準決勝:ヨシアキVSジークフリート①
「あーあ、負けちゃった。フラれたうえに試合も負けるなんて悲しくて泣いちゃいそうだな。シクシク……チラッ」
「それを俺に言われても困るんだけど」
「それもそっか♪仕方ないからクランのみんなに慰めてもらお♪じゃあね、お兄さん♪」
何事もなかったようにローズは身を翻し、観客に笑顔を向けた。
「みんなー!応援ありがとね♪負けちゃったけどこれからも頑張るから応援よろしく♪」
「ウォォォォォ!!ローズゥゥゥゥゥ!!」
「お前が一番だぁぁぁぁぁ!!」
「これからも応援するぞぉぉぉぉぉ!!」
「「「ローズ!ローズ!」」」
手を振りながらリングを去って行くローズを俺は黙って見送った。
「強いな」
◇◆◇◆◇◆
「うわ、まるでアイドルのコンサートだな。負けた事もあんま気にしてなさそうだし」
「馬鹿言え。薔薇姫はかなりの負けず嫌いだぞ。内心は相当悔しいだろうな。それを自分のイメージのために必死で抑え込んで笑顔を浮かべてるんだ」
「そうなんすか?」
「ああ。それをまるで見せないのは流石だな」
薔薇姫からは単なる趣味とかじゃなくそうあるという覚悟を感じる。
「それにしても、あいつはやっぱり勝ちやがったか。できれば薔薇姫の奴に勝ってほしかったんだけどな」
「見た感じだとヴェントさんは薔薇姫の方が相性が悪いんじゃないんすか?」
「相性はそうかもな。ただ、あれはバケモンだぞ。相性どうこうで覆るような奴じゃない。少なくとも俺は薔薇姫相手に無傷で勝てる気はしないな」
「ヴェントさんがそんなに弱気なんて珍しいですね」
「それだけの相手って事だ」
ま、だからこそ楽しみでもあるんだけどな。
「それより、ヨシアキだって次の相手はジークフリートの奴だろ。相性はいいかもしれないが、油断すんじゃねぇぞ」
「わかってますよ」
と、その時、控え室のドアが開いてロータスの奴が戻ってきた。
「よ、お疲れさん。次は俺とだな」
「そうだな。初めて見た時からヴェントが強いのはわかっていたからな。戦うのが楽しみだ」
口の端を小さく吊り上げ、楽しげな笑みを浮かべる。
こりゃ、油断なんてなさそうたな。
「俺も楽しみにしてるぜ」
◇◆◇◆◇◆
「ロータス君は危なげなく勝ったねぇ」
「結局一ダメージも受けていませんでしたからね」
「ローズ相手だと一発でも受けたら危なかったのだけれどね」
精霊とすでに契約していたのは流石に予想外だったわね。それを召喚するまでの戦術も悪くなかったし、相手がロータスでなければ勝てていたかもしれないわね。
「次の試合はまた勇者君が出てくる訳だねぇ」
「どちらが勝つでしょうか」
「地力ではジークフリートが上ね。ヨシアキもセンスはあるけれど、ジークフリートに勝てる程ではないわ。でも、魔法剣士とはいえ、ローズが敗退した今唯一の魔法使いよ。魔法に極端に弱い重戦士とは相性がいいわ」
「つまり、どちらが勝つかはわからないと」
「そうね」
ただし、ジークフリートは一回戦で手札をほとんど見せていない。それに対してヨシアキは手の内をほとんど見せてしまっている。
その辺りが勝負を決める鍵になるかもしれないわね。
「どちらにせよ、面白い試合になるんじゃないかしら」
『さあ、まもなく準決勝の時間になります!準決勝の見所はどこになるでしょうか、解説のラピスさん!』
『そうッスね。やはり、優勝候補のジークフリートさんとヴェントさんにヨシアキさんとロータスさんがどう挑むのかといったところッスかね』
『なるほどー』
『特にこの後の試合は地力で上回るジークフリートさんと相性で優位に立つヨシアキさんの試合ッスからね。面白い展開になるんじゃないッスか』
『ちなみに、ラピスさん一押しのロータス選手はどうですか?』
『さっきはどう挑むのかと言ったスけど、ジークフリートさんとヨシアキさんとは違う展開になるんじゃないッスかね』
『つまり、どちらも楽しみな試合って事ですね。おっと、ここで二人の選手がやってきました!まずはこの人!一回戦を危なげなく勝利し、準決勝に駒を進めた優勝候補筆頭!名実共に最強となるのか!竜殺し・ジークフリートォォォォォ!!』
一回戦と変わらず、漆黒の鎧に身を包み、騎乗槍と大盾を携えて悠然と進むジークフリート。
そこからは負ける訳がないという確かな自信を感じる。
『対するは下馬評を覆し、シグルズ選手を撃破!並外れたセンスで次も勝利を収めるのか!勇者・ヨシアキィィィィィ!!』
『ヨシアキさんは一回戦で副官であるシグルズさんを倒しているッスからね。ある意味では敵討ちって事になるッスかね』
『そこも楽しみなところですね!それでは、早速始めましょう!準決勝第一試合、始め!』




