【ジェード視点】絶対になんかあっただろ!③
「リカルド」
「な、なんだ」
オレが急にツッコミをやめたからか、リカルドが警戒するようにちょっと身を引いた。さすがにカンがいいとは思うが、悪いけど諦めてくれ、逃がす気はない。
「なんかもう細かいことはいいわ。ズバリ、ユーリンちゃんとなんかあっただろ」
「!」
あらやだ、真っ赤になっちゃった。
分かりやすいなー、デカい図体してなんだその可愛い反応。さらに落ち着かない様子が加速して、意味もなく手だの足だの首だのが妙な動きをし始めた。
絶対になんかあっただろ、これ。
吹き出したい気持ちをおさえて、オレは至って真面目な表情を装う。
「いや、その」
オタオタしているヤツを見上げながら、オレは考えを巡らせた。
先週の様子だと、ユーリンちゃんはとりあえず自分の気持ちをしっかりと自覚してるみたいだったよね。そして逆にリカルドは、彼女の役に立ちたいとは思ってても、まだまだ自覚ってとこまではいけてなかったっぽかった。
まぁ仕方ないよなぁ、なんせ朴念仁だし。……ってことは、多分。
自分の中でひとまず結論づけて、まだ挙動が不審なままのリカルドに、俺はストレートにこう質問した。
「もしかしてユーリンちゃんに告白でもされた?」
ビクン! とデカい体が揺れる。おお、図星か? と思った瞬間。
「い、いや、その……俺が」
「俺が……?」
「俺が、その、彼女に思いを告げた……」
「はあ!?」
思いもよらない言葉に、オレの方が面食らってしまった。
いやいや、嘘でしょ? このコミュ障っぷりで、告白なんて……コイツにそんな甲斐性あったの? ていうか自分の気持ちに気づいてたってことすら驚きだわ。
今日はもう驚いてばっかりだけど、今のが一番衝撃が大きかった。
「リ、リカルドのほうが告白したんだ……え、好きって言ったの?」
問えば、コクリと小さく頷く。そうかぁ、意外と思いっきりが良かったんだなぁ、リカルド。
いや、違うか。この感じじゃリカルドなりに勇気を振り絞ってのことなのかも知れない。そう思うと急に微笑ましくなってきた。
「ユーリンちゃん、なんて? 喜んでくれたでしょ」
「ああ、迷惑ではないと」
フッと嬉しそうにリカルドの目が細められる。無表情か困ってる顔が多いコイツが、こんなに優しげな表情を浮かべるなんて稀なことだ。
なんとなくオレまで嬉しくなる。
「そっか。良かったな、リカルド」
そう言った瞬間、屋上の扉が勢いよく開いて、オレンジ色の頭が飛び出してきた。
「こんなトコにいた!」
走ってきたのか、ユーリンちゃんの息はかなり乱れている。