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逮捕されたのは

 

 あれからパーティ会場のボーイが一人逮捕された。

 決定打は、スポットライトをブラックライトにするためのフィルムをとめていたセロハンテープから彼の指紋が検出されたこと。だがまだ決め手には乏しい。毒を入れた瞬間は誰も目撃していない。あの状況では皆が映像に集中していたため、いちボーイの挙動など意識からフェードアウトしていたのだ。

 しかし、ボーイから主犯格の存在をほのめかす言葉が聞けた。

 曰く、「俺はアスタリスクの代行者だ。彼の望みのためにしか動かない。彼が生まれたときから何もかも捧げてきた。――アスタリスクを捕まえようとしても無駄だ。彼は誰の手も届かない」

 それ以降ボーイは口をつぐんでいる。

 やはり、アスタリスクはこの事件と繋がりあるはずだ。

 しかし、ボーイの交友関係を洗ってもアスタリスクに該当する人物はいなかった。ボーイ本人もアスタリスクではない。これは、春子が聞き込みに帯同して確かめたので確実である。

 しかし、ボーイの交友関係で最も意外だったのは――。

「ほとんどIT関係なんですよね。自身もIT研究所の出身みたいですし。でもそんな人がなんでボーイなんてやっていたんでしょうか?」

「おそらく、パーティに紛れ込むためだろうな。あのパーティの招待客は出版や作家関係だったから、IT研究者の彼が出席できる伝手もない。でもボーイなら潜入できる」

 八島がアメリカンコーヒーをすすりながら言った。

 八島と春子は聞き込みで疲れた足を休めるために、近場のカフェで休憩していた。

「じゃあそこまでして、記念パーティに潜り込みたかった理由は?」

「さぁ? アスタリスクのファンだったからとか? ……まぁどのみち推測だ。本人が口を割らない限りわかるわけない。犯行に使われた道具を見る限り、全部その場で用意できるものだ。突発的な犯行にも見えるし、わけのわからん事件だよ……」

 昨日捜査本部で啖呵を切ったときとは真逆に、八島はげっそりしていて、どこか投げやり気味である。

 今日は、ここなし心が逮捕されてから三日目。

 いつもなら、そろそろここなし先生が捜査官の説得に熱が入り始め、自らを逮捕してもらうための嘘八百に磨きがかかる頃だという。……何度聞いてもよくわからない事態だ。

 八島は背もたれに体重懸けて仰向いて、口からエクトプラズムを吐き出していた。

「しかし、今回の先生はいつもと違う。普段なら犯人のボーイを庇うはずなのに、今回は自分がアスタリスクだなんて言い出した……」

 ここなしの奇行に相当キテイルらしい。

 春子は恐る恐る聞いた。

「そ、その心は……?」

「この事件の真犯人はアスタリスクで、ボーイはそこまで犯人度が高くないってこと。だからアスタリスクを捕まえないと、先生がアスタリスクだと偽証しちまう……」

(犯人度とはいったい――!?)

「ああ、引っ掛かるなー。先生の動きを見ていると、どうも捜査の前提からして間違っているような気がする……あー」

 八島がゾンビ化してきた。こわい。

 と、とにかく早く本物のアスタリスクを特定しなければいけないというのはわかった。

 そして特定の鍵は『十億五千万の道具』と『自分の能力』だと、春子は睨んでいた。しかし、道具の方は道具そのものに注目しない。問題はそれを用意できる資産だ。

 そもそも十億五千万の道具を用意できる資産を持つ人物など、そこらへんにいるわけもない。これはしらみつぶしに探していけば、時間は途方もかかるにしても必ずアスタリスクに近づけると思っている。

 そして、春子はもう一つの突破口を持っていた。


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