一生、大事にします!
そうしていくつかお店をめぐって、聞き込みしながらついでにお店のものも見物して。
西の空が金色に光り始めた頃に辿り着いたお店は小さな小さな雑貨屋さん。お人形さんのように可愛らしいお姉さんが、手作りのペンダントや小物を売っているようなお店だった。
「うわぁ、流石に港の街ですね」
あたしが今まで行ったことがある街では見たことがないような、石や貝殻を彫ったような小物やアクセサリーは、どれもとても可愛らしい。このお店の店主であるお姉さんの好みなのか、どれも悪目立ちしないような小ぶりで繊細なデザインがとっても素敵。
「どれもすっごく! 可愛いですね」
「確かに珍しい意匠だな」
二人して珍しがって見ていたら、お姉さんが「身につけてみてもいいですよ」と言ってくれる。笑顔も素敵なお姉さんだなぁ。
「? ユーリン、つけてみないのか?」
「壊したりしたら嫌ですし、見てるだけで充分目の保養なんで」
「そんなものか」
決して無理強いはしないリカルド様らしく、あっさりと引き下がってくれるの、ほんとありがたい。正直可愛いけどなかなかのお値段だ。買う気もないのに試着するのって、あたしはちょっと気が引けちゃうんだよね。
でも、見るのはすっごく楽しい。
そんな気配を察してか、リカルド様はペンダントに見惚れる私を放置して、お姉さんから聞き取りをしっかりと行ってくれている。
不思議なことに、リカルド様ってこういう聞き取りとかは真顔で普通にできるんだよね。前にジェードさんが言ってたみたいに、本当に『雑談』が苦手なだけなんだろうか。
「ユーリン、待たせたな」
小さなお店の中を隅々まで見終わったあたりで、リカルド様に声をかけられた。
「すみません、あたしすっかり夢中になっちゃって」
お店の品物が可愛すぎて、つい見入ってしまっていたみたい。時間があっという間に過ぎてしまっていた。結局このお店での聞き込みを全部リカルド様に丸投げしてしまって、申し訳ないことをした。
ちょっと反省していたら、リカルド様はいつものなんてことないって顔で「いや、俺もいい買い物が出来た」なんて微笑んでくれる。そして、その手には小さな青い石がいくつも集まって、ゆらゆらと揺れる姿が愛らしい、海のしずくのようなペンダントが握られていた。
「うわぁ、可愛い! これ、すごくいいですよね! あたしも可愛いって思ってました!」
お母さんへのお土産かな。優しいリカルド様らしい。
そう思ったのに。
「ああ、気に入っていたようだから……その、今日の記念に、と思って……」
途端にぎこちなくなったリカルド様。でも、あたしだって驚き過ぎて言葉がでない。まさか、あたしが気に入ってたから、買ってくれたの……?
「そ、その……似合うと、思う。貰ってくれるか?」
「もちろんです!!! 一生! 一生、大事にします!」
リカルド様は「大げさだな」って笑うけど、だってめちゃくちゃ嬉しいんだもの!!!