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ベリーはいかが?

勢いよく育っていく蔓に蕾がついてフワッと花が開くと、周囲からワアっと歓声が響く。いつのまにかほかの席の人たちまでもがベリーの成長に見入っていた。


うわ、いろんな種族の人たちが感動してくれてる……!


あたしの魔法なんてたいしたことないのに。ずっと笑われてた植物の成長促進の魔法がこんなにもみんなを笑顔にできるなんて考えたこともなかった。


ひとつ花が開いたのを皮切りに、ポポポポポッと次々に花が開いていく。



「うわぁ……綺麗」


「ギャウ……」


「クワッ、クルルッ」



ユットくんや魚人さんはもちろん、お母さんまで目をまん丸にして見惚れてくれてるし、周りの強面な獣人さんたちも、ほうっ……とため息をついて可愛らしく咲く花たちを見つめている。


あんまりみんなが嬉しそうに見てくれるから、花が満開のところで成長を止めようか一瞬迷ったけれど、結局あたしは成長を促進させることにした。魔力を込めるごとに花びらが散って、やがて瑞々しい実が膨れていく。


あたしの手の中の泥団子から芽吹いた蔓には、見る間に真っ赤で可愛らしいベリーがたわわに実った。



「宝石みたいに真っ赤! 美味しそー!」


「お礼だよ、食べて」


「いいの!?」


「もちろん」


「わぁーい!!!」



お友達になった魚人さんと分け合って、ユットくんはさっそくベリーをつまみ食いしている。可愛い、癒やされる……。



「ユーリン、ありがとう」



リカルド様が急にお礼を言うから見上げてみたら、嬉しそうに目尻が下がったリカルド様の顔があった。



「俺では思いつかなかった、ありがとう」



重ねてお礼を言われて、リカルド様もあたしと同じようになにかお礼がしたいと思っていたことに気がついた。えへへ、なんだか嬉しいなぁ。



「討伐演習の時にも思ったが、ユーリンの成長促進の魔法は人を幸せにするんだな」


「そんな、おおげさな」



照れ隠しでそう答えたら、リカルド様がふっと視線を外す。つられてあたしも同じ方を見たら、魔法を見ようと集まっていた獣人さん達が物欲しそうにこっちを見ていた。



「みな、ベリーが食べてみたいようだ。まだ種があるならふるまってやってくれないか?」


「別になんの変哲もないベリーなんですけど」


「魔法で成長したというだけでも物珍しいんだろう」


「なるほど」



リカルド様の頼みなら、そりゃもう張り切っちゃぞー!


バッグの中の缶から種入り泥団子を取り出して、あたしはテーブルの上に並べる。中に入ってる種は実は全部ベリーだ。討伐演習の時にゲットした、思い出の種だったりする。


見ててね、リカルド様。見事に実らせてみせるから。

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