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『犯人になりたがる症候群』

 ここなし心は任意同行という形で連れていかれた。

 一連の逮捕劇? に警官たちはとてもめんどくさそうで、なにやら茶番劇めいたものに無理やり出演させられたベテラン役者のていである。しかもやけに手馴れている。

 やれやれと言わんばかりにため息をついていた八島は、寄ってきた春子に気付いて笑った。

「あ、起きたか! さっそくだが状況は見ての通りヤバイ。先生の持病の『犯人になりたがる症候群』が発症して、留置所おくりになってしまった!」

 寝起きにこのカオスはキツイ。春子は眉間を抑えた。

「一から説明してください……」

「OK。俺の先生、ここなし心は『一瞬で犯人がわかる能力』を持っている」

 春子はあまりの急展開に言葉も出なかった。何その反則技。

「しかし、彼女の正義感は人の半分だが同情心が人十倍もある。マズいことに、それは犯人に対する同情に限定される」

「ええー……」

 春子はドン引いた。それだけでも異論の余地があるのに、まだ続きがあるらしい。

 八島は、ここで息を吸って重々しく告げた。

「つまり先生は、犯人が分かったら、その犯人を庇うために証拠隠滅や捜査のかく乱、場合によっては自分が犯人だと主張するんだ!」

「な、なんでやねん?!」

 春子は迷わず突っ込んだ。思わず関西弁になってしまった。

 しかし、春子の渾身のツッコミも八島の、「それが先生だからだ!」――という強引なセリフで押し切られた。

「先生の拘留期間は引き延ばしても三日。それ以上かかると、先生は自分が犯人だと捜査官を説得して認めさせてしまう。これで逮捕状がとられたら終わりだ。先生が喜ぶだけで、真犯人は逃げて事件はグダグダになる……!」

「ただのはた迷惑じゃないですか!」

「だから助けてくれ! 探偵役が犯人になったら、助手が探偵の目を覚まさせてやるしかないだろ!」

 今までもそうしてきたんだから、今回も俺が先生を助けねば……! と八島は決意に満ちた目をした。この人苦労してるんだな……。

「そ、それはそうですが……。私がお役に立てるとは思いませんよ」

「いや、君の能力なら『アスタリスク』を特定できる。この事件は『アスタリスク』が絶対関係しているはずだ。誰も姿を知らない『アスタリスク』を探すために協力してくれ」

 春子の両腕をがっちり握って、八島は眼力で訴えかけてきた。

 ここでNoといえる勇気は春子にない。むしろ断ったときのほうが恐ろしい。

「わ、わかりました……。私ができることなら」

「そう言ってくれると思ったよ! これからよろしくね犯書店員さん!」

 両手を握ってぶんぶんと振る八島のされるがままになりながらも、春子は疲れたように言った。

「と、とりあえず『犯書店員』ってあだ名はやめませんか?」

「え、やだ。呼びやすいから」

 ……この助手にしてあの先生ありである。


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