傲慢不遜の吸血鬼
『――血餓「ヴァンパイア=デス=ピアーズ」――!!!』
そう吼えたドラキュラは、周りに深黒の闇を四散させ、手に持った大鎌を豪速で振り回す。
見た目はとても細く薄い鎌ではあるが、その豪快さにより異常なまでの質量を持っている事がよく分かる。
――先程の咆吼が技名であることは、一目瞭然である。
「其の身に地獄の闇を受け、黒き灰燼と化せ――!!!」
ドラキュラは号叫し、大鎌の回転を止め、両手で持って構える。
そして、その大鎌を目の前の標的に向かって振――
「――止めろ、血餓王ッ!!!――」
――ろうとしたところで、どこからかそんな声が響いた。
ドラキュラはその声に驚き、技を中断させてしまう。
「…ぬっ、聞き覚えのある声…! 誰だ! 我の計画を邪魔する奴は!」
辺りを見渡し、見えない奴に叫ぶ。
「…助かった、の…?」
緊迫した状況の中、安堵の息を吐く瑞波。
アストレアやSakumiも同じだ。
と、そこで何かがドラキュラと瑞波達の間に高速で移動してきた。
その何かは人の形であり、瑞波達を庇うように左手を横に出す。
橙色のローブ、暗褐色の袖、焦茶色のズボン…
そして、銀髪金眼。
そう。その少年はまさしく――
「――ッ!? 貴方っ…なんでここに――!?」
――先程、瑞波とアストレアが看護した少年であったのだ。
しかしその顔には、当時は掛けていなかった、奇抜なアンダーリムの眼鏡を掛けている。
少年は、瑞波達の方を見ずに話す。
「後で説明する。今は――」
「ちっ、貴様は…ッ! あの、裏切者かァァァ!!」
少年を見たドラキュラは、絶望混じりの叫びを放った。
「こんな下劣な行為は止めるんだ、血餓王。奴の言う事なんて信用してはいけない」
少年がドラキュラに言う。
「黙れェェェ! 渾ての神を裏切った貴様になど、聞く耳を持たんわァァァァァッ!!」
激昂したドラキュラは、また大鎌を構える。
今度は、少年を殺す気らしい。
が。
「止めろと言っているのが分からないのか」
少年は怖気付くどころか、威圧的に言い放った。
そして。
「――ッ、くっ、くそッ! エクリプス! ロッド! 退散だ――!」
その少年に怯えるかのような様子を見せたドラキュラは、二人と一緒に一瞬にして消えた。
「…えっ、どういうこと…?」
今目の前で起こったことを受け入れられなかった瑞波は、そう呟く。
少年は、瑞波の台詞に応答するように言った。
「…とりあえず瑞波の家に行こう。全部そこで話す」
どうも、上野ウタカタです。
続きが早い(確信)
今回は妖精救済紀(別小説)以来、久々の挿絵挿入です。
ラノベっぽくなってますかねぇ?w
キャラはアナログ、背景及び文字はデジタル(ibisPaintX)で描きました(背景ズルい)。
いい感じに出来てればいいのですが…
次回はいつ投稿できるかな?