魔力を……奪う」
「魔力?それって敵からMPを奪うって事?」
再び少女は小さく頷く。
「そうなると僕達は意味ないねぇ」
「そうですね。相手のMPを減らす事はできるかもしれませんが、然程役には立たないかと」
「どれだけ奪えるかにもよるだろうけど、そうなると一番役に立つのはマーネじゃないか?」
「そうね……。わかったわ。私が契約する。どうしたら契約できるの?」
「名前……」
「名前をつければいいのね」
頷く少女にマーネは瞳を閉じ、少女の名前を考える。
「決まったわ。貴女の名前はアリスよ」
「アリス……」
与えられた自身の名をつぶやき、その顔に小さな笑みが浮かぶ。
次の瞬間、少女──アリスの体が光り出し、光の球になったかと思うとマーネの胸に吸い込まれていった。
「……これで契約成立なのか?」
「そう、みたいね」
ステータスを確認したマーネはそこに新たに『契約精霊:アリス』という文字を見つけて頷いた。
「これで幽霊騒動は一応解決か?」
「たぶんね」
「なら、帰るか。もう日を跨いでいるから大図書館も閉館の時間だし。というか、これ上に上がったらどうなるんだ?」
「追い出されるんじゃないかしら?隠れていたプレイヤーはすぐに見つかって追い出されたというし」
「とりあえず、出てみればわかるんじゃないかな」
それもそうだと頷き、俺達は降りてきたハシゴを使って隠し部屋から出た。
「そこで何をしている!」
最後にハシゴを登っていたミナスが登り終えた直後、突然光に照らされる。
「もう閉館時間は過ぎているぞ。まったく、どこに隠れていたんだか。さあ、さっさと出た出た」
と、警備員に責め立てられ、俺達は大図書館の外に出された。
「なるほど、こうなる訳か」
「でも、一つわかった事があるねぇ」
「わかった事?」
「隠し部屋にいる限りは外に出されないという事よ。もしかしたら、この大図書館には他にも隠し部屋があるかもしれないわね」
そう言ってマーネは背後にそびえる大図書館を見上げた。




