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王国編Ⅳ

「お待ちしておりました。先ほど『悪魔の血(デビル・ブラッド)』が街に出現したと報告を受けて心配しておりましたがご無事で何よりです」

「その『悪魔の血(デビル・ブラッド)』って?」

「この国にいる王国の敵対する組織でございます。人数は少なく合計で5人しかおりません。しかし、一人一人王国戦闘部隊隊長と同等、もしくはそれ以上の実力をもっております。

 姿は伝えづらいですが注意しておいてください」

「その中の一人に『ガガリア・コモン』っている?」

「出会ってしまわれたのですか!?さすが勇者様です。よくご無事で」

「軽く遊ばれたんだ。もう1回戦ったとしても勝てない。他にもあんな化け物がいるんだろ?」

「はい。ガガリアは『火の悪魔』と言われ、火炎魔法を得意としております。他には『水の悪魔』の『ミネル・ウンディーネ』。他にも『風の悪魔』、『雷の悪魔』、『土の悪魔』がおりますが、名前はわかっておりません」


 あんな化け物が他に4人もいるのか。

 おまけに火炎魔法を得意だって?

 俺は一回もその魔法を見てない。

 どんだけ手加減していたんだよ…。


「ご安心下さい。村の子供がドラゴンを倒せるかと言われれば倒せないに決まっております。今は耐えるときでございます。倒すのは成長をしてからでございます」

「そうだな。俺に必要なのは訓練なんだな」

「私もね。私も訓練をしないと」

「それでしたらサラウディ様に聞いてみるのはどうでしょうか?」

「そうしてみるか。明日行っても大丈夫かな?」

「では(わたくし)から言っておきます。では帰りましょうか。どうぞ」


*


 城へ戻り、俺たちはいったん部屋へ戻った。


「買った服はこれで全部?」

「そうよ。向こうみたいな服はなかったけどこれはこれでいいわね」

「ああ。どれも似合ってたしよかったな」

「あとはこの杖とジルの剣だけだね。あ、余ったお金返さないと」

「手入れとかどうすればいいか分からないからな。荷物をまとめたら夕飯を食べるついでに聞いてみるか」

「って、私待ちかぁ」

「ゆっくりでいいよ。手伝うからさ」

「ありがとう」


*


「余った分はお持ちしたままで大丈夫でございます。後、剣のお手入れですか?」

「そう。剣を手に入れたから錆びないように手入れをしたほうがいいかなあって」

「よろしかったら見せていただけないでしょうか?メイドですが家計の理由で剣について知っております」

「それならありがたい。『倉庫(アイテムボックス)』」


 城の中なら別にいいかなって思い、さっき荷物をまとめていた時に閉まっていた。

 ついでに余ったお金も入れておかないと。


「『破滅の剣(キーブレイク)』でございますか…。さすが勇者様でございます」

「そんな見てすぐわかるの?」

「『世界のカギ(ワールド・キー)』は伝えられているだけではなく、書物にもまとめられております」

「そうだった。あとでその書物とか見せてもらえる?」

「かしこまりました。夕食後ご案内させていただきます。それと、この剣は手入れをする必要がありません。たとえ欠けたり折れたりしても魔力を込めると復活するようになっております」

「そんなすごい剣だったの?無料(タダ)でもらっちゃったけど悪いことをしたな…」

「いえ、誰でも使えるというわけではないので過去の勇者様もそうでした」

「この杖もすごいの?」

「『白の使い(ザ・ホワイト)』ですね。杖には詳しくはありませんがそれでも知っております。かつて一人の勇者様が剣に馴染めず、どうしようか迷った結果、杖をつくり魔法特化になったと聞いております」

