声をかけてくれたのは
わくわくしながらあたりのテーブルを見回すと、意外や意外、テーブルに着いているのは魚人や獣人、鳥人といった多種多様な人々なのに、食べているものはいたって普通。
もちろんあたしでも知ってるようなステーキとか唐揚げっぽいのとかサラダとかもあれば、ちょっと変わった盛り付けのものもある。でも、全部美味しそう。
「うわぁ、どれにしようかなぁ。意外と普通! どれも美味しそう!」
「そうだな」
「すっごく!!! おいしーよ!」
いきなり可愛らしい声が聞こえたかと思ったら、リカルド様の肩の上に、ぴょこんとわんぱく坊主っぽい子供の顔が飛び出てきた。
「!!!」
おお、かなりびっくりしたのかリカルド様の肩が揺れた。それでも声すらあげないの、さすがだなぁ。
どうやらこのオチビちゃんはあたし達の会話が聞こえたらしく、リカルド様の背後の席から身を乗り出してきたらしい。
リカルド様の落ち着いた? 対応のおかげでおチビちゃんは嬉しそうに自分のお皿を差し出して、誇らしげに見せつけてくる。背中の羽がパタパタ動くのが可愛い。この子は鳥人なのかなぁ。
二人がけの席の向こう側には、お父さんだろうか、体格のいい鳥人のオニーサンがどーんと座っている。そしてその肩には、ここの海を飛び交っていた可愛らしい白い海鳥と似た鳥さんがちょこんと乗っかっていた。やっぱり鳥人さんは普通の鳥と仲良くできるものなのかも知れない。
「ありがとう、美味そうだな」
「ちょっとなら食べてみてもいーよ!」
リカルド様がぎこちなく笑ってみせると、チビちゃんはニパッと笑ってさらにお皿を差し出してくる。人間で言うと七歳くらいかなぁ。めっちゃ可愛い。
「こら、ご迷惑だろう。ユット、席に戻りなさい」
「大丈夫だもーん。おにーちゃんもおねーちゃんも怒ったオーラが出てないもん」
お父さんの制止なんかどこ吹く風で、ユットくんは「食べて食べて」って言ってくれる。その可愛さに、あたしとリカルド様は頷きあって、小ぶりな魚の唐揚げをひとつ貰って分け合った。
「すみません。この子は人間が大好きで」
お父さんが眉を下げて謝ってくれるけど、こちとら願ったり叶ったりだ。
「いえ、あたし達もお話してみたかったんで嬉しいです。内陸に住んでいて、こんなに色んな種族の方にお会いしたの初めてで、こっちも興味津々だったので」
「ボクとお話しできて嬉しいの?」
「とっても!」
瞳をキラキラさせて、ユットくんがさらに乗り出してくる。もう席を乗り越えてこっちに移ってきちゃいそうな勢いだ。
お父さんは肩の鳥さんと顔を見合わせて苦笑し、鳥さんは呆れたようにあくびで返した。
感情表現豊かな鳥さんだなぁ。鳥さんもあくびってするんだね。