食堂で情報収集
「辺境の地であることは間違いない。王都からは遠く離れているし、他の大陸や他国との境でもある。ここは玄関口であると同時に、王都への侵入を阻む砦でもあると書かれていた」
なんてこった、リカルド様ったら授業ができるレベルで読み込んでる。
「めっちゃ読み込んでますね」
「面白くて、時間さえあれば関連書籍を軒並み借りたいほどだった。とくに種族のことに関しては、言葉が通じるのか、風習はどう違うのか……興味が尽きない」
目がキラキラしてる! ピーンとたった犬耳とブンブン振り回される尻尾の幻が見えるレベル。マジか、お散歩前のワンちゃんのような純粋な好奇心……!
いやあたしだってかなりワクワクしてるけれども! リカルド様の勢いには負けるっていうか……可愛いんですけど!
「よし、リカルド様! ご飯食べましょう!」
「あ? ああ、そうだったな。そろそろ昼どきか」
「いろーんな種族の人たちがいる食堂を狙って入れば、お店の人たちとどんな会話してるとか、身内ではどんな感じで話してるとか、きっとわかりますよ」
「そうか! そうだな」
「海が荒れてる系の情報も聞けるかも知れないし、まずはいきなり聞き込み始めるより、偵察してからにしません?」
「……そうだった」
さては聞き込みのこと忘れてたな? リカルド様もそんなに夢中になることがあるのかぁ。
あまりにも嬉しそうなリカルド様の様子に、こんなに喜んでくれるんならホントに卒業後は二人で世界巡っても面白そうだなぁ、なんて思ってしまった。まぁ、魔物を討伐しながらの旅になるとしても。
さすがに恥ずかしかったのか、リカルド様が積極的にお店を覗いてみてくれて、やがてあたし達は一軒の食堂に落ち着いた。店内に入った時の感動はもう「ヤバい」のひとこと。
だって! まさに色んな種族の皆様がごった煮状態。
お昼時だからかカウンターにも二人がけ、四人がけの席にも目立った空きはなくて沢山の人々が楽しそうに食事をしている。みんな笑顔だってことは、きっとご飯も美味しいんだろう。それもまた楽しみだ。
あたし達は色んな会話を聞きつつも町の様子もじっくりと見渡せるように、窓際の席に腰かけた。
「いらっしゃい! メニューはそこらの壁に書いてあるから、決まったら声かけて!」
髪をくるくるっと巻き上げた威勢のいいおねーさんがそう声をかけてくれる。見回したら確かにそこここにたくさんのメニューが書かれた紙が貼り付けられていた
でも、文字だけじゃやっぱりイメージが掴めないもんね。ここはやっぱり実物でしょ。
「とりあえず、周りの人が頼んでるの見て、美味しそうなの頼んじゃいましょ」
見た目と匂いは、割合と真実を語ってくれる筈だしね!