【首席騎士:リカルド視点】俺は驚いてばかりだ②
「そんなことをしなくても、あと数日で大丈夫だと言っているだろう」
「たぶん、リカルド様の言う通りなんでしょうけど……でも、やっとあたしも少しは戦える手段ができたし。ちょっとは役に立ちたいなって思っちゃって」
「気持ちは分かるが危険すぎる。頼むから、ここで待っていてくれないか?」
「そう、ですよね……ごめんなさい、わがまま言って」
明らかに落胆した顔を見ると可哀想な気持ちになるが、これだけは流石に是とは言えない。そもそもAランクに挑むのは俺の勝手な都合だ。その危険に彼女を巻き込むことだけはしたくなかった。
すっかりしょげたまま丸くなって眠ってしまった彼女に、申し訳ない思いを抱えながら悶々としていたら、おなじみのザーーーーー……というノイズのような音が響く。
「よっ! そろそろ魔物ゲットしたかぁ?」
「ジェード……またお前か。こう頻繁に念話してくるな。眠れん、迷惑だ」
「うっわ、いつもに増して機嫌が悪い……ってことは、ユーリンちゃんとなんかあった?」
げんなりする。まったく、なんだってこいつはこんなにも察しがいいんだ。
「あちゃー、いい感じで仲良くなってきたなぁと思って安心してたんだけどな。で、何があった?」
「関係ないだろう」
「ま、ないけどねー。で? 本当は結構落ちこんでるんでしょ。オニーサンに話してみなさいって」
俺はため息をついた。本当にコイツには敵わない。俺がうまく言葉にできなくてついつっけんどんな態度をとってしまっている時は、こうして察して重ねて聞いてくれるのだ。正直、申し訳なくもありがたくも思っている。
この勘の良さが俺にもあれば、もっと他者との関係もうまく構築できるのだろう。
「すまない」
「分かってるって。さ、話した話した」
いつも思うが、ジェードの懐の深さには感心する。本当に頭があがらない。
ジェードの親切に甘え、俺は今日のユーリンとのあれこれを、できる限り言葉にする。会話があまりうまいとは言えない俺の話を、ジェードは時に聞き返し、時に整理したりしながら聞き出していく。
「へえ、すごいじゃないか! ついにユーリンちゃん、才能開花したんだ!」
「ああ、凄まじいぞ。俺でも翻弄されるほどの魔力だった。だが……」
「あれ? なんか問題でもあるの?」
「Aランクの魔物討伐に、一緒に行きたいと言い出した」
「うわ、自信がついたのかな?」
「それが、おとりになると言うんだ。さすがにそんなこと、させられるワケがないだろう?」
それを聞いたジェードは、「なるほどね」と呟いたまま、しばらく考え込んでいるようだった。
「……そこまでして役に立ちたいんだね、きっと。連れて行かないっていうリカルドの判断は正しいと思うよ。でもオレは、ユーリンちゃんの気持ちもなんとなく分かるんだよね」
「そんなものか」
「うん。他のことでもいいから、ユーリンちゃんにも頼ってやりなよ」
いつになく歯切れの悪い言葉を残して、ジェードは「じゃ、またね」と念話を切る。
ジェードが言いたいことがうまく理解できていない気がして、俺はいつにも増して眠れない夜を過ごす羽目になってしまった。
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