面倒を押し付けられるの!?
網を巻き上げるのって結構時間がかかるもので、港に帰り着いたときには太陽が随分と昇っていた。まだ真っ暗な時間に漁に出たのに、時間が経つのって早い。思いのほか大漁で、ラルタさんとマッシュさんにむしろお礼を言われてしまった。
しかもたくさんのお魚をお土産に貰って、あたし達はとりあえずいったん宿屋に戻ることにする。
「少し持つのに」
「たいした重さじゃない」
そしてその大量のお魚たちは、リカルド様がひとりで担いでいるのだった。持ちやすいように箱に入れてくれたけど、絶対重いと思うんだよね。
「ユーリンちゃん、大丈夫。コイツ信じられないくらい腕力あるから」
少なくともあたしよりは腕力があるだろうジェードさんはそんな事を言い放って、リカルド様を手伝う気はさらさらないらしい。まあさ、二人の間ではそれが普通なんだろうけど。だってめちゃめちゃ自然体だもんね、二人とも。
リカルド様に申し訳ないような、ジェードさんとの仲の良さを見せられて悔しいような、なんとも微妙な気分だ。
「しかし立派な魚ばかりだねぇ。これで宿の人達に美味しいものでも作ってもらおう」
「ですよねー! 楽しみだな」
「そんな呑気な……!」
少年の姿に戻ったアイルゥ先生とジェードさんが楽しげに会話するのを、アリシア様が止める。ついに我慢できなかったらしい。さっきから何か言いたそうだなぁって思ってたよ。
「アイルゥ先生! さっき仰ってた『解決のヒント』ってなんですの!? わたくしもう、気になって気になって」
「アリシアとジェードが一番わかる筈じゃない」
「えっ……」
アリシア様とジェードさんが顔を見合わせて互いに首を傾げていたら、リカルド様がポツリと呟いた。
「エルフのピアス……?」
「ご名答」
ニコッと可愛らしい笑みを浮かべてアイルゥ先生が頷く。
「どうせ午後からそのエルフの女性の所に行くだろう? そこで新たなヒントが貰えると思うよ」
「まぁ、どうしてそんなことが分かりますの?」
「だっていきなりピアスくれるなんて不自然でしょ。いくら同族って言っても知らん顔だってできるわけだし」
「確かに……」
「しかも教えてくれる魔法が浮遊ときた。絶対にあの風の大精霊の面倒、押し付ける気だと思う」
「えっ!!!?」
そんないきなりピンポイントな!? って思ったけど、アイルゥ先生は自信ありげだ。
「さ、腹が減ってはなんとやら、だ。とりあえずさっさとご飯食べるよ!」
それだけ言うと、どんどんと先に歩いて行ってしまう。
「……ホントかねぇ」
「行けば分かる」
ジェードさんのボヤきに、リカルド様が何てことないみたいに答えた。リカルド様ってホント基本は落ち着き払ってるんだよね。
確かにリカルド様の言う通り、行ってみれば分かるんだろうけど……。