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海が荒れるのが早い!

「昨日よりも海が荒れるのが早い!」


「風も出てきた!」


「ラルタ!帆を全部たため!」


「分かってる! みんなどっかに掴まっとけよ!」



船上が一気に慌ただしくなって、あたしは木の葉のように揺れる船の中で必死に態勢をととのえる。何度も波がザバッと入ってくるし、揺れ過ぎてどっちが上か下かもわからない。なんとか小島にたどり着いた時には、安堵で身体中の力が抜けて、舟底にへばりついてしまった。



「大丈夫か? ユーリン」


「リカルド様」



見上げたら、リカルド様が心配そうな顔であたしに手を差し伸べてくれている。その手の温かくてがっしりとした握り心地になんだかすごく安心する。


ぐいっと引っ張り上げられて舟の上で立ち上がってみたら、さっきまでの荒れっぷりが嘘だったみたいに凪いだ海原が見えた。



「島についた途端、風も波も穏やかになった」


「いったいぜんたい、どういうことだろうねぇ」



しきりに不思議がるリカルド様とアイルゥ先生。その後ろではマッシュさんとラルタさんが拳をコツンと突き合わせて、「助かった。腕はなまっちゃいねえみたいだな」「さすがの操船だった」なんてお互いを称え合っている。


やっと気持ちが落ち着いたあたしは、まだ舟のへりにしがみついているアリシア様に気が付いた。彼女の手をとってリカルド様がしてくれたみたいにその小さな身体を引っ張りあげる。可哀そうに、綺麗にセットされてた髪もぐちゃぐちゃだ。


なのに彼女は気丈にも、こう言った。



「ありがとう。でもわたくしは大丈夫です。それよりも、ジェード様を」



まだ足元もおぼつかないのに、アリシア様ったら可愛い。ついつい微笑ましく思いながらジェードさんの方を見たあたしは固まった。


何かから逃げるみたいに尻餅をついて後ずさった、そんな姿勢で。真っ青な顔で虚空を見ている。


そして、その後ろにはまったく同じ様子のユット君のお父さんがいた。違いと言えば、彼は大切そうに彼の奥様を抱きしめているってことくらいだ。



「ジェードさん?」



声をかけたら、ビクッとジェードさんの肩が揺れる。


ギギギ……と、軋む音がしそうなくらいぎこちない動きだけど、どうしたんだろ。とても普通の船酔いとは思えないんだけど。



「いまの、見た?」


「何がです?」


「ジェード、何か見えたのか」


「えっ!? リカルドもユーリンちゃんもアレ、見てないの? なんで?」



あたしはリカルド様と顔を見合わせて、互いに首をかしげる。あまりの風と波で揺られまくって必死に船に張り付いてたからあんまり自信ないけど、そんな特別になにか見えたってことないと思うけど。


ジェードさん達ったらいったい何を見たっていうんだろ。

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