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勇者誕生

「ここって…」

「村だな」

「なんで村なのよ…」


 森に囲まれた村。小さすぎず大きすぎない普通の村。

 田舎の集落って感じだがすべて自給自足っていう感じ。

 普通城とか大きい街とかじゃないのか?

 待てよ。あいつはゲームとか言っていたな。

 となると最初にあるはずのあれだな。


「恐らくチュートリアルだ。何かあるはずだ」

「何かって…あっ!これかしら?」

「ポケットか」


 カードが入っているな。なんだこれ?

 何か書いてある。



Name:ジン・タカサキ(人間)

Job:勇者Lv.0

HP:10,000/10,000

MP:100,000/100,000

ATK:1,500

MATK:1,000

DEF:1,500

MDEF:1,000

AGI:500

LUK:100(MAX)



 すごいのかすごくないのか全然わからない。

 少なくとも勇者というジョブとLUKだからラックか?運はすごいということは分かった。

 MAXって言うことはカンストか。こんなことに巻き込まれたから運がいいとは思えないが。

 それに勇者Lv.0ってのはどういうことだ?

 Lv.1ですらないのか。


「仁君も同じ感じ?」

「見せてもらっていい?」

「はい、どうぞ」



Name:サツキ・サミダレ(人間)

Job:勇者Lv.0

HP:8,000/8,000

MP:150,000/150,000

ATK:700

MATK:2,000

DEF:1,000

MDEF:2,000

AGI:400

LUK:100(MAX)



「俺と違ってMATKという方が高いな」

「なんだろうね、これ」

「さあ?まだわからない」


 カードの表にはステータスが書かれている。

 まだわからない部分はあるもののそのうち分かるだろう。

 じゃあ裏はどうなっているんだ?


「…真っ白だな」

「真っ白だね。何かメモでもするのかな?」

「学生証じゃないんだからさ」


 確かに学生証見たいに横線があってメモができる感じになっている。

 けどメモなんてするわけないだろうし。

 これもまだわからない。


「そういえば望みを聞いていなかった。今からでも応えれそうなら応えるけど」

「今は大丈夫。さっきのでお腹いっぱいだから」

「???」


 時々紗月さんの言っていることが分からなくなる。

 けっこう長い間一緒にいるはずだけど、ここ最近こういうことが多い。

 どっちにしろ今は大丈夫と言っているんだ。

 今できることをしよう。


「なら村へ入ろうか。いつまでも突っ立ってるわけにもいかないし」

「そうね。行きましょうか。それとこれはお願いなんだけど」

「どうした?」

「私たち勇者になったんだよね?今だけでもいいから、お互い敬称を無くさない…?」

「うん…そうだな。それがいいか」

「よし!じゃあいこ!ジン!」

「おい、引っ張るなよサツキ」

「ふふっ」


*


「村へ入りたいんですが」

「はいよ。ステータスカードはあるか?」

「これですか?」

「それそれ。もしかして旅は初めてか?」

「はい。まだ右も左もわからないもので…」

「そうか。通りで見たことない恰好をしているわけだ。まず当たり前だが危険人物を入れるわけにはいかない。ここで提示して安全だったら入れるって言う決まりになっている。この村だけではなく街もそんな風になっている」

