011
「なんでお前が俺の名を……そういや言ってたな。俺の担当精霊が言ってたな……俺たちが勝者だとかなんとかまぁいいや! お前がどこの誰だろうと、やる事は同じ敵は敵だいくぞ!」
その言葉にさらなる怒りが沸きあがり、肩から両手へ刀を握る手に力が入る。
「泉さん落ち着いてください」
「ありがとうピクティ少し冷静になれた」
「どんな時も冷静にです。私に見せてください何者にも負けない泉さんの覚悟と力を」
「覚悟……そうだったな忘れてたぜ! ピクティが俺の担当でよかった愛してるぜ!」
「それはプロポーズと捉えていいのでしょうか?」
「好きに解釈してくれ! 仮に負けるなら女の子に告白1つでもして負けた方が気分がいいからな!」
「死亡フラグは未回収でお願いします」
ピクティの言葉で肩に入っていた力がすっと抜ける気がした。
ピクティがいなければ負けていたかもしれない。
ジャックと豆の木のジャックは巨人に立ち向かうことはせず逃走を選んだ。
それは正しいと言える。
大きさとは単純な力、手のひらでつかめるほどの小人はたった一人で人間に勝てることはまずあり得ない。
だがそれは小人が無力であり力を持たないからだ。
相手がでかくとも俺には3つの能力がある。
無力な小人は逃走を選ぶ。
ならば力ある小人たる俺は何を取るべきか。
健一がゆっくりとタックルの構えをとるそれは自身に満ち溢れまるで鷲の鷹揚のようだ。
覚悟はピクティのおかげで決まった。
「まず一発!」
健一は俺にタックルを放った。
早い。
さっきのよりも明らかに。
2倍以上の速さだ。
「どうした! 俺のデカさと速さにビビったか!」
次々に健一はタックルを仕掛けてくる。
対抗策で砂塵操作Sで特大のトラばさみを複数配置するが、効果はないに等しい
。デカくなったことで通常時の装甲も固くなっているようだ。
相手がでかく早くとも、直線的な攻撃なため交わすことは難しくはない。
俺の感覚超活性Sと天の目Sが切れるか先か、健一の巨大化能力が解けるが先か。
感覚超活性Sと健一の巨大化能力の持続時間が同じという確証もないのだ。
根比べなどという馬鹿なマネなどは出来ない。
さてどうしたものか。
相手はデカくて固くて速い。
「おら! どんどん行くぞ!」
健一はその宣言通り、連続してタックルを仕掛けてくる。
前にも言ったが交わすこと自体はそれほど難しいモノではないが、こちらに攻撃手段は今のところないのだ。
それゆえに焦りが生まれる。
情報が足りないな。
砂塵操作Sで刃を生成し、手あたり次第ぶつけていく。
手裏剣――失敗。
槍――失敗。
ロングソード――失敗。
斧――失敗。
こりゃ武器関係は駄目だな。
この速度と硬度の相手にぶつけてもこっちが砕けるだけか。
「ちょこまかと! うぜーんだよ!」
健一はタックルではなく手を広げて俺に向かってきた。
さてどうする天の目Sでもう一度辺りの地形を一望する。
そういえばこの部屋の隣は……
「チャンスだ!」
即座に思い付いた作戦を決行することを決めた。
「砂嵐!? がぁー!」
健一の視界を一瞬ふさぎ健一から距離を取る俺はさらに砂塵操作Sを使った。
「糞雑魚の癖に舐めんな! 今度こそ俺の渾身のタックルで吹き飛ばす!」
健一の目の前の銀の運人形は壁際で動きを止めている。
乗ってこい健一乗ってきた時がお前の最後だ。
「死ねぇやぁあああああああ!」
健一の渾身のタックルで銀の運人形は跡形もなく吹き飛んだ。




