010
俺の本当体の口がニンマリを歪みだす。
思わず運人形の口元を触ってみたが特に変化はない。
そのままゆっくりと隣の部屋へ。
天の目Sで見たが一番広い部屋でここの10倍以上の広さがある。
さらに隣接する空間にはマグマだまりがあり、その隔てる壁は薄い。
攻撃次第では部屋がマグマで埋もれそうだな気をつけよう。
そしてそこまで広大な部屋で待っているということは、そういう状況で有利になる能力を得たと思った方がいいだろう。
さらに俺が健一を誘い出さる作戦も算段誘いに乗るしかないのだ。
後数分で天の目Sと感覚超活性Sは全快する。
こちらにはダメージもない。
よほどの事がなければ、互角に戦える自信はある。
そのまま歩き進めると。
「よく来たな! こいつだよな?」
そういってエメラルドグリーンの光沢のある運人形、ガタイはよく肩に肩パット武器らしきものはもっていない。
無手で戦うタイプか?
健一は二人の首に手をかけながら質問する。
「そうですボス! こいつです!」
「こいつに俺たちはやられて……」
「そうかそうかぁあ!」
健一は二人の首を握りつぶした。
「けっ役立たずどもめ! まあいいか、最後は俺がすべて頂くつもりだったからな!」
そういって二人を地面に叩き付け足蹴にする。
自業自得はいえ哀れな。
「お前いいな! 15900%お前を倒せば俺の運動運が160人分手に入る! さあやろうぜ! 言っとくが俺は強いぜ! 覚悟しとけ糞雑魚!」
健一の運の%は1000%健一が本当に運動運を求めているなら、運動に関する運が10人分、中々手ごわそうだ。
「こっちのセリフだ! 糞雑魚野郎!」
「いいね! 俺好みだ! 女も男も力で屈服させるのが俺は好みなんだよ!」
「それは悪趣味な趣味をお持ちで」
「仕方ねーだろ! 最近まで金持ちのボンボン騙すために自分を抑えてきたんだからな! 名前はえーと臭い鼻水だったけ?」
その健一の言葉に一気に怒りのボルテージが上がる。
「さっさと始末してやる! こい! お山の大将!」
「いいね! いいね! 今までの奴はこれだけで負けを認めた! 奥の手をまだお披露目してないんだぜ?」
「だったら見せてみろ!」
そう言って感覚超活性Sを発動する。
この会話の最中で完全回復したのだ。
「でりゃ!」
健一は右肩を前面にショルダータックル。
中々早いがまだまだ俺の目には、遅く見える。
すれ違いざまに健一の脇腹に一撃。
「っ!!??」
「どうした? まだまだ行くぜ!」
一撃。
ニ撃。
三撃。
違和感を確かめるために剣撃を重ねる。
固いとても不自然なレベルで。
健一のタックルを交わしながら考えた。
何故ここまで硬い?
ここまで硬いなら真っ向から受ければいいはず。
ならなぜタックルだけしか使ってこない。
確かに作戦としては間違ってはいない。
健一は俺の前より去る前はアメフト部の主将だった。
ならば得意なタックルで攻めてくるのはおかしくないはずだが、何だこの違和感は……その違和感を確かめるために砂塵操作Sを使い罠を生成。
生成する位置は俺の目視できる場所であればある程度自由。
せいぜい5、6メートルといった所か。
そして健一の動きが止まった所で罠を起動した。
といって単純なトラばさみだ。
体がただ単に固いならば当然刃は通らない。
「こざかしいだよ!」
健一はトラばさみに右足を挟まれたまま俺に向けて再度タックル。
そういう事か。
「お前の体の異常な頑丈さはタックルしている間だけみたいだな」
健一のひびの入った右足が証拠だ。
「ネタがばれたか! また罠でも使われたらうざいしな、奥の手を使うぜ!」
そういって健一はボディービルのコンテストで使うポーズフロント・リラックスから流れるようにフロント・ダブル・バイセップス、フロント・ラット・スプレッド 、サイド・チェスト と次々にポーズを取り始める。
健一が大のボディビル好きで散々聞かされ見せられたので不本意ならがスラスラ名前が出てきた。
それよりまじかよ……
「今まで俺の全力タックルで仕留められなかった奴は2人しかいねー今も昔も」
余りに非常識。
「俺はビックになるスポーツでも社会的地位も! 全て俺のもんだ!」
反則級。
「お前じゃ絶対に俺に勝てねー! 俺の勝てる奴らはこの大会じゃ2人だけだ!」
健一は勝ち誇ろ。
それはそうだろう健一の運人形は――
「どうだ! デカさは単純で圧倒的な力だ! 20倍の大きさの俺に勝てるか!」
見上げるほどの巨大な姿になってたのだから。
確かにとんでもない能力だ。
タックル時攻撃を受け付けない能力がSSランク能力だと思ったが。
これがSSランク能力。
さらに上が二人……おそらく沙羅と豊だろうこれに勝てる能力持ち……。
目の前が暗くなりそうだが、諦めるわけにはいかない。
何故相手に高笑いされたまま諦められる?
心まで折れれば俺は完全に敗者だ!
敗者で甘んじる気ならこんな大会に出場してなどするか!
相手は目の前見えげるほど大きくとも勝てる可能性はゼロではない!
僅かであろうとも勝てる可能性があるなら復讐を遂げる可能性があるならだったら戦うだけだ!
無謀? 無茶? 勝てるわけがない? 全ての無理と思える感情を飲み込んで、俺の中の怒りの炎がさらに勢いを増し燃え盛る。
「こい! 健一! 最初はお前からだ!」