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首席騎士様は、どこまでも優しい

「よっしゃ、命中!!!」



拳を振り上げ、勝利のポーズをとろうと思ったあたしだけど、それはすぐに悲鳴に変わった。



「ひえええええっ!?」



岩が消し飛ぶ。


岩の周囲どころか、山の岩肌までもが抉れて石つぶてとなって飛んでくる。膨大な砂埃があたし達を襲うかと思った瞬間に、目の前を大きな影が覆った。



「ユーリン!」


「リカルド様!?」



庇ってくれたのは嬉しいけれど、石つぶてがリカルド様の体に容赦なくあたる音だけが聞こえてきて、悲しくなった。


あたしってヤツはどうしてこう、やることなすこと、迷惑をかける結果になってしまうんだろう。



「無事か?」


「あたしは、なんとも。でも、リカルド様が……! ごめんなさい、あたし……」


「いや、こんなにも威力があるとは思わなかった。もはやエアスラッシュの威力を遙かに超えている。すごいじゃないか」



なんでそんなにいい人なの。


あたしのせいで酷い目に遭ってるのに、怒ることもない。包容力が半端ないんですけど。


あれだけの石つぶてを体中に受けて、いくら体を鍛えているからって平気なはずがない。リカルド様の体には、服に隠れてみえないだけで、きっと痣がたくさんできているに違いない。


だって、それくらいの勢いはあったもの。


でも。でも……。



「どうしよう、回復魔法をかけたいのに、加減がわからない」



普通にうった筈のエアスラッシュが、授業で見たのとはかけ離れた威力だったんだもの。今のあたしが回復魔法をかけたりしたら、とんでもない結果がでてもおかしくない。



「泣かなくていい。まだ自分の魔力の出力を制御できていないだけだ。君のパワーが桁外れだと確認できて、むしろ俺は嬉しい」


「なんでそんなに優しいんですか……」


「別に優しくはない。回復は自分でもできるし、それよりも、今の君なら俺とでも張り合えるレベルの魔法が打てるし、きっと近い将来魔術師として名を馳せる筈だ。こんな劇的な場面に立ち会えて光栄だよ」



そう言って、自分で簡単に回復魔法をかけちゃうリカルド様は頼もしいし、あたしを褒めてくれようとするのは嬉しいけれど、本当に申し訳なくって仕方がない。



「良かったな。それに、これで学年主任のザルツ教諭を見返せるじゃないか」



今は学年主任の先生なんてどうでもいい……っていうか、今となってはリカルド様と出会わせてくれたことに感謝したいくらいだし。いや、会ったら多分、あの嫌味にすぐ辟易するとは思うんだけどさ。


学年主任の先生まで持ち出して、あたしの気分をあげてくれようとするリカルド様は、本当にどこまでも優しい。


リカルド様の優しさを噛みしめながら、あたしは夕食後、何度も何度も魔力の出力を精一杯に練習した。

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