首席騎士様は、翼竜を狩りに
そして翌朝、昨日の魔獣の骨でとったスープにパンをつけた簡易な朝食をとって、早々にリカルド様は山に向かってしまった。
「翼竜を狩ってくる」
なんて言い置いて行ったけど、それがシャレじゃなくって本気なんだもんなぁ。まあ今日はまだ下見らしいけど、勢いで狩ってきちゃったりもしそうな感じ。いやはや、リカルド様ってやっぱり格が違うっていうか。
昨日のジェードさんとの念話であたしを起こしてしまったってしょげてた時も、そもそも、もうレッドラップ山のふもとにいるってのを聞いたジェードさんが、驚き過ぎて叫んだのが原因だって言うんだから、学年二位の人から見てもリカルド様ってやっぱり規格外なんだろうな。
さて、それはそれとして。
暇だ。
予想はしてたけど、超、暇だ。
昨日の魔獣はリカルド様があっという間に皮は鞣して、肉は干してしまったから、今特別に何かしないといけないわけでもない。
強いて言うなら、鞣した皮を浄化して、敷物だとかにすればいいかなってくらいだ。
リカルド様が帰ってくるまで、暇だ暇だと思って待つのは、なんだかやっぱり嫌だなぁ。
また、食事の準備でもする?
と言っても、ろくに食材もないし、リカルド様には携行食は大事に使えって言われてる。危険を冒して採ったベリーだって、今日、明日にもしおれてしまうだろう。
……そこまで考えて、ふと思いついた。
そっか、育てればいいんだ。
いそいそと昨日の残りのベリーを収穫し、さらに自分のリュックから携行食の袋を取り出す。
加工されたものがほとんどだけど、たしか乾燥させた植物の実の詰め合わせも買った筈。小腹が空いた時、歩きながらでも食べられるうえ、栄養も豊富だから、割と人気なんだよね。
「お。あった、あった」
さすがに殻をむかれてローストされたのは無理だろうけど、乾燥させただけのものや、保存のためにあえて収穫したまま入れられているものもあって、これならいくつかの植物は発芽できるかもしれない。
嬉しくなって、早速あたしは木の枝を片手に、樹海との境目の土を掘り起こす。
どう見ても、レッドラップ山に近い方の赤茶けて草もろくに生えてない土よりも、樹海に近いとこの土の方が、腐葉土とかもあって栄養豊富そうだもんね。
ついでに柔らかそうだから、あたしの貧弱な腕でもこの木の枝で掘ったりできそう。
土に枝を突き入れてみれば案の定、三センチくらいは土に入っていく。
うん、これなら耕せそう。
本腰入れて作業するために、あたしはまず、ナイフで木の枝を削っていった。シャベルのかわりにするんだから、先はちょっと尖らせて、でも土が掬えるように少々丸みも欲しい。
時間なんかたっぷりある。
今後の作業がしやすいように、まずは道具作りをしっかりしないとね。