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ダンジョン:試練の洞窟・絆①

昨日はもう遅いからと解散し、今日。改めて集まった俺達四人と一羽とヴェント達五人は揃って東側第三エリア恵の森を進んでいた。

「ここはなんで恵の森っていうんだ?」

「色々な植物系の素材が手に入るからよ。マナポーションの素材になる魔力草を始めたとしたね」

「なるほど」

だからユーナはさっきから採取をしているのか。

「む?」

コータが何かに反応したのに一拍遅れて気配察知に反応。その直後、俺の感覚に何かが入り込み、咄嗟に蓮華を抜いて斬り裂いた。

「木の実?」

「なら、スロウモンキーね」


スロウモンキーLv18

種族:魔獣


枝を伝って現れたのは体に比べて異様に長い腕を持つ猿の群れ。

「遅い?いや、投げるか」

「正解よ。あの猿は遠距離から色々な物を投げつけてくるの」

「ロータス君、あの猿はたまに珍しい木の実を投げてくるらしいんだよ。だから、木の実は斬らないで受け止めておくれ」

「ああ、わかった」

俺は頷いて戦闘態勢を取るヴェント達の前に出た。

「そういう訳だから任せてもらっていいか?」

「話は聞いてたけどよ。本当にできるのか?」

「問題ない」

「なら、お手並み拝見といこうか」

頷き合って下がるのを見送り、俺は挑発を使ってヘイトを集める。

「キィ!」

「キィキィ!」

次々と投擲される物を視界に収め、見極めていく。

飛来する物はほとんどが石だ。それを蓮華で打ち払いながら時折飛んでくる木の実を待つ。

「あれか」

石の雨の中に現れた木の実を左手で勢いを殺しながら受け止める。

「うわ、あの石を全て叩き落とすだけでもヤバいのにマジで木の実だけ見極めてキャッチしやがった」

「俺、あれと決闘するとか今思えば無謀だったっすね」

しばらくそれを繰り返していると、やがて投擲がやみ、スロウモンキー達は森の奥に逃げていった。

「逃げた?」

「スロウモンキーの厄介なところは投げる物が

なくなると逃げ出すところよ」

「倒そうとするなら確かに厄介だな」

決して距離を詰めず、遠距離から群れで囲んで一方的に攻撃する。それでいて攻撃の手がなくなったらすぐに退く。

「そのうえ、基本的に素材も旨味がないから外れモンスターと呼ばれているわね」

「基本的には、だけどねぇ」

「ええ」

全てを持ったままという訳にもいかず、足下に積み重ねておいた木の実の中からマーネが一つを手に取った。

「て、おい!それってまさか!」

「生命の実ね」

「珍しいのか?」

「ええ、とってもね」

「ふむ」


[生命の実]品質C

極稀に発見される果実。生命力を豊富に含み、死者をも蘇らせると言われている。


「死者を蘇らせる?」

「これ単体では無理ね。せいぜいHPを完全回復させるくらい。でも、これは蘇生薬の材料になるの」

蘇生薬といえば、前にユーナが作った事があったが、あれは効果が変質した事で偶然できたものだ。しかも、品質もかなり悪かった。

「他にも素材がいるから今すぐ作る事はできないけれど、持っていて困るものではないわね」

「じゃあ、僕が持っていていいかな?」

「……ええ」

「おや、今の間は何かな?」

「貴女に任せるのは心配なのよ。でも、結局使うのは貴女なのだから仕方ないわね」

若干悩みながらもマーネは持っていた生命の実をユーナに渡した。

「時間を取らせたわね。行きましょう」

「ん、おお」

それから先は時折襲ってくるモンスターを倒しながら森の中を進んでいった。

「ずいぶん外れた方に進むのね」

「薬草採取をしてたらたまたま見つけたんだよ」

「そう」

「と、見えてきたぜ」

森の中に突如現れた洞窟。これがダンジョンか。

「む?」

近くまで歩み寄ると、洞窟の入り口近くの壁に何かが書いてある。

「読めない」

その文字に目を向けてみるが、見た事のない文字でなんと書いてあるのか読めない。

「試練の洞窟・絆。互いの絆を示し、試練を乗り越えろ。二パーティ専用」

「読めるのか?」

「ええ。この世界の文字で書かれていて、読むには言語学のスキルが必要になるわ」

「ティアラが言語学を取っていたおかげで俺達も何が書いてあるかわかったんだよ」

不親切な事だな。

「ところで、マーネは言語学なんて取っていたか?」

「取っていないわ」

「それがないと読めないんじゃないのか?」

「この世界の文字は意味のない文字の羅列ではないわ。ちゃんと言語として成り立っている」

「解読したって訳か」

まあ、マーネならそれくらい普通にできるだろうな。

「β時代には取っていたから案外簡単だったわよ」

そんなマーネの言葉にヴェント達が呆れた目を向けてきた。

「ここにも化け物がいたよ」

「俺、英語すらままならないんすけど」

「そんな事できるんですか?」

「できなくはないでしょうけど、労力には合わないと思いますよ。言語学のスキルを取った方が早いですし」

「流石はマーネさんです!」

カレンだけはキラキラとした尊敬の眼差しを向けていたが。

「今日は常識的な人が他にいて助かります」

「おや、それではまるで僕達が常識的じゃないみたいじゃないか」

「はい」

ここに来て弛緩した空気の流れる中、マーネがパンッと手を打ち鳴らした。

「ここでしゃべっていても仕方ないわ。時間も限られているのだから行きましょう」

「そうだな。よっしゃ、行くぞお前ら!」

「いきなり仕切り出して何様ですか?」

「お前らのリーダー様だよ! いいから、行くぞ!」

先を進むヴェント達に続き、俺達も洞窟の中に足を踏み入れた。

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