「へぇー。やっぱり値段相応なんだ」

「夕食ができました。冷めないうちにどうぞお召し上がりください」

「ありがとう」


 昨日言ったことを覚えてくれたみたいだ。

 けどそれでもやっぱり豪華だよなあ。

 時代や文化のせいか米らしきものはあるものの、みそ汁がない。

 日本人だとやっぱり食べたくなる。

 目標の一つにしようかな。


*


「では書物庫へご案内いたします」

「サツキも行くか?」

「もちろん!私もしっかり知識を得ないと」

「ではお二方、こちらへ」


 また迷子になるかと思ったけど部屋の近くだった。

 利用する者が多いかと思ったが、国王が幼少期の時ぐらいしか使わないとのこと。

 あとはまとめた資料の一部を保存している。

 書物庫というより一種の物置だ。


「ではご自由にどうぞ」

「これって自分の部屋に持って行ったりしていい?」

「構いません。ただ、国王様の所有物なので返していただけると助かります。読み終わりましたら私たちに言えば戻しますので」

「いや、それぐらい自分でやるよ」

「私も何冊か持って行こうかな」

「かしこまりました。では私はこれで」


 一礼すると部屋から出て行った。

 相変わらず固いよなあ。

 正直息が詰まる感じがする。

 こればっかりはなかなか慣れない。


「えっと、いろんな本があるな。なんだこれ、虫?昆虫図鑑もあるのか?」

「うげっ!?私虫はだめ…」

「これは別にいいや。あった、これだ。勇者の歴史」

「あ、それ私も気になっていたやつ」


 随分年季が入っている。優しく扱わないと崩れてしまいそうだ。

 他に比べ少し薄い。内容もそこまで細かくは書いていないみたい。

 『伝説の勇者』についても書かれている。

 『二人の勇者。今までにない出来事で皆動揺した。どちらも勇者と信じる者、どちらかが偽物と疑う者、意見は分かれてしまった。

 しかし、レオ・リオーネは二人とも勇者だと証明した。

  第一に国の奪還。当時悪魔に乗っ取られていたアストロール王国の奪還を成し遂げる。国を守護していた上位悪魔を数体倒し、魔王は痛手を負う。

  次に食物の安定化。サラ・シュヴァルツは大地に恵みを与え、天候を操り食物をつくった。

  この2つの出来事により、誰もが認める勇者となり、『伝説の勇者』と言われることになった。同時に二人は結婚。それでも勇者を続けた。』


「これ以降は載っていないな」

「古かったし破れちゃったみたいだね」

「いや、これは故意的に破いたみたいだよ」

「なんでだろう?見られてはならないことでも書かれていたのかな?結婚したんだからあとはハッピーエンドかと思ったのに」

「気になるな…。まあこれ以上はないんだ。他の書物でも読もうか」

「これなんてどう?『魔法図鑑』!」

「いいな。読んでみようか」


 図鑑だけあっていろいろな魔法が書かれている。

 いろんな属性もあってみているだけでも面白い。

 魔法はいろいろあって、職業によって使えたり使えなかったりする。

 そこは魔法名のところに書かれている。

 ……どうやら勇者はどれでも練習をすれば会得できる。さすがチート職だな。

 魔法名には創造者も書かれている。

 そこにはサラ・シュヴァルツ、サラ・シュヴァルツ、サラ・シュヴァルツと。

 伝説だけあってやったことはやっぱり伝説級だ。

 見ていくたびに思うけど、ここは本当にゲームなのか?

 どっか別の世界を使っているんじゃないのか?

 そう思ってからそうとしか考えられなくなってきている。


「何か書いてあったの?」

「あ、ああ。ほとんどの創造者のところに、ほら」

「さっきの『伝説の勇者』ね。破られたところに魔法を創ったーとか書かれていたのかな?」

「そうかもしれないけど、それならこの書物も消すはず…」


 謎は深まるばかり。

 でもこの本があればいろいろと魔法を使える。

 いいものが置いてあってよかった。


「じゃあこれはサツキが読んでおいてくれ」

「いいの?ジンも見たかったんじゃない?」

「俺は近接戦がいいみたいだからな。剣技とか槍術があればいいんだけど」

「そういうと思って見つけておいたよ。ほら」

「おお、助かる」


 さすが元副生徒会長兼秘書。

 ざっと中身を見ると剣技が多い。

 剣しかないしこのまま剣技にするか。

 ……これにはレオ・リオーネの名前が書いてあるな。

 二人の名前がほとんどの書籍に載っているんじゃないのか?

