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クアッ! クルルルクアッ

「クアッ! クアーーーーッ!!! クアッ! クルルルクアッ」



めっちゃ何か叫んでるけど、まったくわかんない。


でも、あたし達の行く手を遮ろうとしているのは確かで、なんとかこの先に行かせないように、と思っての行動だというのだけはなんとなくわかった。



「なに、どうしたんですか?」


「クアア、クルルッククカルゥ」



なんか言ってくれてるんだけどなー。ごめんなさい、分かんないよ。お母さんも通じないのが悔しいらしくってイライラとつばさをバタつかせている。


その時。



「大丈夫か!」



街の方から聞こえた声に振り返ったら、朝焼けの中に黒い点が見えた。……あれって、翼? と思ってじっと見れば、やがて人の姿に翼、というシルエットが海原の上を飛んでいる。その姿は徐々に近づいていた。


間違いない、絶対にユット君のお父さんだ。



「それ以上先に行っちゃいけない! 旋回して戻れ!」



遠くから、お父さんが叫ぶ声が聞こえる。きっとお母さんも同じような事を言ってくれてたんだろう。その緊迫した様子を見てあたしは思わずマッシュさんに声をかけた。



「マッシュさん! すみません、一旦船を止められますか!?」


「もうちょっとで転覆したポイントにつくんだぞ!?」


「現場につかないと意味がないんじゃありませんこと?」



マッシュさんはもちろん、アリシア様までが反論してくる。でも二人がこんなに必死に止めてくれてるんだもの。何か理由があってのことだと思うの。



「現場に突っ込むのは待ってくれませんか? 彼らの話を聞いてからでも遅くない」


「だよなー」



リカルド様とジェードさんがそう言ってくれて、全員の視線が自然とロマンスグレーなアイルゥ先生に注がれる。アイルゥ先生は、にっこりと笑って「船を止めよう」と判断をくだした。



「こちらに飛んできている彼は、昨日リカルド達の通訳をかって出てくれた人だろう?」


「そうです」


「マッシュさんを止めているのも、ユット君のお母さんだと思います」


「あー、なるほど」



そんな話をしているうちに、ユット君のお父さんがぐんぐん近づいてきて、足音さえ立てずに船へと着地する。そしてその肩に、ふわりとお母さんが舞い降りる。そして、「クアア……クルルッククカルゥ……」とお父さんになにか耳打ちした。


それに耳を傾けてから、お父さんがゆっくりとあたし達に歩み寄る。



「止まってくれてよかった。君たちがこの海域に入りかけた途端、気圧が嵐の前のように乱れ始めたと鳥たちから連絡があってね。昨日船が転覆した時と同じ現象だというものだから」



心配して止めにきてくれたのだという。昨日少し話しただけだというのに、優しい……!

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