首席騎士様は、成果を誇る
「ありがとう。二人がいなかったら、今頃オレもアリシア嬢も生きてはいなかったと思う」
「悔しいですけれど、完敗ですわ。お二人には感謝してもし足りません。本当に、ありがとうございました」
驚くほど丁寧にお礼を言って、二人は樹海の奥へと消えていった。
大丈夫なのかな、さっきみたいに強大な魔物に遭遇したりしないのかな。そんな不安が頭をもたげるけれど、その心配は一蹴された。
「問題ない、先ほど広範囲で浄化の魔法をかけた。さすがにもう、魔物寄せの薬の効果はないだろう」
「あ、もしかしてさっきあんなに巨大なドラゴンが出現したのって」
「ああ、アリシア嬢が結界を解いたせいで、彼女に付着していた薬の残滓が魔物を呼び寄せたんだろう。君という天然の撒き餌も一緒だった故にあんな大物を引き寄せたのかも知れない」
「……!」
リカルド様の言葉にぞっとする。
魔法薬はもうないかもしれないけど、あたしの撒き餌度は別に変わらないわけで……それって、全然安心できないんじゃ?
不安に思うあたしに、リカルド様は穏やかな目を向けた。
「さあ、帰ろう。学園の敷地内は強力な結界が施されている。あそこより安全なところなど、この世のどこにもないからな」
「はい……やっぱり、危険なんですね」
「ああ、ユーリンは戻り次第、魔力の制御を再度習得した方がいいだろう」
「……リカルド様、教えてくれます?」
おずおずと切り出すあたしに、リカルド様は嬉しそうに微笑む。
「もちろんだ、任せてくれ」
それは、リカルド様に会ってから一番の、はっきりとした笑顔だった。
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「本当にA、ランクを、狩ってきただと……!?」
ふははははっ! 驚愕するがいい!!!
ああ、気持ちいい。目の前には驚いて腰を抜かさんばかりの学年主任の顔がある。
さすがにAランク+Bランク十二体の頭を目の前にすれば、そんな反応にもなるだろう。言っとくけど頭を持ち帰れなかったものも含めれば、もっとあるんだからね! 全部リカルド様が狩ったものだけどね!
「くっ……ハンデが足りなかったか」
ギロリとあたしを見る目は、いかにも忌々しげだ。ほんとヤなヤツだなぁ。
そう思ったのはリカルド様も同じだったみたいで、あたしの代わりにスゴイ厳しい目で学年主任をにらみ返している。
「彼女はハンデではありません。Aランクの飛龍を倒せたのは彼女のおかげです」
「はん、そんな筈があるまい。この落ちこぼれが何をできるというのかね」