 伝説にもほどがあるだろ。

 えっと、突きの剣技に右上から左下へ振るう剣技、それに正面からかち割る剣技。

 どれにも似たような動きなのにいろいろと名前がある。

 これは覚えるのに一苦労しそうだ…。


「ん?これはなんだ?」

「ああ、それね。分からないから一緒に混ぜておいたの」


 魔剣士と書かれている。

 中を読んでみると読まれた形跡があまりなく、新品同様みたいだが古いせいでそこまできれいというわけではない。

 要するに使える者は少ないってことだ。

 でも見た感じ魔法と剣技を合わせただけみたいだが。


「そろそろ部屋に戻らない?」

「もうそんなに経っていたのか。戻るか」

「じゃあ私はこれとこれ、あとこれを持っていくね」

「一緒に持っていくよ。ほら」

「あ、ありがとう。…やっぱり変わったね」

「まあな」


 俺もそう思うよ…。

 変わっていっている。

今も、これからも。

 …あ、『倉庫(アイテムボックス)』を使えば楽だったじゃん。

 まあ、いいか。サツキの笑顔も見れたし。


*


「ここに置いておくよ。じゃあおやすみ」

「おやすみ。読んでばかりで寝ないのはやめなよ?」

「分かっているよ。俺の母さんかよ」

「そうね。私がいないとすぐ無茶をするからね」

「はいはい、おやすみ」


 無茶はする気はない…はず。

 目のまえに気になるものがあれば止まれないもんだ。

 さっきの続きを…ん?違う本が混ざっている。

 何だこれ?『報告書58』と書いてある。

 報告書もあそこに入れているのか。さすがにそれは別でまとめようよ…。

 どんなことが書いてあるんだ?

 『〇年〇月〇日 本日も異常なし。

  〇年〇月〇日 本日も異常なし。

  〇年〇月〇日 本日も異常なし。』

 異常なしばっかりじゃねぇか!

 報告書という名の日記じゃないか。

 何かほかのことでも書いてないのか?

