リカルド様は興味津々
「あっという間に行ってしまいましたわね」
「ああしてるとホントに子供みたいだな。さ、オレ達も行こうか」
「はい!」
アイルゥ先生の後ろ姿を見送っていたジェードさん達も、頷きあって商店街に向かって歩き出す。あたしもリカルド様を見上げたら、少し楽しそうな色を含んだ鳶色の瞳が見下ろしていた。
「港、楽しみですね!」
「ああ、俺も港町は初めてだ」
「そうなんですか? ワクワクしますね! じゃあ早速行きましょうか」
「ああ、楽しみだな」
あんまり顔には出ないけど、声にもワクワクの色が混ざってる。これは多分、リカルド様もかなり楽しみなんだな。そう思うとなんだかとっても可愛いんですけど。
宿から10分ほども歩くと港がある通りにたどり着く。さっきまでの少しのどかな感じから、一気に活気に溢れた印象になった。やっぱり綺麗な海がどーんと広がって、大きな帆船が何隻も並んでいるからだろうか。
でも、今は船上には人はいないみたいで、船はただ穏やかに波に揺られていた。
「これは……すごい。人種のるつぼだ」
隣から見上げたら、リカルド様の目が珍しく見開かれて、感動したように一点を見つめている。よっぽど変わったことがあったのか!? って思って目線を追えば。
「わぁお」
確かにこれはすごい!!!
可愛い猫耳とかぎ尻尾がついたオネーサンが歩いてる! あっちからは強面のトカゲさんが二足歩行でごっつい鎧つけてオラオラしてるし、うわぁ、うわぁ、あれってもしかして魚人のオニーサンなのかなぁ。全身青くてヒレとかエラとかめっちゃある!!!
背中に羽が生えた人もごっついツノがある巨大な体躯を持った人も、奇異な視線を向けられることもなくごく普通に町を闊歩していた。
「本にあった通りだ……」
「本?」
「ああ、少しくらい行く土地のことを知っておいた方がいいかと思って」
リカルド様が荷物の中から本を取り出す。わざわざ持ってきたの? ってちょっとヒくくらいには分厚い本だ。
「コレって馬車の中でずっと読んでましたよね」
「ああ、面白くて読み耽ってしまった。この港は他国や他の大陸との玄関口になっているらしくて、こうして多種多様な国の人々が集まるのだと」
なんて勉強熱心な。リカルド様が首席なのって、もともと持ち合わせた才能っていうより、絶対にたゆまぬ努力の成果だよね。そして多分、本人に『ものすごく努力してる』っていう自覚はないんだろうなぁ。
「多彩な旅人や商人に対応するべく、店や取り扱う商品も他にはない趣向が凝らされているらしい」
「学長が辺境だなんて言うからもっと寂れたところかと思ってたのに、なんだかすごく発展した町なんですね」