003
ピクティの説明によると決戦は3日後。
集合場所は近くのイベントホールそこに夜12時に集まればいいらしい。
そして瞬く間に時は過ぎていった。
残った1千万の引かれた口座に残った2万円でコンビニ弁当とスナック菓子コーラで3日間英気を養った。
久しぶりのコーラとコンビニ弁当とスナック菓子のコラボは実に身に染みる。
最後に残った2百円で当選金が億をこえる数字選択式の宝くじを一枚購入。
戦いの終わった木曜日はその宝くじの抽選日。
これで負ければもう家賃は払えなくてホームレスになるしかない。
勝てば生き負ければ社会的に死ぬ。
まさに背水の陣だ。
準備を終えた俺はイベントホールへ向かった。
駅から数分の少し古びた印象を受ける建物であったが中は綺麗に清掃されている。
すでに何十人かが集まっていたが沙羅、健一、豊の姿はない。
きょろきょろと見回していると。
「泉さん、あのお三方は勝者側の別会場です。鉢合わせすればもめ事が避けられませんから」
「わかったありがとうピクティ」
期待していないと言えば嘘になるがそりゃそうだな。
ここに集まったメンバーはやつれた人間も多く見受けられ俺だけが歳的に浮いている。
俺は20で回りは3,40代のおじさんばかりだ。
女性の姿は見受けらない。
すると会場の電気が消えてスポットライトが壇上に当たったそこには白い何も書かれていない仮面の人物が壇上に立っていた。
「よく集まってもくれました。奪い再起を誓う志のある者達よ! 私は主催者である神々に此度のゴールドラックの全権を任された者、そうですね。貴方達が奪い合う運の名をとりラックとでも及びください」
「ラックさん! 本当に勝てば倒した相手の金運が手に入るんだな?」
そう隣から特徴的なだみ声が飛んだ。
「もちろんでございます。当然この場に集まった皆さんで大会内で争っていただいても倒せば金運は全て貴方様のものになります。この場に集まってもらった皆様に必要なのは金銭。この場に集まってもらった今の皆様の中に、金運以外を欲するものなどいない事は分かっておりますが、金運以外を欲する方がおられば挙手を」
愚問だな。
今の俺たちは金欠だ。
この場でそれ意外を求める奴などおるまい。
俺の予想は当たっていて誰一人として挙手する者はいなかった。
隣の声を上げた頭が禿げ上がったおじさんばぶつぶつ何かを呟いている。
「ではゴールドラックのルール説明をいたします。ルールは簡単大会中相手をどのような方法でもいいので倒せば貴方様方の欲する運は全て倒した者へ移動します。共闘、だまし討ち、多勢によるリンチ、武器、銃器、建物、トラップの使用、相手を倒す方法に禁足事項は一切存在しません。途中リタイヤを希望する者は担当の精霊に申し付けてください。ただし途中リタイヤには一分かかります。その間に倒されてしまえば撃破されたとみなしリタイヤは無効です」
「俺を騙したやつが参加するって聞いたから俺は参加したんだ! そいつとも戦えるんだよな?」
「もちろんでございます。貴方様方大金を奪われた敗者の全ての運人形の視覚には、運人形に乗った相手の名前を判別できる機能が付加されております。これは貴方様方奪われた敗者だけに与えられておりますので、相手を見れば即判断は可能でしょう。例え皆様が相手の偽名しか知らなくとも皆様の認識しているお名前として見る事が出来ますのでご安心ください」
「なぁこの大会一体何人が参加してんだ?」
「現在日本全国1307人の参加が予定されております」
つまり優勝すれば1300人分の金運が手に入るのか。
その言葉に会場はざわめきだす。
周りの男たちの目も鋭くなる。
「では続きを戦うフィールドはこのたびの大会のために作られた特別製の広大な異空間でございます。街、荒れ地、砂漠、平原、火山、遺跡群、極寒の大地、海川湖、この地球上に存在するありとあらゆる場所を再現しております。しかし、参加者が少なくなるにつれフィールドは狭まりますのでご注意を、此度の戦いは2回行っておいただきます。1回目は50人になるまで、2回戦は休憩をはさみ特別フィールドにて1回戦と同じ形式のサバイバルで50人での戦いとなります」
「ラックさん! 俺たちが乗るとかいう運人形って俺たちでも操縦できるのか?」
この言葉は俺だ。
そういえばピクティに聞き忘れてた。
「もちろんでございます。最年少の参加者様。貴方様方の乗る事になる運人形は第二の体と同じ、痛覚神経こそは繋がってはおりませんが、自分の体と目のように使う事が可能です。では皆様に運人形をお配りしましょう。皆様片手をお伸ばしください」
そう言われ皆手を伸ばす。
「絶望に塗れし敗者なる者よ! 汝らの手に掴むは己が運! 己が人生の苦しみ! されどわれらは汝らに与えん! 再起と復讐の力を! 己が手に幸運をつかむの者は強き者のみ! 今宵のゴールドラックの祝福が汝らに有らんことを!」
そうラックが宣言すると伸ばした手の先に光が集まり形となった。
暫く発光そしたそれを見てみると。
それは一見ロボットのプラモデルに見えるが、この人形に脈打つ鼓動を感じた。
俺の運人形は銀一色で白銀の鎧騎士を彷彿とさせる。
「皆様この運人形の姿は戦う貴方様方の姿となります。そして能力の確認を、ただし我々と担当の精霊は能力の詳細については一切言及しません。すでに戦いは始まっているのです。いかに早く自らの能力について理解するかが需要となっています。失礼しました一つ言い忘れてしまいました。各々の運人形の胸の結晶は核となっておりますので、破壊されれば即失格となります。お気をつけください、では5分後ゴールドラック開始です!」
その言葉に各々が自分の精霊に能力を確認する。
当然俺もだ。
「ピクティ俺の運人形の能力は?」
「泉さんの能力は3つ今回出場者最多の能力数となります。能力ランクは全てSランク。天の目S、感覚超活性S、砂塵操作Sとなります」
「でもどういう能力かは……」
「それは教える事は出来ません」
ダメもとで言おうとした言葉を潰されてしまった。
「なあそこの若い君? ちょっとええか」
といきなり声をかけられた。
この声は聴き覚えがあるラックに最初に質問した人だ。
特徴的だからすぐに分かった。
一体何だと顔を向けた。
次の次で大会開始
この作品は20ぐらいで完結する予定です