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ダンジョン:試練の洞窟・絆④

「戦闘に関してはそう役割は変わらないと思う。ただ、ヒーラーがいない。各自ポーションは持っているだろうけど戦闘中に使える余裕があるかわからないから無理しないように。ルナはコータに当てないようにな」

「ホー」

「了解だ」

「わかったよ」

「よし、なら行こうか」

 言い慣れていない俺の合図で俺達は通路を進み始めた。

 先頭は一階の時と変わらず索敵能力に優れたコータ。

 慣れないパーティであるためいつもより慎重に進んでいくと、曲がり角の前でコータが待ったをかけた。

「数は五体。たぶんコボルトだ」

 一階のようなモンスターの多さを一応警戒していたが、やはり通路が狭い分出てくるモンスターの数も減ったみたいだな。

「戦うか、リーダー?」

「連携の確認もしておきたいし戦おう」

 俺が頷くとコータとカレンは素早く各々の武器を構える。

「行くぞ」

 俺は先陣を切って飛び出し、曲がり角の先にいたモンスターに向かっていく。

 相手は一階で散々相手したコボルト。レベルは23と少し高いがその分数はずっと少ない。


(挑発!)


 一階のような広い通路では効果範囲が狭くて使い勝手があまりよくなかったが、然程広くないここなら十分だ。

「ガウッ!」

 剣を持ったコボルトが指示を出すように吠え、槍を持ったコボルトと一緒に向かってくる。

 その後方には弓を持ったコボルトと杖を持ったコボルトが二体いる。

 粗末だが着ている服装を見るに一体は魔法使いでもう一体は僧侶か。

「コータ!左側の杖持ち、おそらく回復役だ。妨害してくれ!」

「了解!」

 剣と槍持ちのコボルトを引きつけている横を短剣を構えたコータが駆け抜けていく。

「ふむ」

 俺は二体の攻撃を捌きながらコボルトの動きを観察する。

 レベルが上がっている分個々の強さは一階よりも上。それに加えて巧みな連携をしてくる。

 それを即興のパーティで相手するのだから本来なら面倒な状況なのだろう。

 だが、この二人も浮雲という1、2を争うトップクランの一軍メンバーなのだ。自分の役割を把握し、慣れないパーティでも淀みなく動いている。

「俺も自分の役割を果たさなければな」

 飛来した矢を首を傾けて躱し、迫る火球を斬り裂く。左右から同時に仕掛けてくる剣と槍を捌き、弾く。

「そろそろか」

 突き出された槍を受け流し、その腹を蹴って引き離した瞬間、後方から飛来した火槍が槍持ちを貫いた。

「ガウッ!?」

 それに一瞬気を取られた剣持ちの隙を逃さず首へ斬撃を走らせる。

 一撃で倒すには至らないが問題はない。頭上から放たれた風の矢が剣持ちに次々突き刺さり、弾き飛ばす。

 だが、レベル差があるせいかそれでも倒し切るには足りず、さらにコータの投擲した短剣によってようやく倒す事ができた。

 それを視界の端で捉えながら火槍によって瀕死になった槍持ちに肉薄し、トドメ。さらに足を止めずに後方の弓持ちに迫る。

 それを迎え撃とうと弓を構えるが、俺を迂回して火の矢が殺到。弓を射るのを妨害して俺が近づく時間を作ってくれる。

 そのおかげで易々と距離を詰めた俺はそのまま首を斬る。

 これで三体撃破。残りは二体。






「初めて組むにしてはまあまあか」

 前衛を失った杖持ち二体になすすべがあるはずもなく、慌てふためくだけの二体を手早く倒し、戦闘を終えて一息吐いた。

「いやいや、十分だろ。特に問題もなかったし」

「うん、そうだね」

 できればもっと時間をかけて連携を確認したくもあるんだが、仕方ないか。あまり時間をかけていては向こうを待たせてしまうし。

「じゃあ、先に進むか」

 再びコータを先頭に進み始めると、カレンが話しかけてきた。

「ロータス君ってマーネさんとはどういう関係なの?」

「マーネとか?マーネとは幼馴染みなんだ。このゲームも元々マーネに誘われて始めたんだ」

「そうなんだ。羨ましい……」

 そういえば、カレンはマーネのファンだったな。

「よければ紹介するけど」

「本当ですか!」

 グッと身を乗り出して迫ってくるカレンに俺は思わず身を仰け反らせた。

「あ、ああ」

「貴方は神ですか!?」

「いや、神ではないけど……」

「ありがとう!このご恩は必ず返すよ!私にできる事ならなんでもするから!」

「いや、気にしなくていいよ」

 俺の手をガシッと両手で握ってくるカレンに苦笑を浮かべた。

「見てご覧。美少女に手を握られてなんでもすると言われてるのに顔色一つ変えていないよ」

「本当っすね。本当に男っすか?」

「昔一緒にお風呂に入った時はついていたと言っていたけどねぇ」

 む?ユーナとコータが何か話しているが何を話しているんだ?




