新たなエリアに向けて
「転校生ねぇ。そんな面白い事があったなら僕も学校に行けばよかったよ」
「何もなくても来なさいよ」
始業式を終えて家に帰った俺達はNWOにログインした。そして、マーネとホームに行くと、そこには結局学校に来なかったユーナが何食わぬ顔で待っていた。
「姉さん、私はしっかり起こしましたよね。何故学校に行っていないんですか」
二人の会話からユーナが学校に行っていないという事を聞いたユーカが目を細めてユーナを睨む。
「あの後二度寝してしまってねぇ。それに、ちゃんと起こしたというけど、送り出すまでして初めてちゃんと起こしたというと僕は思うんだ。つまり、僕は悪くない」
「起こされる側が何を言っているんですか!全てにおいて姉さんが悪いです!」
何を言ったところで暖簾に腕押し。変わらないニヤニヤとした笑みを浮かべるだけのユーナにユーカは諦めたようにため息を吐いた。
「朝はちゃんと起きるべきね」
「毎朝俺が起こしている奴のセリフとは思えないな」
「僕もロータス君に毎朝起こしてほしいねぇ。ユーカもそう思うだろう?」
「え?その、それは……」
「一家に一人ロータス君」
「そんな目覚まし感覚で言われてもな」
朝起こすのもマーネ一人で間に合っているからこれ以上増えても困るんだが。
「そんな事より、これからの話をしましょう。闘技大会も終わったしもっと先に進もうと思うのだけれど」
「いいんじゃないか?第二エリアまでじゃまともにレベル上げもできないし」
第二エリアまでに出るモンスターはエリアボスなんかも含めても高くて20レベル。すでに俺達はそれよりもレベルが高い。
まあ、悪魔という例外もいるが、あれに挑むのは時期尚早というものだ。
「僕も構わないよ。新しい素材もほしいしねぇ」
「私も異論はありません」
「なら、決まりね」
こうしてとりあえずの方針を決めた俺達は続けてどこに向かうか決める事にした。
「モンスターの強さなら西かねぇ。でも、僕は西側のモンスターはつまらないから気乗りしないねぇ。個人的には北か南を押すよ」
「鉱物素材が豊富なのは西側という話なので私は西側に行きたいです」
「俺はどこでもいいかな。ユーカの言った通り、単純に強さなら西だけど、北や南の厄介な能力を持ったモンスターはそれはそれで面白いし」
と、それぞれの意見を出していくが、このクランのリーダーはマーネだ。俺達は揃ってマーネに視線を向けた。
「いずれ全てに行く事になるとは思うけど、私としては最初は東ね」
「ほう、それは何故だい?マーネ達が来る前にログを確認したけど、東側のエリアボスは浮雲にすでに倒されているから初討伐報酬はもらえないよ」
「そこはあまり気にしていないわ」
東側は難易度も低く、厄介な能力を持っているモンスターも少ない。その点で言えばそれ程魅力はない。
だが、マーネは何かしらそっちに行きたい理由があるのだろう。
「東側の第三エリアはこの国の王都なのよ。その分色々な物が集まるし、施設があるわ」
「そういえば、MPを回復するマナポーションもそこで手に入るって言っていたっけ」
「ええ、目的の一つはそれね。前にユーナが作っていたけれど、あれはレアモンスターの素材を使っているから量産は難しいし、今後のためにも確保しておきたいのよ」
モンスターが強くなればそれに比例してMPの消費量も増える。継戦能力を上げようと思えばどうしても必要になってくるか。
「他にもオークションだったり、闇市といった珍しいアイテムが手に入る場所もあるわ」
「なるほどねぇ。悪くないんじゃないかい。僕も少し興味が出てきたよ」
「俺も問題ない。他の場所にもいずれ行くなら慌てる理由もないしな」
「私も構いません」
マーネの説明に納得した俺達は賛成し、東側の第三エリアに向けて出発する事に決定した。




