聞き込み作業は手分けが肝心
ジンガイの町に入って宿だけ先に決めると、アイルゥ先生はすぐにあたし達を三つのグループに分けた。
あたしとリカルド様、ジェードさんとアリシア様、そしてアイルゥ先生は単独行動するらしい。
「こういう広い町では手分けして情報収集するのが常道だけど、さすがにまだよく分からない町を女の子たちだけで回るのは危険だからね。か弱いレディたちを守ってあげてくれよ、ナイト君たち」
茶化すような言いっぷりだけど、引率としては問題が起こっても困るんだろう。とはいえ、現時点で一番か弱そうに見えるのはむしろアイルゥ先生本人な気がする。
「先生こそ大丈夫なんですか? 見た目的にはアイルゥ先生の一人歩きもそれなりに怖い気がするんですけど」
素直にそう聞いてみたら、アイルゥ先生はニヤリと笑って見せた。
「うん、この姿だとそういうアホが引っかかってくれて、町の真実の姿が見えたりするんだよねぇ」
「あ……わざと」
「うん、僕こう見えてもめちゃくちゃ強いし、いざとなったら転移するし」
「そっか、そうですね」
「でも、心配してくれてありがと」
にこっと笑ってくれるアイルゥ先生、優しい。
「さぁ、じゃあ早速手分けして聞き込みにあたろう。さっきの宿で町の大まかな区分けは聞いてきた」
うわ、いつの間に。アイルゥ先生ってやっぱりかなりデキる先生なんだなぁ。動きに無駄がないっていうか。
「宿を出て右の方がこの町の居住区らしいから、ここは僕が担当しよう。この中では一番違和感が少ないだろうと思うからね。子供が迷い込んだとでも思って貰えるだろう」
なるほど。確かにアイルゥ先生なら、声をかけてくれた親切な人からでもうまく情報収集できちゃいそう。適任だと思う。
「まっすぐ行った大通りは商店街だそうだから、ここはジェード達ね。比較的安全な場所だそうだけど、油断はしないように」
「分かりましたわ」
「了解」
「で、宿を出て左の方が港らしい。こっちはリカルド達が担当して欲しい。ここは港町だから店もあれば船乗りも余所の土地の者もいるだろう。リカルドくらいガタイが良くて見た目威圧感ある方が安全だろうからね。気をつけて行っておいで」
「はい」
威圧感……いいのか、リカルド様。そんな理由で決められるって。
「じゃあ、解散! 飲食店は情報収集にも適した場所だ。お金はさっき渡した分を使っていいから、食事も各自でとってね。日が暮れる頃までには宿に戻るように。じゃあね!」
言うが早いか、アイルゥ先生は居住区に向かって走り出した。その後ろ姿はもう、そこらへんの少年にしか見えない。