佐藤七瀬②
「佐藤さんおはようございます。」
「おはようございます。今日も宜しく御願いします!」
このメイクさんは川上さんオススメの人で俺の秘密も知っている。だからこそ頼んでいる。
「七瀬くん今日も雑誌?」
「まだ雑誌しか出れないっすよ。てか七瀬に"くん"付けってそれもまた何かカオス……」
「いやーだって七瀬ちゃんって呼ぶのもあれだし、本名は出せないし。」
「まぁそうですね。」
目を瞑るとメイクが始まる。
「終わりましたよー」
声をかけられ目を開ける。いつも通りの佐藤七瀬だ。
「ありがとうございます。じゃあ行ってきますね、」
撮影が始まった。どんなポーズすればいいのか分かんないからとりあえず笑っとく。
「お、いいねぇ七瀬ちゃん!もっと!」
カメラマンの人が変態なのは噂で聞いていたけども…。
口に指当てたり、小顔ポーズ?みたいなのや腕を組んだりなど、色々やっているうちにあっという間に終わった。
「おつかれさまー。送っていくよー。」
「ありがとうございます♡川上さん優しい♡」
「え、ちょ、きもry」
川上さんの車に乗った。
その後カツラをとり、車の中に常備されているメイク落としを使って自分でメイクを落とす。
服も着替えて畳み、紙袋の中にしまう。
「自分でメイク落としって慣れてるね。」
運転しながら川上さんが話しかけてくる。
「気持ち悪いかもだけどさ、七瀬になってる間は嫌なこと考えなくて済むし、自分の嫌いな顔もメイクで隠せる。だから気に入ってんだよね。」
「うわぁ……小篠くんからそんな言葉が聞けるなんて……」
「てめえぶっ飛ばすぞ!!!」
「ちょ、それはやめよう?運転中だよ!?」
自分の顔に自信が無かったから、女装って形だけど自信持てるようになったし。
家の前に車を止める。
「川上さん、」
「どうした?」
「……何でもないっす。また明日。明日も18時ですよね」
「うん、そうだよ。」
「分かりました。じゃ。」
車のドアをしめ頭を軽くさげる。
そして家の中に入った。