大丈夫だユーリン、俺がサポートする
「それで、通常は先生方が行かれる魔物の討伐を、今年はなぜオレ達に?」
ジェードさんの質問に、学長は長〜い長い白い顎髭をゆったりとしごきながら、目尻に皺を作る。
「色々と理由はあるのだがねぇ。ひとつはユーリン君の火力に期待しているのだよ。今回の魔物はとにかく巨大でねえ」
「……水龍の討伐だっておっしゃってましたものね」
「ひええ!? いや、無理! 無理ですよ!?」
なんでようやく魔力の制御ができてきたってレベルのポンコツに、水龍とか任せようって思ってんの!? アリシア様、あたしをジト目で見るのやめて! あたしのせいじゃないと思うよ、コレ。
しかもアイルゥ先生はイスに座って足をぶらぶらさせながら、楽しそうにこんなことを言う。
「ジンガイの水龍ってマジでめっちゃデカイんだよ。しかもたっくさんいるの。仕留め損なったら暴れまくって海は大荒れ、そこらじゅうの水龍が集まってくると思うよ、多分」
「こ、怖すぎるでしょ、そんな……」
「で、そこでユーリンちゃんの出番ってワケ! 一発で消し飛ばせば問題ないっしょ」
「大陸随一の実績を誇る王立魔法学校でも、ユーリン君ほどの魔力量を誇り、それを一気に放出できるような人材はいないのだよ。だからこそ、ユーリン君にこの件を託したいと思ってねぇ」
「無理無理無理、無理ですってぇ! そんな完全に制御できてないんですってぇ」
泣きが入った。そもそもこのところ頑張ってたのは、このありあまる魔力を、どうやったら放出しすぎずにうまいことコントロールできるかって事であって、そんなぶっぱなす系の練習なんてしてないから!
失敗して暴れまくる水龍が目に浮かぶよ。十中八九、派手に失敗するからね!?
「ユーリン」
真面目に泣いてしまったあたしの肩に、大きな手のひらが優しく置かれる。見上げたら、リカルド様が微笑んでいた。
「大丈夫だユーリン、俺がサポートする」
「リカルド様……」
くぅ~、かっこいいけど! でも行きたくないよぅ……!
「まぁ、ユーリンが必須なのは理解しましたわ。わたくしも、彼女が巨大な飛龍を吹き飛ばしたのはこの目で見ておりますし、選出されるのも納得です」
「アリシア様、納得しないで……」
「諦めなさい。貴女の災害みたいに巨大な魔力を役立てるのには格好の機会ではありませんか」
抗議してみたけど、アリシア様に一蹴されてしまった。切ない。
「わたくし達まで呼ばれたのはなぜでしょうか」
「だよね。状況から考えても、先生達がユーリンちゃんのサポートをした方がいいと思いますけど。だって危険すぎるでしょう」
アリシア様とジェードさんの言うことももっともだ。失敗したときの惨状を考えれば、魔物の討伐になれた先生方が一緒に行ってくれるのが順当だろうとあたしだって思う。
すると、学長は「うむ」とゆったりと頷く。そして、「そうだねぇ、君たち三人は必須ではないのだよ」と切り出した。