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エリアボス:VSタイラントライノ

 東側第二エリア騒乱の草原に入ってから二日が経ち、エリアボスの手前まで辿り着いた。

 初見のフィールドではあったが、東側はモンスターも弱く、一度に出てくる数も少ない。難易度が低い事もあって苦労する事もなくここまで辿り着けた。

「案外早かったですね」

「初めてのフィールドといっても私達よりもレベルはかなり下だもの」

「私よりは上ですけど。レベルも1上がりましたし」

「第二陣組のユーカは俺達よりもかなりレベルが下だからな。あとはルナもか」

 俺は肩に止まったテイムモンスターであるルナに切り分けた肉を食べさせた。

 騒乱の草原のモンスターは主に暴れ牛や暴れ馬といったモンスターでドロップアイテムは皮以外はほとんどが肉だった。

 俺達の中に料理スキルを持っている奴がいないからあまり必要ないが、ルナの餌にはちょうどいいか。

「そういえば、β時代にマーネはここのエリアボスと戦った事があるのか?」

「あるわよ。タイラントライノっていうサイのモンスターね。基本的な戦い方はジャイアントボアを思い出してくれればいいわ」

 という事は突進が基本か。サイだとするならジャイアントボアよりも硬そうだな。

「厄介なところがあるとしたら、ヘイトに関係なくランダムに突進するところね」

「たしかにそれは面倒だな」

 俺のところに向かってきてくれればカウンターを狙えるんだが。

「私が狙われる場合もあるんですよね。大丈夫でしょうか?」

「直線的な動きしかしないから落ち着いて対処すれば問題ないわ」

「そうそう、何も問題ないさ」

「貴女が一番心配なのだけれど」

「おや?」

「まあ、いいわ。それじゃあ行きましょう」






 タイラントライノLv15 エリアボス

 種族:魔獣



 ゾウくらいの大きさのある巨大なサイのモンスター、タイラントライノ。

 その身に見合う巨大な角や硬い皮膚、破壊力抜群の突進と素の能力自体は決して低くない。

 だが、その動きは事前にマーネが言っていた通り直線的で単純。狙いもわかりやすくて俺達の中で一番足の遅いユーカであっても回避に専念すれば問題なく避けられる。のだが……。

「おや?狙いは僕のようだね。ロータス君出番だよ」

 タイラントライノに狙われたユーナは避ける様子もなくヒラヒラと俺に向かって手を振る。

 俺は即座にユーナに駆け寄り、そのまま肩に担いでタイラントライノの軌道上から離脱する。

「姉さん!真面目にやってください!」

「僕はいつだって大真面目さ。僕は運動が苦手だからねぇ。下手に自分で避けるよりできる人に任せるという合理的な判断だよ。ユーカもやってみたらどうだい?ロータス君にくっつける大義名分だよ」

「……や、やりません!」

「素直じゃないねぇ」

 顔を赤くして叫ぶユーカとそれを見てニヤニヤと笑うユーナ。この姉妹も相変わらずだな。

「それに、ロータス君も役得だろう?僕の胸の感触を楽しめるんだから」

 そう言ってユーナはわざとらしく胸を押し付けてくる。

「ロータス、今すぐそれを捨てなさい。私が許可するわ」

「そんな事されたら僕は死んじゃうじゃないか」

「いっそ死ねばいいのよ」

 俺は苦笑を浮かべながらユーナを下ろし、距離を取る。

「今度は俺か」

 草原を大きく旋回したタイラントライノは狙いを変え俺に向かってくる。

 タイラントライノはそれなりに速いが俺のAGIならギリギリまで引きつけてからでも躱せる。

 俺は突き出される角を紙一重で躱し、首へ一閃。さらに胴に愛刀の蓮華を突き立て後方へ駆け抜ける。

「まだ結構残っているな」

 格下の相手とはいえ、腐ってもエリアボス。動きが単純な分ステータスがそれなりに高く、それはHPにも言える。

 常に動き回るせいで接敵時間も短く、思うようにHPを削れずにいた。

「動きを止めるわ。ちょうど私の方に来たし」

「任せた」

 頷くと同時に動きを止めた瞬間を狙うべく駆け出す。

「ブオォォォォ!!」

 激しく大地を踏み鳴らしながら一直線に向かってくる

 タイラントライノにもマーネは怯む事なく落ち着いて魔杖を向ける。

「アースウォール」

 突如盛り上がった土壁がタイラントライノの顎をかち上げ、そのまま仰向けにひっくり返す。

「大胆な止め方だな」

 ひっくり返ったタイラントライノに詰め寄り、蓮華を振るっていく。

 いくらかダメージを積み重ねられたが、タイラントライノは怯む事なく立ち上がり、頭を振って土壁の方を向く。

「マーネ、そっちに行くぞ」

「わかったわ」

 土壁越しにマーネに呼びかけると同時にタイラントライノは土壁に突進し、打ち砕く。

「待っていたわ。プロミネンス」

 その瞬間、待ち構えていたマーネは魔杖を構え、一直線に燃え盛る火炎を放つ。

 火炎に飲み込まれ、みるみるHPを減らしながらもタイラントライノは軌道を変える事なく炎の中を進む。そして、炎の中を突破した直後。

「ご苦労様」

 軌道上から一歩横に避けていたマーネが真横から魔杖を突きつける。

「ウィンドバースト」

 ゼロ距離から放たれた魔法に煽られ、横倒しになる。

 そこに再び駆け寄り、蓮華を振るう。

 こうなってしまえば倒すまでは然程時間もかからない。それは強化状態になっても変わる事なく俺達はしばらくしてタイラントライノを撃破した。






 〈タイラントライノ初討伐報酬によってSPが6ポイント加算されます〉


「レベル差もあったしこんなものか」

「そうね。それじゃあ、ドロップアイテムにも目ぼしい物もなかったし先に進みましょうか」

「そうだな」

 タイラントライノを倒してから先に進み、しばらくするとそれは現れた。

「あれが王都か……」

 遠目からでもわかる巨大な外壁。始まりの街にも外壁はあったが、それよりも遥かに高い。

「ほほう、なかなか見応えがあるねぇ」

「そうですね」

「中はもっと見応えがあるわよ。でも、それはまた明日ね。今日はもういい時間だし、このまま広場まで行ってログアウトしましょうか」

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