「じゃあ私も出したほうがいいのね」


 こっちの世界だと服は違う。俺たちが来ている制服は目立つ。

 この村で服を買えたら変えないと。

 と言っても金がないな。どうしたもんか。

案外とゲームの最初ってお金をもらえるからこそ何かできたり元々装備されているから簡単に感じるのか。俺たちにもそれは用意されていたかったもんだ。


「お待たせしてすみません!勇者様方!」

「ちょっ!?頭を上げてください!どうしたんですか?」

「さっきは丁重なおもてなしをできなくて申し訳ありません!今、村長が向かっているのでこちらでおくつろぎください!」

「ど、どうしよう。ジン…」

「せっかくだ。待っていよう」

「なんでそんなに堂々としていられるのよ…」


 そんなこといちいち気にしなくてもいいのに。

 これが勇者の力か。意外といいじゃないか。

 これはけっこう楽にいけそうだな。

 イージーゲームもまた一つの楽しみか。


*


「お待たせして申し訳ございません!ケルト村の村長、サハル・ルーク・アリアルと申します。この度はわざわざ私たちの村へ足を運んでいただきありがとうございます」

「…ジン、どうしたらいいの?」

「俺が対応する。そこで聞いてて」

「分かったわ」


「いきなり来て申し訳ない」

「いえいえ!そんなことは一切――」

「それはいいよ。このままだと話が進まない。とりあえず俺の話を聞いてくれ。まず勇者についてだ。俺たちより前にもいたのか?」

「はい。以前は100年前。魔王の復活に合わせて勇者も誕生すると言われております。それと、二人の勇者は『伝説の勇者』と言われておりま」

「それはなぜ?」

「およそ1000年前にも二人の勇者がいました。その二人は『俺たちの後にまた二人の勇者が現れる。その二人は歴代の勇者より強いだろう』、と」


 本当にゲームみたいだな。

 こんな文献も残らないような村でもしっかり残っている。

 よほど人気な言い伝えとなっているのか。

 しかもそれが俺たちか。まるでスペシャルゲスト扱いだ。


「分かった。次の質問だけどこれの見方が分からない」

「ステータスカードですね。私のカードでご説明いたします」



Name:サハル・ルーク・アリアル(人間)

Job:村長Lv.3

HP:2,150/2,150

MP:520/520

ATK:300

MATK:150

DEF:420

MDEF:220

AGI:320

LUK:20



「随分低いね」

「勇者様から見れば雑魚同然。しかし我々一般人ではこれでも高い方なのです」

「そうか。それは悪いことを言ったね」

「いえいえ!滅相もございません」


「ではこちらのステータスカードの説明をさせていただきます。Nameは持ち主の名前でその横に種族が書かれています。私みたいな村長はもちろん勇者も人間と表示されます。他にも種族はいますが今は割愛させていただきます。

 次にJobです。こちらは誰でも変えられますが、一部の職業は変えることは出来なくなっております。その横にあるLv.は記載通りレベルです。これは職業によってステータスの上がり幅が変わります。勇者様方はLv.0なのでまだしっかり勇者になれておりません」

「要するに俺たちは未熟者だと?」

「!?いえ、そういうわけではありません。お気に障ることを言ってしまい、申し訳ございません」

「ちょっとジン!いきなりどうしたの?」

「いや、そんなつもりはなかったんだが」


 今のはなんだ?

