田畑希夏③
放課後、俺は萌咲を事務所まで送っていった。
俺も仕事だけど、七瀬の正体は知らないから送るっていう口実で。
「しょーくんありがとね。」
「おう!頑張れよ」
萌咲を無事に送り届け俺も事務所に向かった。
「やっほー小篠くん。」
「 はよー。」
「聞いてよ小篠くん。」
「ん、どしたよ。」
「ノノカの事なんだけど……」
川上さんはいち早く希夏の情報を手に入れ俺に教えてくれた。
『実は、僕に声をかけてきたんだ。"七瀬よりも可愛い自信あるよ?私のことスカウトしようとしてたでしょ?なら今からでもいいから私にしない?"って。』
今日の撮影は希夏と一緒。
翔太としても七瀬としても希夏に会うのは久しぶり。
あいつはどんな反応するんだろう。
「おはようございます」
スタジオに入ると希夏は既にいた。
「七瀬さん!おはようございます!」
希夏は飛びついてきた。
「ノノカさん首、赤くなってるけれど蚊にでも刺されたの?」
……なんてこんなのは嘘だ、
キスマークな事ぐらい俺だって分かる。
「あ、え、う、うん。そうなの…蚊に刺されちゃって」
希夏が急に慌てた。キスマークなんだな。
「コンシーラーで隠せないかしら。手伝おうか?」
「あ、いえいえ大丈夫です。自分でやります。」
希夏は慌ててメイクさんに頼みに行った。
「おし…七瀬」
川上さんがすかさず声をかける。
「……うん。」
希夏に俺は必要ないよな。そうだよな。
撮影が始まった。
希夏は相変わらずくっ付いてくる。
「ノノカちゃんちょっと離れて。顔見えない!」
カメラマンの指摘を受けて離れた。
「はいじゃあ、OKでーす。」
撮影が終わると俺はすぐに川上さんにアイコンタクトをし、スタジオを出た。
「七瀬さん!」
希夏に呼び止められた。
「……なに?」
「今日、すいませんでした。」
「……え?」
「キスマーク…のこと。」
「いいのよ。撮影前に気付いて隠せたんだし。じゃあお疲れさま。」
俺は言葉を遮るように川上さんの車に向かった。
家につきご飯を食べていると電話が鳴った。
『もしもし翔太?』
電話は希夏からだった。
「ん、なに」
『会いたい』
「なんで」
『好きだから。』
本当にその言葉信じていいのかね……?
「モデルのくせに一般人の俺なんかと会ってたらスキャンダルだぞ。、」
俺もモデルですけども。
仕方なく俺は希夏に会いに行くことにした。
もちろん別れを告げるために。
俺は支度をし、希夏の家に向かった。
《ピーンポーン》
インターホンを鳴らすけど、誰も出てこない。
念のためもう一度鳴らした。
「はーい。」
ドアがあいた。
もちろん出てきたのは希夏だった。
「……」
希夏の格好は多分予測だけど男性用のパーカーのみ着ているような状態。
「翔太…あっ、ごめんね。気づかなくて。自分から呼んだのに」
「んーん、平気。その格好でドア開けてたら寒いだろ。早く家の中入れよ」
希夏の足元を見ると男性の靴が置いてある。
誰か来てるんだな。
「ノノカ〜誰だったのー?」
希夏を後ろから知らない男が抱きしめた。
よく見るとテレビでよく見る俳優だった。
「……ねぇ君ノノカの友達?」
その男は少しキレ気味に話しかけてきた。
その男も上半身裸のため何となく察した。
「……お前の男癖昔から変わらないな。希夏、別れよーぜ。」
そういうと希夏は嬉しそうに頷いた。
ドア閉まる時、隙間から覗いた時2人はキスしていた。
……やっぱり、遊びだったんだな。
「……大好きだったよ。希夏……」
川上さんに電話をして希夏と仕事が被らないようにお願いした。
もう正直希夏に会いたくない。
俺は軽い足取りで家に向かった。