首席騎士様は、ついにドラゴンを討伐する
ドラゴンの壮絶な叫び声が、山に樹海に響き渡る。
リカルド様の魔法で体を打ち抜かれバランスを崩したんだろうドラゴンは、力なく墜落していく。
「あっ……」
落ちていくドラゴンの体が、何かに弾かれたように急に横にとんだ。ここからでは何があったのか見えやしないけれど、リカルド様が追加の魔法でも撃ったんだろうか。
驚きで目が離せない。瞬きすらできずに山上を見続けていたら、いきなり、ドラゴンの首が体から分断された。
「!!!!!!?」
えええ、嘘でしょ!? まさかリカルド様が切り落としたの? 剣で???
人間がそんなことできるの!?
あっけに取られていたあたしは、再び目を疑った。
えっ……ドラゴンの、頭が、消えた……?
「遅くなった」
「ひっ!?」
突然後ろから声をかけられて、あたしは文字通り飛び上がる。
「リカルド様? ……ひえええっ!!!?」
恐る恐る振り返って、もう一回、今度はより高く飛びあがったのは仕方ないだろう。だって、リカルド様ったら、ドラゴンの首を肩の上に担いでる……っ!
凄絶な最後を飾ったにふさわしい、叫んだような形相のまま死んだらしいドラゴンの首は、尋常じゃなく恐ろしい。しかもリカルド様の足元には、早速鮮血の血だまりができている。
直視できなくて、あたしは座り込んで目を覆った。
「ああ、驚かせてすまない。もう死んでいるから大丈夫だ」
「それは分かってますぅぅぅ」
さっき仕留めたところも見てたもの。単に視覚の暴力に耐えられなかっただけだ。倒れなかったあたしを誰か褒めて欲しい。
ていうかこの人、本当に一人でドラゴン、倒しちゃったよ。
「こ、こ、こ、怖いから……! ひとまずドラゴンの頭、あっちに置いてきてください〜」
ついに泣きが入ってしまった。せっかく仕留めたのに申し訳ないけど、怖すぎてまともに会話も出来ないもの。ごめんなさい、リカルド様。
「そうか、すまん」
そして性格のいいリカルド様は、文句も言わずにドラゴンの首と共にあたしから距離をとってくれた。怖くて見てはいないけど、足音でわかる。
「顔を向こうにむけて置いてきた。血も浄化したから問題ないと思うが」
「ありがとうございます……ごめんなさい、リカルド様」
「問題ない。ドラゴンは俺も初めて見たが、恐怖を感じるのは当たり前だ」
なんてこった。本当に優しい。あれ? そういえば。
「リ、リカルド様、ケガは?」
「特にない。さっきは魔力切れをおこしただけだ」
「うそ……ドラゴンを人間が一人で倒せるなんて。しかもケガすらなく」
もはや人外レベルなのでは。もうなんだか賞賛の言葉しか頭に浮かんでこない。
「すごい……ほんと、すごい。なんか感動……あっ、リカルド様おめでとうございます!!!」
思いっきり賞賛したら、リカルド様は照れたように微笑んだ。
「君のおかげだ」