 確かに少しは癪に障ったがそこまで怒ってはいない。

 なぜか勝手に威圧した。こんなできごとが起きたとしか言いようがない。


「おお!勇者様、こちらをご覧くださいませ」

「裏?」

「さようでございます。こちらは使える魔法、スキルなどが記載されております。普段は他人に見せないので新しく見つけた場合は見られないようにお気をつけてくださいませ」


 新しく書かれたスキルは『威圧Lv.1』。

 本当にゲームみたいだな。

 無意識ではあったがこれを使えれば、と思えば使えるのかもしれない。

 勇者補正かはたまたチート使用なのか。

 よっぽどシナリオ通りに進めさせたいみたいだな。


「こっちにもレベル表記があるが限界値はある?」

「一応ございます。大体は上位魔法かスキルに変化され、またLv.1から始まります」

「それは役職も?」

「いえ、役職は限界値までいくとMAXと書かれます」

「なるほど…。今までの勇者でMAXまでいったものはいるの?」

「いません。最高でLv.58と言われております」


 結構高いな。そのレベルまでいくのに何年、何十年とかかるのだろうか。

 何かメリットでもあれば上げるに越したことはない。が、そこまで優先してあげる必要もないだろう。


「さっきのステータスの続き教えてもらっていいかな?」

「かしこまりました。続いてHPです。これは左が現在の体力、右に最大体力が表記されております。左が0になると死んでしまうのでご注意を。続いて――」


 ここからはやたら説明が長かったからまとめると、


 MP:魔力/最大魔力、なくなると魔法が使えない。魔力が足りないと使えない魔法がある。

 ATK:物理攻撃力。高いからマッチョというわけではない。

 MATK:魔法攻撃力。たとえ強い魔法が使えても低いと弱い。

 DEF:物理防御力。鎧が無くてもカバーできる。

 MDEF:魔法防御力。魔法からの防御力。強い魔法でも軽減できたりする。

 AGI:素早さ。ATKが低いならこれを上げてカバーする者もいる。

 LUK:運。高いところから落ちた時に打ちどころがいいとかの運。


 とのこと。

 俺たちは勇者だからステータスが高いわけだがまだレベルは0。たった1上がるだけで村長のステータスぐらい上がるときもあるらしい。

 どんだけチートなんだよ。魔王なんて敵じゃなくなると思うんだが。

 ゲームバランス壊滅的だな。


「それでレベルを上げたいんだがどうすればいい?何か敵でも倒せばいいの?」

「いえ、勇者様のレベルを1にあげるのは教会で儀式をするしかできません。この村にも小さいですが教会がございます。今からでも儀式をできますがすぐ行いますか?」

「俺はかまわないけど、サツキはどうする?」

「私も大丈夫だわ」

「ではご案内いたします」


*


「こちらでございます。あとは牧師が行うのでそちらでお願いいたします」

「うん。ここまでありがとう」

「いえいえ、もったいなきお言葉でございます。では私はこれで」

「お初にお目にかかります。私はこの教会の牧師、モア・オトリーと申します。早速ですがこちらへどうぞ」


 確かに小さくもなく大きくもないものの荷物が多いせいか狭く感じる。

 何より椅子が多いってことは進行する者も多いということだろう。

 正面にある像にもたくさんの花が飾られている。

 少し狭いが人が多くは入れる。結婚式にはぴったりな場所だな。


「まるで結婚式場みたいだな」

「ジンもそういうのに憧れたりしたことある?」

「前に一回だけ考えたことあるかな。結婚願望もあるにはあるし、それならいい結婚をしたいとも思っていたからね。こういう教会も見ていたよ」

「なるほどなるほど…」


 真剣な顔で頷いているけどその質問は男の俺だと思うんだが。

 そっちが疑問に思ったんなら向こうも興味があるんだろう。

 きっと俺よりもいいところを見つけれると思う。俺よりもそういうとセンスはあるからな。


「勇者様方。よろしいでしょうか?」

「ああ、ごめん。どうしたの?」

「こちらへお越しください。あとは目の前の神様に向かってお祈りをしてくださればレベルが1になります。目上の方がお祈りしている際は下の者は見てはいけないことになっております。