 ◇◆◇◆◇◆




 二階をなんの問題もなく進んでいた私達は突き当たりで一つの扉を発見した。

「扉か。もしかしたら罠があるかもしんねぇな。こんな時にコータがいればな」

「ないものねだりをしても仕方ないわ。罠があるかなんて開けてみればわかるわ」

「ま、そうだな。で、誰が開ける?」

 私とティアラの視線が揃ってヴェントを向く。

「って、俺かよ!」

「まさか、か弱い女性にそんな危険な真似をさせると?見下げた精神ですね」

「うぐ、そう言われるとたしかに……。って、ルクスは男だろうが!」

 私達の顔を見回したヴェントは思い出したようにルクスを指差した。

 見た目はどう見ても気の弱そうな美少女なのにあれで実は男なのよね……。私も最初は女の子だと思っていたわ。

「わ、わかりました!僕が開けます!クランマスターであるヴェントさんにそんな危険な真似をさせる訳にはいきませんから!」

 力強く宣言し、ルクスが扉に向かっていく。

「最低ね」

「最低ですね」

 あんないたいけな美少女……少年に押し付けようとするヴェントに私とティアラは揃って蔑みの目を向ける。

「ぐ……ま、待てルクス!ここは俺がやる!」

「で、でも……」

「危険な事は男の仕事だぜ!」

「ぼ、僕も男なんですけど……」

 ルクスを追い越し、ヴェントは扉の前に立ったヴェントは息を整え、気合いを入れて扉に手をかけた。

「いくぜ!」

 腕に力を入れるのに合わせ、ゆっくりと扉が開いていく。その瞬間……。

「何もなかったわね」

「何もなかったですね」

 なんの問題もなく扉は開いた。

「そこ邪魔です」

「いつまでも真ん中に突っ立っていないでもらえるかしら」

 無駄に気合いを入れて扉を開けた体勢のままのヴェントの横を抜けて私達は扉の中に足を踏み入れた。

「お前ら実は俺の事嫌いだろ!」

「騒がないでください。中にモンスターがいたらどうするんですか」

「すみません……」

 ガクリと肩を落とすヴェントをルクスに任せ、先に進んだ私とティアラは扉の中を見回した。

 そこは広い部屋。天井も高く、壁から壁までは目測で百メートル以上ある。反対側の壁には今入ったのと同じような扉もある。

 そして、部屋の中央。そこに一体のゴーレムが鎮座していた。



 試練の門番Lv25

 種族:魔法生物



 身の丈はおよそ五メートル。片手にはその体躯にあった巨大な剣を持ち、反対の手には何も持っていない。

 ゴーレム──試練の門番はゆっくりと立ち上がり、顔についた赤く丸い玉でこちらを睥睨(へいげい)する。

「中ボスか?」

「おそらくね」

「はっ、いいぜ!この鬱憤お前で晴らしてやるよ!」

 敵を前にいつもの調子を取り戻したヴェントはガツンッと両手の籠手を打ち鳴らした。

「行くぜ!」

 ここまでと同じように先頭はルクス。コンバットクライを使ってヘイトを引きつける。

 その横を抜けて肉薄したヴェントが門番に拳を叩きつける。しかし……。

「なんだと!?」

 HPは少しも減らず、それどころかヴェントに向けて見た目にそぐわぬ俊敏な動きで拳を振り下ろした。

「くそ……!」

 かろうじて直撃は避けたものの、地面を砕くほどの衝撃にヴェントはダメージを受け、一旦後退してきた。

「なるほどね」

「何がなるほどなんですか?」

 私のつぶやきにユーカが疑問を向けてくる。

「あれの攻略法に察しがついたの」

「攻略法、ですか……?」

「レベル差から見てヴェントの攻撃を受けて全くの無傷という事は普通ならありえないわ。あれが完全な防御型ならともかく、あの反撃を見た限りそういう事もない。なら、ダメージが通らなかったのには何かからくりがある」

「それがわかったんですか?」

「その辺は経験ね。ゲームをやり慣れている人間からすれば少し考えればすぐに察しがつくわ」

 逆にやり慣れていない人間だと苦労するかもしれないわね。

「そういう意味じゃ向こうは厳しいんじゃねぇか。同じ相手と戦っているなら。コータはゲームはそこそこやり慣れているけど、俺と同じで頭を使うのは苦手だし」

「カレンは逆に頭は悪くないんですけど、ゲームはあまりやりませんし」

「それはロータスも同じね」

 ゲームなんて私に付き合って少しやるくらいだったから一人用のRPGなんて全然やった事ないのよね。

「まあでも、大丈夫でしょう。向こうにはユーナがいるわ」

「あの白衣の姉ちゃんか。ゲームやり慣れてるのか?」

「いいえ、ゲームはあまりやらないわ。そうよね?」

「はい、姉さんはあまりゲームはやりません」

「どういう事だ?」

「頭が切れるのよ。おそろしくね。経験なんてなくてもすぐに仕掛けに気づくでしょうね」

 それに、向こうにはロータスもいる。

「案外、こっちよりも早く倒すかもしれないわね」

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