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本物の****

 

 突然、映像に酷いノイズが走る。

 スクリーンに映っていた八人の男女の映像がねじ曲がり、化け物のようにぐちゃぐちゃになった後、急に真っ黒な画面になった。

 ともすると『****』の純黒の表紙を思い出させる、心臓が凍るような黒だ。

 スクリーンには、じわじわと白い文字が浮かびはじめた。

「ぼくは道具なんかじゃない。ぼくをりようするひとは、みんな死ねばいいんだ」

 口元以外を隠した人物の映像がそういった。


 その映像が目に入った瞬間、春子の能力は暴走した。

 怒涛のように、脳内に流れ込む情報。

 たくさんの本の名前が次から次に現れて、春子の脳みそを暴力じみた奔流でかき回した。

【エグレシア文書 著:アンソニー・ジョーンズ】【だれがコンピューターを狂わせたのか 著:藤村 良】【インターネットラプソディア:キャロル・ヒンドレー】【コンピューターの利用における対人不安の変化について 著:NISHIKAWA Masashi】……

 ……数百……数千……数万冊、もっとか?


 真っ暗な会場に、絹を裂くような叫び声。

 誰かが息を飲んだ音。

 とたんにバツンと、プロジェクターの電源が落ちる。何も見えない。

 春子はすぐ近くで誰かが叫んでいるのを聞いた。

 細く長く、断末魔のようなソレ。

 春子は聞いていられなくなって、耳をふさぐ。

 けれども、無駄だった。身体の内から響いてくる。

 叫び声は春子自身の声だった。


 そして怒声と、生臭いにおい。――鉄さびの?


 誰かが駆け回り、「電気付けろ! 早く!」と切羽詰まった声がする。

 春子は意識を保っていられずに、崩れ落ちた。

 脳内では止めることができない警告音が鳴っていた。

 春子の手から零れ落ちた『****』が、落ちた衝撃でページが開く。丁度参考文献のリストだ。

 薄れゆく意識の中で、ふと春子は気付いた。

 リストと、たった今叩き込まれた読書履歴が一致している。

(ああそうか、あれが、あの口元しか見えなかった人物が――本物の“アスタリスク”だ)

 引きずりこまれるように、春子の意識は黒にのまれた。


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