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ダンジョンマスター:VSツインナイト①

 〈レベルが25になりました〉

 〈SPが2ポイント加算されます〉



「よっし!勝利!」

「なんとか勝てたね。ロータス君とユーナちゃんがいなかったら大変だったよ」

「たしかに。ロータスだけじゃなくユーナさんもいなかったらもっと時間かかってたな」

 ふむ?

「前から気になっていたんだが、何故ユーナにはさん付けなんだ?年上のヴェントやティアラ相手ならともかくユーナにも中途半端な敬語を使っているし」

 俺やカレン、ルクスには普通に話していたはずだが。

「あー、それは……」

「コータ君は美人が相手だと緊張しちゃうんだよねー」

「そ、そんな事ねぇし」

 ジト目を向けるカレンにコータは慌てて否定する。

「マーネさんもユーナちゃんも美人だもんね」

「べ、別にそれは関係ねぇし」

「でも、私とかルクス君には普通に話すでしょ」

「いや、それは……って、ルクスは男だろ!」

「私はマーネさんとかユーナちゃんみたいに美人じゃないし」

 カレンはすねたようにそっぽを向いた。

「ああもう!お前も十分可愛いから!」

「え?」

「あ、いや、今のは……」

 思わず口が滑ったとばかりに言い直そうとするが言葉が出ず、揃って顔を赤くして顔をそらした。

「仲がいいな」

「あれを見てそう言えるのは君がリア充だからだろうねぇ」

「む?」

「君は理解できないと思うよ」






「あら?」

 開いた扉の先にあった階段を降りると、ちょうどもう一つの階段からマーネ達が降りてきた。

「奇遇ね」

「そうだな」

 こっちも結構早く倒せたと思ったんだが、流石だな。

「おう、コータ。ロータスに迷惑かけなかったか」

「なんで俺だけに言うんすか?」

「かけるとしたらお前だろ」

「そんな事ないっすよ!……そんなにはかけてないっすよ」

 力強く言ったのを言い直し、コータは視線をそらした。

「わりぃな、うちのが」

「いや、二人共流石の実力だったよ」

「そうか?なら、いいんだけどよ」

 話が一段落すると、俺は改めて辺りを見回した。

 殺風景な部屋の中にあるのは二つだけ今降りてきた階段と、見上げる程の巨大で豪奢な扉。

「さっき戦ったのは試練の門番だったよな」

「ええ、そうね。門番というのだから守っている門があるはずよ。それは上の階にあった扉の事か、それとも……」

「この扉か。この先には何があると思う?」

「こんなあからさまな扉があるという事はもしかしたらここがこのダンジョン最奥なのかもしれないわね。なら、いるのはこのダンジョンのボス。準備は怠らない方がいいわね」

「……そんな余裕なさそうだけどな」

「え?」

 俺の視線を追って天井を見上げたマーネは顔にわずかに焦りの色を宿らせる。

「すぐに扉に入るわよ」

「あん?もっと休んだ方がいいんじゃねぇか?この扉の感じだとこの先にボスがいそうだしよ」

「できれば私もそうしたいのだけれどね」

 マーネは黙って天井を指差した。

「…………」

 それを追って天井を見上げたヴェントは一拍置いて声をあげる。

「天井が降りてきてるじゃねぇか!?」

「そうね」

「そうねじゃねぇよ!おい、お前ら!さっさと扉の中へ入れ!」

 ヴェントの声に反応して俺達は慌てて扉に向かって駆け出した。

 中ボスを倒したばかりだというのにろくに休ませてもくれないか。やれやれ、楽はさせてくれないな。

「開いたぞ!」

 巨大な扉を押し開け、中に足を踏み入れると、そこは円形の広い部屋だった。

 部屋の中には柱が立ち並び、精緻な紋様が描かれている床はそれ自体が一種の美術品のよう。その部屋はこれまでとは違い、どこか荘厳な雰囲気が漂っていた。

 その部屋の中央。そこにはまるで鏡写しのようでいて色だけが対照的な黒と白の騎士が立っていた。



 ツインナイトLv30 ダンジョンマスター

 種族:魔法生物


 ツインナイトLv30 ダンジョンマスター

 種族:魔法生物



 黒と白の騎士、ツインナイト。身長は2メートル程あり、豪奢な全身鎧を纏っている。その腰には体格に見合うだけの両手剣が下げられ、それを一糸乱れぬ動きで抜剣。

 そして、気づいた時にはマーネの目の前で左右から両手剣を振りかぶっていた。

「避けろ!」

 それに気づいたヴェントが咄嗟に声をあげるが、マーネは一切動く様子も見せず魔杖を構えて詠唱をしている。

「期待に応えなくてはな」


(水流の剣)


