表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/144

仕切りなおしってことですか?

「よし、今日のところは戻ろう」



突然、アイルゥ先生がそう宣言した。



「いきなり!?」


「そんな、せっかく事故の理由がわかりそうなのでしょう? 原因にきちんと話をつけるべきですわ」



ジェードさんとアリシア様が口々に抗議するけれど、アイルゥ先生はゆっくりとかぶりを振る。



「原因の一端が分かったからこそだよ」


「そうだな、俺も今日はここでいったん帰った方がいいと思う。この船をまた転覆させるわけにはいかないだろう」



リカルド様にそう言われた途端、ジェードさんもアリシア様も、「確かに……」「そう、ですわね」と急にしおらしくなってしまった。



「嵐の原因が人為的……と言っていいのか、つまり精霊と思われる女性が意図的に起こしているものだと判明している以上、うかつなことはできない」


「そうだよね、話しかけたらさらに暴走したり……なんてことになったら怖いよね」



リカルド様にそうすんなりと同意してから、あたしはその有様を想像して震えた。あたしには見えてないけど、ヒステリックな女王様風な人が怒り狂って暴風を巻き起こしてる様なんて考えたくもない、ホントに。


どうやら怖いと思ったのはあたしだけじゃなかったらしくて、ラルタさんとマッシュさんも顔を見合わせて明らかに渋い顔をした。



「なにがなんだか分からんが、怖いこと言うなよ」


「まさか町にまで被害が拡大しないだろうな」



ラルタさんの言葉にハッとする。確かに、その恐れがないわけじゃないんだ。だって相手は精霊で、今は沖合にいるけれどなんの拍子で移動するかなんてわかったもんじゃない。



「リカルド様……」



不安になってすぐ傍にいてくれたリカルド様を見上げたら、リカルド様も真剣な顔で頷いてくれた。



「確かに、慎重にことを進める必要があるな。相手が何を目的としてこんな事をやっているのかわからない」


「そうなんだよねぇ」



リカルド様の言に、アイルゥ先生もさも嫌そうに同意した。



「本当に七大精霊の一人だとしたら厄介だよ。常識が通じない上に力は強大だしね。精霊なんて短絡的で享楽的、って相場が決まってる」


「それ、すごくヤバいんじゃ……」



思わずつぶやいたら、アイルゥ先生に思いっきりため息をつかれてしまった。



「だから帰ろうって言ってんの。下手に怒らせでもしたらホントやばいから」


「……」



船の上に、いやーな沈黙が落ちた。そんなの、どうやって解決したらいいっていうんだろ。



「はいはい、そんな暗い顔しない! 大丈夫、ちゃんと解決のヒントももらってると思うし」


「えっ、なんですかそれ!?」


「それは町に戻ってからのお楽しみ。このまま帰れば投入してきた網も回収できるだろうし、とりあえずはここまで連れてきてもらったお礼に、しっかりと漁をしながら帰ろうじゃないか」



アイルゥ先生はそれ以上話してくれるつもりはないみたいで、アタシたちはもどかしい気持ちのまま、網を手繰りながら港へと戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の新作】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『麗しの男装騎士は、スパダリになりたい』

新作です。王子の婚約者としての任も護衛の任も突如解かれたレオニー。 傷心で集中力を削がれた彼女は剣術の模擬戦で顔に傷を負う。高身長に婚約破棄、顔に傷。自分の女性としてのマイナススペックに苦笑しつつ騎士として生きていくことを決意する彼女の前に現れたのは……。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