[最凶ハッカー]
瑞波、アストレア、Sakumiは現在、大光国の城下町に位置するSakumiの簡易研究所の中にいる。
「……Sakumi、一体何があったの?」
Sakumiと机を挟んで対面に立つ瑞波は最初に口を開く。
瑞波とアストレアは何も知らされないまま連れてこられたため、一切の察しがついていないのだ。
「さっきは申し訳ない。――詳細はまだ詳しくは分かっていないが…ほんの最近、2つほど不可解な事件があったもんでな」
自分の作業机に備え付けられた、何とも機械的な椅子に座って瑞波の質問に答えるSakumi。
Sakumi…この世では異端者と呼ばれる者の1人である。
二つ名を『最凶ハッカー』、本名を『Sakumi Amesthst』と言う。
元々はこの世の人間ではないのだが、何故この世を知ったか、何の為にこの世に来ているのかは瑞波やアストレア…どころか、この世で理由を知る者はいないだろう。いや、唯一いるとすれば――万物を知る古代のあの神がそうか。
「2つもか?」
と、壁に寄り掛かって腕組みをしながらアストレアが言う。蛇足ではあるだろうが、その腕に、アストレアの質量的な胸が乗っかっている。
Sakumiはアストレアの台詞に首肯し、話す。
「うん。まず一つは、瑞波の住む大森林に関わりのあることだ」
「えっ、それってどういうこと…!?」
瑞波が瞬時に反応した。
それも仕方ないこと、自分の住んでいる場所に関わりある事だ。
Sakumiはそれを制止し、話を続ける。
「そう焦るな。――詳細は調べる必要があるが、大森林のちょうど中心に、何故か人が落ちてきたらしいんだ」
「――は?」
「――え?」
その言葉に、アストレア、続いて瑞波が耳を疑った。
人が、落ちてきた。
大森林の中心に。
思い返した瑞波は、顔を蒼白にしてアストレアの方向を向く。
「――アスト、もしかして…!?」
アストレアも察したようで、腕組みを解いて瑞波の方を向いている。
「あぁ。多分そうだろうな…」
「もしかして思い当たる節でもあるのか?」
二人の様子を見たSakumiは、そう問う。
アストレアはSakumiの方を向き、応じる。
「…Sakumi、さっき家にいた時、あたし達の後ろに男の人がいたの分かったか?」
「えぇっ、あ、あぁ、そうだった…かな?」
Sakumiは逆に問われた為、少々動揺するも記憶を思い起こす(正直あまり覚えていないそうだ、恐らく焦りからだろう)。
「あの人が、もしかしたらそれかもしれないな…」
「――ッ、なっ、なんだと!?」
そう、あの少年――瑞波が見つけたあの少年が、Sakumiの言っている事にちょうど被るのだ。
なにしろ、大森林内で人が入れるくらいに樹が開けた場所が、大森林の中心しかないのだから。
「…う、む…詳しいことは後で聞こう。今はもう一つの事件…いや、異変と言った方がいいか。それについてだが――」
と、Sakumiが言いかけた瞬間。
ズガァァァァァァーン!! と、研究所の外から爆発音が聞こえてきた。
「――ちっ、もう来やがったか…ッ!」
Sakumiは顔をしかめっ面にして、椅子から勢いよく立ち上がる。
焦るSakumiを見て、瑞波が言う。
「ま、まさかその異変との関連性が――」
「あぁ、まさにその通りだ! さっさと表に出るぞ!」
早々に研究所を出るSakumi。瑞波とアストレアは状況を飲み込めずにSakumiに付いていく。
どうも、上野ウタカタです。
久々の更新! お待たせしました。
ということで、ゲストのSakumiが登場。
いずれ挿絵を描かなきゃな。
もしくは挿絵を誰かに頼む…ってことも考えてはいる。
次回は2番目の事件について明かしていきます。