首席騎士様は、首をどんどんと赤くする
あんまりマジマジと見られても、リカルド様が落ち着かないだろう。そう思ってあたしはあえて視線を外し、薔薇を存分に楽しむことにした。幸い薔薇はどれだけ見ても足りないくらいにたくさんある。
ひとつひとつの薔薇の花びらの形、香り、色を丁寧に見ているうちに、なんだか満ち足りた気持ちになってきた。
お日様がポカポカあったかくって、お庭はびっくりするくらい広々としてて、いい匂いがして、薔薇が綺麗で、あんまり喋らないけど隣にはリカルド様がいる。
なんて素敵な日なんだろう。
ちょっとでも長く、今日のこの時間が続けばいいのに。
そう思ってリカルド様を見上げたら、自然と口元が綻んでしまった。
「気持ちいい天気ですね」
まだ手のひらで顔を隠したままのリカルド様に話しかけたら、声はちゃんと聞こえたらしくて、コクコクと頷いてくれる。へへ、なんだか幸せだなぁ。
空を仰ぐフリをしながら、ちらちらとリカルド様を盗み見る。そしたら、指の隙間からどうやらあたしを見ていたらしいリカルド様と目が合った。
その瞬間、リカルド様の首が一気に赤みを増す。
その首筋の赤さに、さらに顔を背けようとする仕草に、胸がキュンとする。
相変わらずだなぁ。戦ってるときはあんなに強くてかっこよくて頼もしいのに、人と話すとなったら突然ダメな感じになるんだもん。
可愛い、好きだなぁ、って気持ちが溢れてくる。あたし、もっともっと、リカルド様と仲良くなりたい。
正直さっきまではさ、「せめてお友達って思ってもらえるくらいに仲良くなれればなぁ」って、そう思ってたんだ。
なんせあたしは庶民だし魔法学校でも落ちこぼれだし、上位貴族であるリカルド様のお友達になりたいとか思うのも本当は不敬だって分かってる。ましてや恋人になりたいなんて、夢のまた夢だ。
でも今日ご家族に会って、リカルド様が頑張ってる姿を見て、考えが変わった。
あたし、あきらめたくない。
リカルド様だってこれまでずっとコンプレックス持ってて、お兄さんには敵わないって思ってたんだよ? でもきっかけさえあれば、こんなふうに奇跡だって思えることが起きるじゃない。それはリカルド様がずっと努力を続けてきたからこそ、起きたんだもの。
だからあたしもね、必死で努力しようと思うんだ。
リカルド様じゃないけどさ、あたしにもコンプレックスっていうか、劣等感があるから勇気が出ないワケだよね。
庶民だの、落ちこぼれだの、気にならないくらいあたしがビッグになればいいんだよ。
せっかくリカルド様のおかげで魔法が使えるようになったんだ。めちゃめちゃ頑張って、成績だってあげちゃってさ、国の魔法省とかからスカウトがくるくらいになれば、きっと劣等感なんかふっ飛んじゃうよ。
悩んだり足踏みしてるヒマなんかない。
結果は別としてさ、せめてリカルド様に堂々と、かっこよく告白できるようにあたし、一生懸命に頑張ろう。