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裏切者の神 ~ God a betrayer.  作者: 上野ウタカタ
第一章 紅き狐と地上界の王
9/38

 和神

 ――その後、天界にて。

 薄暗い神殿内に、一人の若き男神と一つの物体・・・・・がいた。

 神殿の中では、その神の言葉と、物体の脈動の音・・・・が響く。

「――ふむ」

 男神の目の前に機械を介して浮遊するその物体は、途轍とてつもなく大きい楕円形の宝石のように見える。

 それも、まるで血のようにな色。

 無機物なのかそうでないのか、全くもって分からない程におごそかな威圧感を与えてくる。

「流石は最上級の魔神・・・・・・と言ったところか。他に類を見ない素晴らしい能力ちからであるな」

 男神はその物体を見て、顎に手を当てつつ呟く。

 白い線が所々に入った蒼白色そうはくしょくの髪、銀灰色ぎんかいしょく和服・・藍色あおいろはかま

 光の入り込まない蒼い双眸そうぼうと、胸元に下げられた菱型ひしがた青宝石サファイアのネックレスが相まって、目の前の物質とは真逆になごやかで清々しい雰囲気を醸し出している。

 だが、背中には実態の無い紫色の翼が一対、大きく広がる。

「ぬ、そうだ。血餓王は一体どうった」

 男神は思い付いたように後ろを向き、指を鳴らす。

 すると、男神の目の前に丸く黒い塊が現れ、さま弾け飛んだ。

 中には、ドラキュラが。

「――っはぁ、はぁッ! 血餓王、只今、ここにッ!」

「精神に乱れがった様だな。何を侵した」

 辛辣しんらつな口調で問いただす。

「はッ! L2地域にて、滅龍士と裂傷将と共に、三人の女人間と交戦! その最中さなか、『裏切者・・・』が乱入ッ、我々は撤退――!」

「――! …ふむ、成程なるほどれでうぬの様な状態であると言う訳か」

如何いかにも――ッ!」

 男神は、冷静沈着だ。

 ――内心、驚いているようではあるが。

らば現在いまは休むがい。次の戦闘いくさに備えるのだ。我はしばら此処ここに居る」

「はッ! ではお言葉に甘えて…!」

 ドラキュラはそう言い、一瞬の内に消える。

 男神はまた物体の方を向き、今度は腕を組む。

「――矢張やはり、いましらべる事柄ことがらが多い様だな」

 そう呟きながら、物体を眺める。

 男神は、そのままじっと動かない。

 ――目の前にそびえる紅血色こうけつしょくの宝石の中心には、この世の公用文字である『トゥラスト文字』で、こう書かれていた。


 【てんみやこる狂いし魔神よ の世界のおわりへと導け】

どうも、上野ウタカタです。

間話、和神です。

ちょいと伏線貼った程度。

…まぁ、どこがどうだかは後々分かるはずです。


次回は正規話。

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