 マーネと二体の騎士の間に割り込み、アーツを発動させる。

 水のエフェクトを纏った蓮華が左右から迫る両手剣を飲み込み、受け流す。

 受け流された両手剣は狙いを外れてマーネの左右の地面を叩き、ガンッ!と激しい音を立てて床を砕いた。

「ウィンドバースト」

 その中心に立ちながらもマーネはまるで動じる事なく冷静に魔杖を白騎士の方に向ける。

 そこから放たれた風球が白騎士に直撃し、暴風を撒き散らして吹き飛ばした。

 その直前に暴風に巻き込まれないようマーネを抱えて距離を取った俺は黒騎士の追撃を警戒するも、黒騎士が向かってくる様子もなく吹き飛ばされた白騎士の元へ後退していった。

「今の動き、気になるわね」

「というと?」

「そのまま追撃してくるのではなく、下がったでしょ。普通のモンスターなら気にする様子は見せてもあんな風に下がったりしないわ。たぶん、あの二体は二体で一つなのよ。一糸乱れぬ動きを見る限り間違いないでしょうね。二体同時に相手するのは得策ではないわ」

 つまり、あの二体を引き離すという訳だ。

 俺はヴェント達の元まで行ってマーネを下ろした。

「流石の信頼関係だな」

「私が避けようとしたところであのタイミングなら避けられるかどうかは五分五分。なら、できる相手に任せた方がいいでしょ」

「マーネが避ける様子がなかったから任されたと判断したんだ」

「それを視線一つ交わさずにやるんだから大したもんだよ。それより、あいつらを引き離すんだろ。こっちでやってみる。フォローは頼む」

「ええ、わかったわ」

 二体の騎士に視線を向けると、こちらへ再び向かってきていた。さっきのような一瞬で移動してくる訳ではないが、それでもその動きは見た目にそぐわずかなり速い。

 さっきの一撃を見た限り攻撃力も高そうだし、マーネの魔法の直撃を受けてもあまりHPが減っていない様子から魔法的な耐久も高そうだ。

 あの見た目から物理的な耐久が低いという事もないだろうし、尖った性能がある訳ではなく、全能力値が平均して高いのだろう。

 そんな戦力分析をしているうちに迫ってきた二体の騎士に対し、ルクスが前に出る。

「アンカーハウル!」

 ルクスの大盾から幻影の鎖が黒騎士に伸びる。

「アンカーハウルは単体に対してヘイトを稼ぐアーツよ。こういう場面で有効ね」

「なるほど」

 アンカーハウルを受けた黒騎士はその向きを変えてルクスに向かっていく。

「まずいわね」

 だが、それは黒騎士だけでなく、白騎士までも向かっていった。

「う、うわ」

 なんとか黒騎士の一撃を受け止めたルクスだったが、続けて白騎士の振るった一撃に押し込まれる。

「ロータス」

「わかった」

 さらに追撃をかけようとする二体の騎士に詰め寄り、挑発を発動させる。

「援護します。パワーブースト」

 それだけはヘイトが奪えず、俺はティアラの強化魔法を受けてさらに背後から黒騎士にヘビースラッシュを叩き込む。

 それでルクスのヘイトを上回ったのか二体の騎士が揃ってこちらを向く。

「すみません!」

「問題ない。それより、今のうちに立て直せ」

「はい!」

 それにしても、やはり二体共に向かってくるか。

「ヘイトが共通しているようね」

「なるほど、それでか。引き離すのは難しいか?」

「いえ、無理矢理引き離すわ。少しの間に耐えて」

「了解」

 頷いて二体の騎士の攻撃を捌いていく。

 一撃の重さもさる事ながら、真に脅威なのはその連携。同時に、時に時間差をつけてこちらの動きを封じるように攻めてくる。

 巧みな連携は反撃の隙を与えず、防戦一方に追いやられる。

 このまま長時間捌き続けるのは難しいかもしれないな。

 一人で相手するならの話だが。

「いいわ」

 マーネの声に反応し、俺は一瞬の隙をついて白騎士の背後に回り込む。

 その直後、飛来した風球が黒騎士に直撃し、暴風を撒き散らして吹き飛ばす。

 ここまではさっきと同じ。一時的に引き離す事はできるか、放っておくとすぐに合流されてしまう。だから……。

「お前はあっちだ」

 白騎士を盾にして暴風をやり過ごした俺は黒騎士を追いかけようとする白騎士に蓮華を振るった。


(スマッシュ!)


 がら空きの胴にスマッシュを叩き込み、逆方向へ弾き飛ばす。

「黒い方は私達が受け持つ。そっちは任せたわ」

「今度こそしっかり役目を果たしてやるぜ!」

 合流しようとする白騎士の前にヴェントが立ち塞がったのを見届け、俺は黒騎士の追撃のために駆け出した。

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