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002

「またこの天井か……」


 最悪な気分になる夢に続いて、もう見慣れてしまったボロボロの天井。

 ここは築50年3畳半のボロアパート。

 あの日目が覚めてしまえば3人の姿は欠片もなく電話も不通。

 注文したものの会計は済んでいたが。

 それどころではないと両親に連絡をしたが案の定、家と会社の預金を入れていた口座が残高全てなくなっていた。

 それからは落ちるところまで落ちた。

 会社の従業員の給料と会社の運営資金を捻出するため自宅と美術品を全て売りに出すも、長くは続かない。

 両親の中は険悪となり引っ越し身寄せた先前の家の十分の一もない家での言い争いが多発。

 限界はすでに見え。

 ありとあらゆる場所から借りられるだけの金を借りた。

 それで資金が足りないそこを計算していた豊は、父が借りた借金全て肩代わりするがわりに自分を社長にするように働きかけてきた。

 すでに役員のほとんどが買収済みで、信用も失っていたこのままでは借金をしたまま社長を辞めさせられてしまう。

 俺たちはそれを飲むしかなかった。

 そして父と母は自殺した。

 自分達の全てを奪われ遺言書も書く気力もなかったようだ。

 父と母を追うようにたった一人残った病を患い入院していた祖母が死に俺は天涯孤独となった。

 俺の口座の資金だけでは葬式を行う事も出来ず、直葬で火葬だけして骨壺を引き取り金を貯めてから埋葬する事にした。

 されから最安値の3畳半風呂無しの今いるアパートになんとか身を落ち着け今に至る。

 唯一の希望は祖母の死亡保険一千万。

 これが今の俺の全財産だ。

 食事は食パンの耳と大量買いした安いカップラーメン。

 カップラーメンを初めて食べた時は意外な美味しさに驚いたが、同じ味しか買わなかったためすぐに飽きて腹を満たすために食パンの耳をラーメンのスープで流し込む日々。

 はっきりって食パンの耳だけを食べるのはきつい。

 口の中の水分はもっていかれるし、淡白な味わいと少し硬めの耳が苦手だ。

 しかし食べる物はその二つだけ無理やりでも食べるしかない。

 バイトも探したがバイト経験一切なし、履歴書の書き方も分からない。

 加えて世間知らずの俺を受け入れてくれるところなど簡単に見つからない。

 そして一度この一千万をつかえばきっと歯止めがきかない。

 憎い――沙羅が。

 憎い――健一が。

 憎い――豊が。

 怨嗟の念は日に日に高まっていくひなが一日。

 3人を呪う日々。

 包丁で刺すにしても豊は想定しているだろう。

 失敗すれば人生はこれ以上に破綻してしまう。

 完全に手詰まりだ。

 だが自殺だけはしたくない。

 報復を! 復讐を! 俺の心は日々連呼する。


 「何かこの状況を打開できる方法は……」


 我ながら馬鹿な考えだと思った。

 だが口にしてしまう。

 人間はいつだってあり得ない希望を求める生き物だ。

 だがその問いかけは意外な所から帰ってきた。


 「青井泉様ですよね? この状況打開できるかもしれませんよ」


 「誰だ!」


 驚いて辺りを見回す。

 しかし目に映るのは見慣れた隙間風が身に染みる冬のボロアパート。


 「私はここですそこに置いてある手紙の中です」


 手紙? そんな物があるわけが。

 部屋に視線を飛ばすと一枚の手紙らしきものがこんなのあったけ。


 「ゴールドラック開催のお知らせ?」


 手紙の表にはそう書いてあった。

 そのまま手紙を開いた。


 「パンパカパーン! 青井泉さん貴方はゴールドラック参加権を幸運にも所得されました! 申し遅れました! 私は貴方の担当精霊ピクティと申します」


 俺は手紙の中身の紙の上に小さな少女の浮かぶ光景に思わず仕掛けを探すが何もない。

 少女を突いてみる柔らかい。

 本物みたいだな?

 それにしても褐色の肌にアラビアン風の薄着アラジンのランプの魔人を美少女にしたような姿だな。

 凄い可愛い子だな。


 「では説明をいたします。泉様。ゴールドラックとは私の使える神々の遊戯集まった参加者による運の奪い合いです。泉様の場合相手を倒せば倒した相手の金運の全てを奪い取ることができます」


 「凄い話だけど。俺が何でそんな資格を得てるんだ?」


 「それはこの大会は、大きな金銭を奪われた敗者と奪った勝者のみ参加を許されるのです。お心当たりが御有りでは?」


 その言葉に3人の姿が浮かぶ。


 「参加費は一千万となります。参加のチャンスは一度きりいかがいたしますか?」


 その言葉に迷いが出る到底信じられる話ではないが、本当なら勝つことが出来れば。


 「それにあいつらは出場するのか?」


 「少しお待ちください。星上沙羅氏、陸道健一氏、金無豊氏は……3名は出場することになっていますね」


 「なんでアイツらがあれだけ俺たちから奪ったのに」


 「それは奪った勝者の報酬は選べるからだと思われますよ。奪われた敗者は金銭運を相手を倒せば奪えますが、奪った勝者に限り相手から奪う運を事前に1つだけ決める事が出来ます」


 「わかった参加する」


 即決だ当然だろ。

 復讐のチャンスを逃す俺ではない。


 「参加を受理しますよろしいでしょうか?」


 「その前に聞かせてくれ勝負内容は?」


 「参加者は運人形(ラックドール)と呼ばれる機械人形に乗り異空間にて戦ってもらいます。運人形に与えられる能力の強さと数は乗る人間の受けた苦しみレベルと人格によって決定いたします。そのため奪われた敗者の方が強い能力を得る傾向にあります」


 「負けたらどうなる?」


 「ゴールドラックの大会に関する全て記憶を失い運を奪われ元の世界に返されます。記憶が残るのは途中リタイア者と最終的な勝者のみです。そして最終的に残ったただ一人は神々から叶えられる願いを叶える権利を得ます。よほど無茶苦茶でも無ければ大概の願望は叶えることができるでしょう」


 「最後の勝者はたった一人だけなのか?」


 「自らの意思で途中リタイヤしなければその通りです」


 つまり優勝者は最後まで残った参加者の奪える運をすべて奪えるのか。

 金運ならとんでもない事になる。

 世界レベルの金持ちだって参加者の数次第で不可能ではない。


 「分かった参加する。このまま泣き寝入りはできない! アイツらに復讐をしないと気が収まらない!」


 「参加を完全に受理いたしました。短い間ですがよろしくお願いします泉様」


 「よろしくピクティ。あと俺はさん付で呼んでくれ様はちょっとこそばゆい」


 「了解しました泉さん」


 「でっその大会はいつ始まるんだ?」

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