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首席騎士様は、消沈する

「ああ、帰路がただただ億劫らしくてな、獲物が重いだの王都まで遠いだの、お前は転移で跳べるからズルいだの……まああれは、ただの暇つぶしの愚痴だと思うが」


「あはは、本当にリカルド様とジェードさんって仲良しですよね」


「別に仲良くはない。むしろアイツは面倒くさい」



苦虫を噛み潰したような顔をしているけれど、リカルド様は結構、無意識にジェードさんを大切に思ってると思うんだけどな。



「そんなこと言って、ジェードさんが危険な目に遭ったときはあんなに心配して、怒ってたじゃないですか」


「あ、あれは……生死がかかった場合、人として当然の反応だと思うが」


「ふふ、そういうことにしておきましょうか」



照れくさそうなリカルド様にそう言って笑ったら、リカルド様は少しだけ視線をそらして「確かに助けられる部分も多いから……感謝はしているが」なんて呟いた。


苦手だ、面倒くさい、なんて言いながらも『感謝している』っていうあたりが、リカルド様らしい。ジェードさんも多分、リカルド様のそんな気持ちを察しているから、積極的に世話を焼けるんだろう。なんだか不思議な関係だなぁ。


ちょっと羨ましい。



「感謝、かぁ。そうですね、ジェードさんって顔も成績も良くってコミュ力も高いらしいとはお噂でかねがねって感じでしたけど、その上性格もいいってのは初めて知りました」


「性格、いいか?」


「いいと思いますよ? あんな危ない目にあってもアリシア様を責めなかったし」


「なるほど、確かに。あの精神には俺も驚嘆した」


「女性人気が高いのもわかるなぁって思いました。きっとアリシア様もキュンときたんじゃないかな」


「……そう、か」



なぜかリカルド様はわずかに目を見開いた。でもそれは本当に一瞬で、自分でも気のせいだったのかとリカルド様の顔を二度見したくらい。



「リカルド様? どうかしました?」


「いや、特には。なにかおかしいか?」



聞き返されると、これと言った変化があるわけじゃないんだけど、でも。やっぱりなんとなく、声のトーンが落ちた気がするんだけど。



「そろそろ眠ろう、ユーリンも今日は疲れただろう」


「はい。そうだリカルド様、学園に戻ってからも魔法を教えてくれるって約束、忘れないでくださいね! あたし、楽しみにしてますから」



少しだけ感じる微妙な空気を吹き飛ばしたくて、あたしはあえて元気な声でそう言った。学園に戻っても、リカルド様に会える口実が欲しいって、無意識に思っていたのかも知れない。


リカルド様はゆっくりとあたしを見て、ひとつ頷く。



「ああ、もちろんだ。ユーリンのためになるように、考えておこう」



そう約束してくれる言葉とは裏腹に、なぜかリカルド様の表情が少し寂しそうに見えたのが気がかりだった。

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