第三の街:ドライス
「相変わらずデタラメだニャ」
ウィンドバードを一度倒した後、マーネのMP回復のための休憩を挟み、メンバーを入れ替えてもう一度ウィンドバードに挑んだ。
「そうか?」
攻略法がわかった状態での二度目ともなれば一度目よりも時間はかからない。手早く地面に落とし、危なげなく二度目の撃破に成功した。
「状態異常に弱いという弱点はわかったッスけど、同じ方法は取れないッスね。他に色々とやりようはありそうッスけど」
情報屋のラピスとしてはこういう攻略情報も扱う訳だ。というか、メインはこっちか。
「さて、じゃあ先に進みましょうか」
「ああ、そうだな」
「すっかり日が暮れてしまったニャ」
空を見上げるとすでに日は沈み、満天の星空が輝いている。
「暗くなる前に倒せてよかったよ」
「エリアボス二連戦を一時間かからニャいのはおかしいニャ」
「まあ、耐久力の低いボスだったからな。地面に落としてしまえば時間はかからないさ」
「それが一番難しいニャ」
次の街に向かって小道を歩いていると、チョロチョロと水の流れる音が聞こえてくる。
「水が綺麗だな」
月の光を受けてキラキラと輝く澄んだ小川。周囲にはそれ以外に畑が広がっている。
「ドライスの先にあるフィールドは澄んだ水源地って名前ッス。ドライスはそこから流れてくる水を使った農業が盛んなんス」
「詳しいわね」
「自分情報屋ッスから」
「そういえば、マーネもこの先の事はわからないんだよな」
「ええ、そうね」
マーネなら一人でもウィンドバードを倒せそうな気もするんだけどな。
「倒せたかもしれないけれど、β時代の後半はスキルとか魔法の検証をメインにしていたのよ。移動時間も結構かかるしね」
「なるほど」
相変わらず心が読まれている事は置いておいて俺は納得して頷いた。
「見えてきたッスね」
ラピスの声に反応して俺も同じ方に視線を向ける。
「俺にはまだ見えないんだが」
目を凝らしてみるが、暗くてよく見えない。
「ロータスさんは眼のスキルを持っているッスよね?」
「よく知っているな」
「自分情報屋ッスから」
暗視を発動させて改めて見てみるとたしかに建物が見えた。
「街っていうか大きめの村みたいだな」
「王都を見た後だと余計そう見えるかもしれないッスね」
それはあるかもしれないな。まあ、農業が盛んだと言っていたし、あんなものだろう。
「くっそ、今が夜なのが悔やまれるぜ。いい野菜とかが手に入りそうなのに」
畑を眺めていたサテラが悔しそうにつぶやく。
「明日まで我慢するニャ。そもそも、今日の目的は別にあるニャ」
「そうだったそうだった。野菜もいいが、まずは米だ!」
ああ、そういえばここに来たのは見つかったっていう稲を探すためだっけな。
「見つかったっていうのは街でじゃないんだよな?」
「そうニャ。フィールドで見つけたらしいニャ」
「なるほど」
しばらく歩くとドライスの街に辿り着く。だが、夜でもあちこちに灯りが灯っていた王都は違い、街灯一つなく、唯一の光源は夜空に輝く月だけ。
「これはこれで風情があるッスね」
「そうね」
「街の中を流れる小川のせせらぎがまた味があるッス」
「でも、やっぱり店は開いていないな」
店が一軒も開いていない街並みを眺め、サテラが残念そうな顔を浮かべる。
ミャーコに我慢しろとは言われていたが、やっぱり諦めきれていなかったんだな。
「夜の街じゃ見て回っても仕方ないし、さっさとフィールドに出ましょう」
「そうするニャ」
止まっていた歩みを再開させ、澄んだ水源地に向けて出発した。




