実はお願いがあるのだよ
やっぱりあたしのせいか!
申し訳なさすぎて落ち込む。リカルド様、ジェイドさん、アリシア様、ごめんなさい……。
「ああ、そんなに落ち込むような話ではなくてだねぇ、むしろその膨大な魔力を活かして欲しい、というお願いなのだよ」
「お願い?」
「そう、お願い」
学長があたしにお願いだなんて、見当もつかないんだけど。
「まぁ、これからゆっくり説明するから、まずは座ってコーヒーでも飲みながらにしようかねぇ」
学長が指を鳴らすと、どこからともなく五つのコーヒーカップが出現して、いい香りがあたりに漂い始める。さすがに学長ともなると息するくらい簡単に魔法つかうんだなぁ。しかも、何魔法なんだかももはや分からない。
「うん、やはり挽きたてのコーヒーは美味いねぇ」
「まぁ珍しい、ジンガイ産かしら。このダークチョコレートのような深いコクと甘みのある香りは独特ですわ」
「おお、アリシア君は分かってくれるかね。そう、これは稀少なジンガイ産のコーヒーなのだよ」
申し訳ないけどいい香りで美味しいってことくらいしか分からない。でも、ジェードさんやリカルド様も分かってないっぽいからまあいいか。それよりも、お願い案件について早く教えて欲しいんですけど。
「それで本題なんだがねぇ」
「はいっ」
「その、ジンガイに行って、水龍を討伐して欲しいのだよ」
「はい!?」
いきなりの話の展開に頭がついていかなくって、アホ面になってしまった。
「実はねぇ、我が国でも辺境になるとまだまだ魔物の被害も多いのだよ。我が校でも定期的に指導教員数名で討伐隊を組んで対応に当たっていたんだがね、それを今年は君たちに頼もうと思っているのだよ」
「ま、待ってください、そんな……先生方が数名であたられるような案件、わたくし達だけでなんて、そんな」
アリシア様、よく言った! そうだよ、なんでそんなムチャぶり……!
「ああ、ちゃんと引率はつけるつもりだよ」
そういうことじゃない、と突っ込もうとしたけれどそれより学長の行動の方が素早かった。まやもパチンと指を鳴らすと、目の前にアイルゥ先生が現れた。
「よろしくー!」
「アイルゥ先生にはいつも、討伐に参加してもらっているんだよ」
「僕は転移が使えるからね。時間短縮にはもってこいなんだよね!」
見た目はあたしよりも年下の元気な男の子に見えるアイルゥ先生。
時によって大人の姿になることもあるって聞いたけど、本当のお年は謎だ。この先生って魔力を霧散させたりこうやって自由に年齢を操ったり、不思議な魔法ばっかり使う方なんだよね。
そっか、アイルゥ先生って転移も出来るのかー。あれ? もしかして。そう思ってリカルド様を見上げたら、「俺もアイルゥ先生に教わった」と頷いてくれた。
すごいなー! アイルゥ先生。