 あ、あったあった。



 〇年〇月〇日

王国より北東の森に一人の人間を発見する。

 名前は『ソウル・ミリオーネ』と名乗った。

 そこは猛獣も住む森の為、人は住んではいない。

 何をしているのか、なぜここで生活しているのかを聞いた。

 答えたは『強さを求めたらここにいた』と答えた。

 詳しく聞くと、元々は王国に住んでいた者であった。

 こんな森の中に住んでいるため、兵として使うにはいいとなった。

 戻ってくる気はないかと聞くと対応をよくしてくれれば行くと答えた。

 もちろんそれに応える。

 荷物をまとめるため、本日は帰国。


 〇年〇月〇日

 迎えに行くために馬車を用意。

 到着すると剣を一本だけ持っているだけ。

 荷物は他にないのかと聞くと必要がないと答える。

 衣食住を保証するつもりであったため特に気にしなかった。


 ここから日付が飛ぶ


 〇年〇月〇日

 死者105名、重傷58名、軽傷0名。

 唐突な悪魔の襲撃。ソウルは身を挺して悪魔を討った。

 しかし、ソウルは負傷しそのまま姿を消す。

 目撃者の情報によると治らないほどの傷を負ったと報告された。

 好きな場所で逝けるよう、追跡はしなかった。



 また破れている。

 それでもこっちはそのあとが載っているからまだいい方だろう。

 ソウル・ミリオーネ。詳しく知りたいな。

 確か一緒に王国の兵の古いリストを持ってきたはず。

 ……いるにはいるが、細かくは書いていない。

 だめだ、手がかりが少なすぎる。誰かから聞いたほうがよさそうみたい。

 これ以上に悩み事を増やしたくはないなあ。

 まだ全然処理し終わってないし。

 あとは剣技の本を読んでおくか。

 なになに――


*


「おはよージン」

「ん?もう朝か」

「『もう朝』?…私、言ったわよね?」

「お、おい。なんでそんなに怒っているんだ…?」

「寝ないと体壊すでしょうが!!」

「あ、ああ。そうだな。次からは気を付けるよ」

「次は本当に怒るからね」

「わるかった…?」

「もう、心配させないでよ…」


 だんだんと本当に母さんに近づいてきたな。

 怒られたことなんで本当に小さいときだったけど。

 久しぶりに怒られた。


「?何考えているか分からないけど寝ておきなさいよ」

「いや、大丈夫だよ。少し寝て早く起きただけだから」

「…本当に?嘘ついている顔しているけど」

「そんな顔してないよ。本当だから」


 無論、嘘。

 ただ今は時間が惜しい。

 これが勉学など苦しい類なら別だが楽しい類だから全然いける。

 ただ体を壊すのは確かに良くない。

 寝ないのはこれを最後にするか。


*


「いい書籍はありましたか?」

「いいのはあったけど、ところどころない部分があってね…」

「本当ですか?今までそんなこと聞いたことなかったんですが…」

「もしかして今までは普通にきれいな状態だったの?」

「はい。古いものはございましたがどれも欠けることはありませんでした」


 やっぱり誰かが故意的に破いたのか。


「それは上に報告させていただきます。本日ですが、訓練をするためにサラウディ様にお会いになられる聞いておりますが」

「そうそう。いつ頃会える?」

「サラウディ様は『何時でも大丈夫。呼べばすぐ参ります』と言っておられました」

「それじゃあ1時間後ぐらいでいいかな?まだ朝食を食べていないし」

「かしこまりました。そう報告しておきます」


 2回目の朝食だけどここで何回か食事していい加減慣れた。

 いまだに国王は来ない。

 だんだん本当の家のようになってきている。

 剣技の本の内容を思い出しながら食事をしていたら食べ終わっていた。


「ではご案内いたします。すでに外にいると報告が入っております」

「待たせたら悪いな。行こう」


*


「お待ちしておりました。お話は聞いております」

「それなら早い。俺たちは早く強くなりたい。そこで王国戦闘部隊隊長に頼んだわけ」

「はい。私の力が勇者様方の役に立つなら使わせていただきます。しかし、私は魔法を得意としません。剣一筋でここまで上がりました」

「ってことは、私はお休み?」

「そういうことになります。しかし、それだと時間がもったいないと思い、魔法を得意とする副隊長と連れてまいりました」

「はじめましてー!王国戦闘部隊副隊長のセルリー・ワンダースだよー!」

「こらセリー!勇者様方の前だぞ!」

「えへへへ、ごめんごめん」

「この…!」

「まあまあ。私たちは構わないから、ね?」

「あ、ああ。俺も構わないよ。むしろ接しやすいよ。サラウディさんもそんな感じでいいよ」

「ほらー!隊長が固いだけじゃーん!」

「うぬぬ…。分かりました。これから気を付けます」

「まだかたーいたい!?!?」

「一発で許したんだからありがたく思え」


 なんていう元気な女性なんだろう。

 見た目は俺たちと同じ高校生ぐらい?

 随分若いな。


「勇者様方、こいつこんな見た目でも勇者様方より年上ですよ」

「たいちょー!女性の年齢言うなんてデリカシーないですよー!!」

「うるさい!まさかセリー、ジン様を狙っていたのか…?」

「……だめ?」

「ダメに決まっているだろ!!」

「そうよ!だめだわ!!」

「あはははっ。これはダメみたいだねー」


 みんなして否定するのか、俺は何も言っていないのに。

 まあ断るから近寄っても断る。

 今はもういるからな。

報告書書いていて、何となくホラゲーの日記を思い出しました

幽霊は出ません。たぶん。

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