表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/144

首席騎士様は、鬼神のごとく屠る

それからはもう、ただただ胃が痛くなるような時間だった。


明らかに魔物たちはジェードさんを狙っていて、襲いかかってくる魔物達を相手にジェードさんは攻撃をかわすだけで手一杯。


ジェードさんが防戦に徹すれば、彼を襲う魔物たちにも隙ができる。


その隙をついて、リカルド様が一匹、また一匹と確実に仕留めていくんだ。よく言えば役割分担ができている。


ただ、あまりにも魔物の数が多い。すべては防ぎきれなくて、ジェードさんの体にはいくつもの深い傷ができていた。


致命傷ではない。


でも……。


今ほど、自分の無能さを呪ったことはなかった。


あたしが参戦できれば、あんなにも危険な戦い方をしなくても良かったはずだ。


あんなにも、ジェードさんが血まみれにならなくて、良かった筈だ。


あんなにも、リカルド様がすべての敵を屠らなくて良かった筈だ。



情けない。


魔力の出力がうまく制御できないから、二人を巻き添えにしそうで、怖くて援護射撃もできないなんて。


悔しい。申し訳ない。



結界の横に、巨大な魔物たちの亡骸が積み上がって。


ジェードさんは自らの血で赤く染まり、リカルド様は魔物の返り血で青く染まり……ようやく、魔物の叫びが聞こえなくなった頃には、あたしは自分の無能さ、ふがいなさに、涙が止まらなくなっていた。



「終わったか」



ビュッと鋭く剣を振って、青い血を振り払ったリカルド様は、剣を鞘に収めながら、悠然と結界に戻ってくる。



「Bランクの魔物を大量に……あんな簡単に仕留めるって、お前ホントおかしくない?」


「簡単にではない。どの魔物も命がけで仕留めている」



ジェードさんの軽口に、リカルド様が至極まじめに答えているのが聞こえてくるけれど、反応なんてできなかった。


あたしから見たら、複数のBランクの魔物の攻撃を見極めて、最小限の負傷でとどめたジェードさんだって充分にすごい。彼が魔物をひきつけていたからこそ、リカルド様だってあれだけの数の上級魔物を屠ることができた。



「まぁでもおかげで命拾いしたよ、ありがとな。ユーリンちゃんも……って、え!? なんで泣いてるの!?」


「だ、だって、血が……」



二人がこんなに血まみれで戻ってきているっていうのに、回復魔法すら自信がなくてかけられない自分が、心底イヤだ。


なのに、リカルド様はなにを勘違いしたのか、なぜか「そうか、すまない」と呟いた。



そして、淡い水色の光がふわりと浮かび、リカルド様とジェードさんを洗っていく。瞬く間に、二人の体からは血の痕跡が消え失せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の新作】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『麗しの男装騎士は、スパダリになりたい』

新作です。王子の婚約者としての任も護衛の任も突如解かれたレオニー。 傷心で集中力を削がれた彼女は剣術の模擬戦で顔に傷を負う。高身長に婚約破棄、顔に傷。自分の女性としてのマイナススペックに苦笑しつつ騎士として生きていくことを決意する彼女の前に現れたのは……。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