 あちらの部屋で待機してるので終わりましたらこのベルを鳴らしてください」

「なんでわざわざそんなことをしているんですか?」

「人によってはたとえ相手が神様でも頭を下げてる姿を見られるのを嫌う者がいます。そのためにあのように待機部屋をご用意させております。では」


 人類みな平等という社会ではないからそういうところは細かい。

 ただこれは本当に神なのか?ただの石で人間っぽい形にしたようにしか見えない。

 細かいのか雑なのか。絶対にこっちの方を細かくした方がいいと思うけどな。


「とりあえずさっさと終わらせよう」

「こうすればいいのかな?」

「祈りをするならそうすればいいと思う」


 俺とサツキは同じように片膝をつき、像へ向かって手を組んだ。

 正直こんなことはしたくない。神なんてあてにしてなかったし。

 実際に会うまでは存在しないと思っていたぐらいだからな。

 というかこんなことさせるってことは大体この後のことは予想がつく。

 嫌な神様だな。


*


「やあやあ。さっきぶりだね」

「チュートリアルクリア、ってところだろ?」

「さすがだね!きみを選んで正解だったよ」


 またこいつか。

 こいつが相手ならサツキがいないほうがありがたいんだが。


「今は僕たちしかいないから安心して。君とは一対一で話したかったからね」

「へえ。優しい神様だな」

「うんうん!ほかの人がいたら本音で話し合えないからね。君はもう分かっているだろう?これはどういうゲームか」

勇者()が魔王を倒すゲームだろ?自分で言っといて忘れたのか?」

「またまたそんな回りくどいことを。もしかして焦らしているのかい?嫌いではないけど君の時間が無駄になるだけだよ」

「…俺とてめえの戦いだろ?そっちの勝利条件はシナリオ通りに進めること。だが俺の勝利条件がいまだに確信までいかない」

「そりゃあそうだよ。まだなんも情報がないからね。君の勝利条件は大方予想通り僕を倒すこと。僕も向こうの世界に行く。そこで君が僕を倒したら君の勝ち」

「こっちのほうが有利に思えるがいいのか?何なら魔法を使えなくしてもいいんだぞ?」

「いやいや、これでフェアな戦いなんだ。そのうち分かるよ」


「っと、そろそろ解散にしよう」

「そういえばサツキにはどう説明したんだ?」

「いや、ここに呼んだの君だけ。もう一人のほうは適当に話しているだけだよ」

「分身でもできるってのか?」

「神様だからね。動作もないよ。ただ話す内容もなくなりかけたから終わりにしたいんだ」

「まあいい。俺もてめえとあまり長く話したくないからな帰らせてもらうよ」

「またね。次会うときを楽しみにしているよ」


*


 戻ると手を組んだ状態のままだった。

 これってやっぱりあいつに祈ってたのも同然だよな?

 やっぱりあいつは嫌いだ。


「ジンもあの神様から何か説明を受けていたの?」

「まあそうだね。たぶんおんなじこと」

「じゃあ終わったから呼びましょうか」


 そういうとベルを鳴らした。

 音が響いたと途端すぐに部屋から出てきた。

 本当にそこで待っていたのか。好奇心とかで見てるかと思っていたけど。


「お疲れ様です。ステータスカードは御覧になりましたか?」

「いや、まだ見てないけど」

「なら一緒に見ようよ」

「そうだな。気になるし」



Name:ジン・タカサキ(人間)

Job:勇者Lv.1

HP:20,000/20,000 (+10,000)

MP:150,000/150,000 (+50,000)

ATK:3,000 (+1,500)

MATK:1,500 (+500)

DEF:3,000 (+1,500)

MDEF:1,500 (+500)

AGI:1,000 (+500)

LUK:100(MAX)



Name:サツキ・サミダレ(人間)

Job:勇者Lv.1

HP:15,000/15,000 (+7,000)

MP:250,000/250,000 (+100,000)

ATK:1,000 (+300)

MATK:3,500 (+1,500)

DEF:1,500 (+500)

MDEF:3,500 (+1,500)

AGI:800 (+400)

LUK:100(MAX)



「すごいですね…。私たちが何しようが勝てないステータスでございます」

「たった1上がるだけでこんなに上がるんだ…。全然実感わかないね」

「そうだな。あとは実戦で試すしかないようだな」

「それでしたら村を少し出れば勇者様の相手にならないと思いますがスライムやゴブリンなどがいます。それで試してみるのはどうでしょうか?」

「それがいいな。さっそくだけど試してみよう」

「ジン。どこか楽しそうじゃない?」

「うん、楽しいよ…」


 こっちは宣戦布告をされたんだ。

 今まで消えかけていた闘争心に火が付いたんだ。

 しかも規模がでかくてなおさらモチベーションがあがる。

 ここまでの俺たちの扱い。このステータス。間違いなく今までやってきたようにうまくはいかないはず。

 自然と笑みがでてしまう。


「私が引き続きご案内いたします。今後ステータスや魔法やスキルが裏に書かれていくと思います。私たちではわからないことが多いため、申し訳ありませんが実際に使ってみてください」

「わかった。とにかく試さないと分からない」

「ではこちらへどうぞ」





「楽しそうだね、シルル」

「カララか。相変わらず自由だな」

「君に言われたくないよ。やっと見つかったんだって?」

「うん。僕の求めていた人間をやっと見つけた…。何百年かかったことやら」

「そんなにすごいの?彼は」

「すごいよ、すごすぎる。求めていた以上かもしれない」

「あの君がそこまでいうのか…。本当にいいんだね?」

「僕はもう行くよ。バイバイ、カララ」

「…バイバイ、シルル。君が何をしようが、私は黙って見守るだけだよ」

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