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012

「やったぜ! 粉々だ!」


 健一は自身の足元に転がった銀色の手足を見て、そう叫ぶ。

 

 「外れだ! 早く動いた方がいいともうぞ?」


 「てめぇはじゃあこっちの破片は砂!?」


 「早く動かないと後悔するぞ?」


 この言葉は優しさから出た言葉ではない。

 時間稼ぎだ。

 この状況での一瞬の混乱、言葉をかける事で状況を考えさせる間を持たせたのだ。


 「だったらも一度っ!?」


 「時間切れだ健一」


 どうやら気付いたようだな。

 すでにその位置の足場は砂塵操作Sで脆くしてある。

 さらに隣の部屋にはあれがたっぷりと溜まっている、それはもう流れ出し健一に足場の下に溜まっているはずだ。


 「糞雑魚野郎! 泉ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 「何だ俺の名前覚えてるじゃないか! 健一マグマのプールでおねんねの時間だ!」


 健一が舌に位置ていくところを眺めさらに砂塵操作Sを使って罠をはる。

 凡骨ならこれで終了。

 だが俺の知る健一はそれでは終わらないだろう。

 待つこと一分溶岩には特に変化はない。

 だが俺の獲得した運の数値は15900%より変化はしていない、つまりまだ健一は脱落していない。

 そう数値を眺めているとマグマの表面が泡立ち始めた。


 「糞が! 泉ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」


 溶岩から飛び出した健一の縮んだエメラルドクリーンの運人形の装甲は所々溶け、下の機械の部分が覗いている。

 あの大きさのままでは自慢のタックルをする程の空間的余裕はない。

 そのため健一が巨大化を解いてくると踏んでいたのだ。

 健一の運人形の右足の膝から下はなくなっていて、両腕の指はほとんど全滅、無残な姿だ。

 これではもう自慢のタックルはできまい。


 「俺のタックルは片足が地面接していればどこからぁっ!!??」


 「もうお前の敗北だ健一」


 「何しやがった! 体が動かねえ!」


 「体をデカくすれば途端バラバラだ。俺の砂塵の糸でな」


 俺は先ほど仕掛けて置いた砂塵の鉄糸を締めげ健一を宙づりにする。

 そのまま砂塵操作Sで空中に足場を作り健一に尋ねた。


 「みっともない姿だな。健一」


 「泉てめぇ! 殺るならさっさとしろ!」


 「そのまえに質問だ。豊と沙羅の能力について話してもらおう」


 「だれが話すか殺せよ!」


 「まず腕を一本」


 砂塵の鉄糸を操作し右腕を根元から切り落とす。


 「無駄だ! 痛覚は通ってなーんだよ! さっさと殺れ!」


 「さらに一本」


 さらにもう片方の腕を切りおとす。


 「これでお前の完全敗北は確定だ!」


 「だからどうしたさっさと殺せ!」


 「残るは左足一本、お前が一番嫌いな無様な負け方だ。しってるぞお前が何より無様な負け方をとことん嫌っている事を」


 「だからどうした!」


 「だから交渉だ。お前が喋ってくれるならお前と立ち会って決着をつけてやる」


 「殺せ!」


 「いいのかここまで無残な最期を――」


 「殺せぇえええええ!」


 「なら仕方ないな!」


 俺は砂塵で作った鉄糸を捜査して、健一の運人形を切り裂いていく。

 できるだけ長く無様な敗北を与えるために。

 すでに健一の運人形は胸の核と繋がった頭しか残っていない。


 「意外だったな。お前の事だからプライドを選ぶと思ったが」


 「俺は本当のダチと認めたやつはぜってえ裏切らねぇ!」


 「そうかいじゃあな!」


 俺は健一の運人形の核を砂塵の鉄糸で切り裂いた。


 「覚えとけ泉! 豊と沙羅の能力は俺となんて比較になんねー最強の能力だ! 先にどん底で待ってるぜ!」


 光に包まれる健一の運人形を後目に。


 「何とか勝ったギリギリだった……」


 「最後は圧倒的だったじゃないですか」


 「この地形にマグマがなかったら決定打にかけていた……」


 「そうですが勝利は勝利です」


 「そうだな。だがまだ気は抜けない」


 「大丈夫です泉さんなら!」


 「そうか、じゃあピクティの為にも頑張らないとな!」


 「もしもの時は私も動きます例え……言葉が過ぎましたね」


 ピクティの言葉に若干しこりは残るが、これで後二人。

 親しい友人だった男をどん底に蹴落としたのだ。

 どんな最悪な気分になるかと思っていたが、そんな事はなかった。

 確かに心の表面はざわついているが、時間がたつにつれ清々しいすかっとした気分になる。

 それも仕方ない事だ。

 俺はあの3人にすべて奪われた家族も会社も金銭も恋人も友人も、それに対して俺は今にいたるまで全くというほど恨みを晴らしていない。

 少年漫画の世界では復讐は虚しいと誰しもが連呼する。

 だがそんな物は綺麗ごとだ。

 恨みが空虚だとしてもその怒りは、現実決して消えることない感情だ。

 それは他でもないその相手にぶつけて初めて発散される。

 恨みを晴らさず放置すれば行き場を失ったその怒りは本人の心を蝕むだけだ。

 誰もがみな聖人君子なわけがない。

 恨みをはらさねば先に進めない俺のような人間がいるのは事実、それを果たせば気分も良くはなる。

 綺麗ごとはただ綺麗なだけだ。

 それに現実的重みは存在しない。

 俺は復讐の一端をとげ咎を背負ったのだ。

 綺麗ごとを宣う人間にはけして背負ぬ復讐者の咎という重みを。

 その重みをあと2つ背負う。

 待ってろよ沙羅! 豊!

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