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首席騎士様は、あたしに手を差し伸べる

「A……ランク」


「そうそう、Aランク。死ぬと思わない?」



さすがのアリシア様も、首席騎士様がAランクの魔物を狙うとは思っていなかったらしい。


首席騎士様の顔を見上げながら、ポカンと口をあけてしばし呆然と佇んでいた。



「……親父に、厳命されている」



あんまり見つめられて居心地が悪かったのか、首席騎士様は気まずそうにそう呟いた。



「ま、Bランクでも十分に立派だって。まだオレたち一回生なんだからね。だいたい、過去にこの演習でBランクを狩った生徒だって、三チームだけだっていうよ」



首席騎士様の呟きにのっけるように、ジェード様が明るく笑う。



「命あっての物種だしね、まずはBランクで腕試ししてさ、いけそうならAランクに挑戦しようよ」



さすが学年二位、チャラそうに見えても頭がいい。挑戦しないとは言わずに、無謀な選択肢を先延ばしにする提案をぶつけている。


しかしアリシア様の決意は固かった。



「わ、わたくしもお父様から厳命されているのです! 負けるわけにはいきません!」



青い顔で、それでも固く拳を握って宣言するアリシア様。ジェードさんは、深ぁいため息をついてから、「オレ生きて帰れるかなー……」と空を仰いだ。



「さぁ、ボヤボヤはしていられません! この辺りでAランクの住処といえば、レッドラップ山とその周辺のシーフォレスト樹海です。馬を飛ばしても丸二日はかかりますもの、早く出発しなくては!」


「あー……行くのは決定なわけね」


「当たり前でしょう! ところであなた、貧弱そうに見えますけれど、馬は乗れて?」


「……馬術はA評価だよ」



この学校のアイドルともいえるほど人気のジェードさんをここまでコケに出来る人なんて、アリシア様くらいなんじゃなかろうか。


アリシア様に腕をぐいぐいと引っ張られて、ジェードさんの姿が徐々に小さくなっていく。なんというかご愁傷様としか言いようがない。



「お前らも無茶すんなよ! 命は一つなんだからなー!」



あの状況でこっちの心配までしてくれるとは、ジェードさんは意外と性格もイケメンなのかもしれないなぁ。



「嵐のようだったな」


「はい」



なんだかんだとわちゃわちゃしているうちに、周りはいつの間にか結構閑散としてしまっている。生徒たちも各々の実力に見合った魔物を狩りに、旅立っていったんだろう。


この演習に許された期間は二週間。その間で狩った魔物のランク・数が評価の値となる。時間が惜しいのはどのチームだって同じなんだ。



「では、俺たちもいくか。……その……手を」


気恥ずかしそうに手を差し伸べられて、思わずその手をとった瞬間だった。



「えっ!?」



景色がいきなり大きくゆがみ、立ち眩みかと目を閉じて……開けたら、周囲は鬱蒼とした森に変わっていた。

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