首席騎士様は、ふたたび目が泳ぐ
リカルド様はずるい。
そんなふうに素直に謝られてしまったら、これ以上追求できないじゃないか。物理的に逃げられちゃうのは防げても、この攻撃は防げないなぁ。リカルド様、手強い。
「ユーリン……?」
所在なげな感じで伏し目がちにチラチラ見るのやめて。強く言えなくなっちゃうじゃない。
「分かりました、しばらく追求しないことにします」
「! ありがとう!」
しょうがないなぁ。そんなに安堵した顔されたら、もう何も言えないよ。
そうだよね、理由なんか無理に聞き出すこともない。前みたいに普通に話せるようになるなら、細かいことなんて本当はどうでもいいんだ、きっと。
ただ、これからも普通に会えるように、ひとつだけ約束をとりつけておかないと。そう思ってあたしは念押しの一言を口にする。
「それで、誤解は解けたと思うんですけど……これからはちゃんと、リカルド様が教えてくれます?」
「もちろんだ」
力強く請け負ってくれるその顔に、もう迷いはないみたい。これまでの十日にわたる悲しさもこれで解決できたと思えば、成果は上々だろう。思わず口元がほころんだ。
「良かった。よろしくお願いします、先生」
「先生はやめてくれ、面映ゆい。これまでの分も取り戻せるよう全力で教えるから許して欲しい」
「もういいです、誤解も解けたことだし」
そうだよ、よく考えればあたしみたいな劣等生が首席騎士様とこんなふうに普通に話すことだって、本当はありえないことだったんだもんね。
わがままばっかり言える立場じゃなかったよ。
「ユーリン」
「はい?」
「その……」
あれ? どうしたんだろう。やっと討伐演習の時みたいなくだけた雰囲気になったと思ったのに、またリカルド様の目がおよおよと泳ぎ始めた。
今度はどうした?
「どうしました?」
「いや、言いにくいことを思い出した」
「そこまで聞いたら気になるんで言っちゃってください」
「うむ……」
頷いたのに、それでもリカルド様はうなったままなかなか口を開かない。でも、さっきみたいに「時間をくれ」って言わないあたり、今話すつもりはあるってことだろう。
焦れる気持ちを抑えつつ、あたしは辛抱強く待つことにした。とりあえず、頑張れ、リカルド様。
「……ユーリンは嬉しくないかも知れないのだが」
おっ、話す気になったか。リカルド様の心が折れないように、あたしはただ頷いて話の続きを待つ。
「討伐演習の話を聞いた父と母が……」
そこで一回ゆっくりと息をつくリカルド様。やっぱりとっても言いにくい話ってことなんだろうけど、リカルド様のお父さんとお母さんが関係する話なんて想像もつかないな。
頭の中に? を浮かべながらリカルド様を見たら、眉毛がちょっとだけ下がっていた。
「ユーリンを家に連れてこいとうるさくて」
「はい!?」
我ながら素っ頓狂な声が出ちゃった。だって予想外にもほどがあるんですけど!?




