首席騎士様は、勝負を受ける
「なんだと小娘!」
もちろんお兄さんは激昂してるし、リカルド様のお父さんやお母さんも驚いた顔であたしを見てる。
とほほ……鼻っ柱の強い娘だと思われてるんだろうな、リカルド様ごめんなさい。
「随分とリカルドを信頼しているようだが、リカルドが俺に勝てるわけがないだろう。幼い頃から一度たりとも俺に勝ったことなどない、脆弱な男だぞ」
「お兄さんがどれほど強いのか知りませんけど、でも子供の時ならいざ知らず剣も魔法もあれほど鍛えているリカルド様が負けるはずないもの。一回本気で戦ってみればいいんだわ」
「くっ……生意気な小娘め!」
凄い目で睨まれて、一瞬腰が引けそうになるけど、でも、負けないんだから!
ご家族に嫌われるのは悲しいけど、でももういいよ。リカルド様がこれで不当な扱いを受けなくなるなら、
それでいいもの。
「ユーリン、ありがとう。だが兄が強いのは本当だ、剣の腕は次期騎士団の団長候補だと言われているほどだから……俺を不甲斐なく思うのも仕方がないことだ」
「リカルド様も! いつまでそんなに卑屈な気持ちでいるつもりです!?」
思わずリカルド様にもくってかかっていた。そうだよ、そもそもリカルド様のこの姿勢に頭にきてるんだからね!
「あたしは別に、お兄さんが弱いなんて思ってません。リカルド様がそこまで言うんだからきっと信じられないくらい強いんでしょ? でも、それでもリカルド様の方が絶対に強いもの!」
「ユーリン……」
「小娘が!」
お兄さんがガタッと椅子を鳴らして立ち上がった瞬間。
「いいだろう。いい機会だ、鍛錬場にて一戦交えるが良かろう」
リカルド様のお父さんの、重々しいお声が響いた。
「父上!?」
「ユーリン嬢の言ももっともだ。剣も魔法も、そのほか全ての技を使って力を競ってみなさい」
「神聖な鍛錬場に魔法を持ち込めと!?」
さらに声を荒げるお兄さんに、お父さんはゆっくりと首肯する。
「お前は魔法を下に見ているようだが、魔法とて充分に尊敬するに値する才能と技術だ。確かに我が家系では剣の資質と実力が重んじられるが、さりとてけして貶めて良いものではないのだよ」
「父上!?」
「お前の気持ちはよく分かる。私も若い時分は同じように魔法を侮っていたからな。だが……戦場で、魔物の前で『正々堂々剣だけで戦え』など、戯言に過ぎまい。持てるスキルを全て使い全力で相手を倒すはずだ。ユーリン嬢の言うとおり、強さとは総合力だ」
「父上……」
お兄さんが裏切られたような顔でお父さんを見る。お父さんは、その視線をしっかりと受け止めて「お前にとってもいい機会になるだろう」と重々しく告げた。
そして、今度はリカルド様にゆっくりとむきなおり、その意を問う。
「リカルド、どうかね。やってみるかね?」
「……はい」
僅かに逡巡したあと、リカルド様ははっきりと首肯した。